『オカルト』田口ランディ/新潮文庫/438円
『オカルト』の題名に曵かれて買った。
著者にまつわる不思議現象を書いた本だ。
しかし著者は“霊感”はまったく無く、“超常現象もUFOも”信じないという。
そういう人の語る「オカルト」に興味が湧くではないか。
“掌編小説集”とあるけれど、エッセイ集という印象だ。
小さい頃の想い出も再現ドラマ風に語られていく。
思った通り、幽霊は出ないし霊現象も恐怖体験も出てこない。
しかし日常をみつめ、過去を振り返る著述の中で、著者の“霊感”は研ぎすまされていくようだ。
・・・“霊感”と書いたけれど、
「幽霊は信じないが、私は日本人として、内なる霊的なものを持っている」とある著名人が言っていた。共感できる。日本の風土の中で、霊的な歴史を共有していると思うし、誰もが霊的な存在だと思うからだ。
田口ランディも、「霊を信じる」のではなく、自ら霊的な存在として「オカルト」を語っているのだと思う。読み進むうちに、異常な出来事や異界に遭遇していく。
恐怖ではなく、涼しげな気配だ。