どシリアスなマヌケの日常

毎日毎日、ストーリー漫画を描き、残りは妄想.,いや構想の日々の日記。

「亜遊の手紙」22

2023-04-10 18:58:00 | 日記
ワタリが帰ってしまうと亜遊は自分のバッグを開けた。高天原に個人のお風呂はない。「分家」の任を受けた者に「帰る時にはお土産にバスオイルを買ってきてください。」と言って集めたバスオイルの容器が数本入っていた。お気に入りの香りばかりだった。それを見つめて「また、私が使うなんて。。。」と亜遊はニッコリした。
亜遊は、ゆっくり湯に浸かり薄い着物を着てベランダで涼んでいた。

「亜遊様も広い部屋が苦手なんですね。」と隣の部屋のベランダからワタリが声をかけてきた。
「うん。子供の頃から何十年も狭い部屋で暮らしていたから広いと落ち着かないの。私はお人形で座っているのだけが仕事だったから。お仕事の後は狭い箱の中に仕舞われてたってわけ。」
「私も同じですよ。狭い部屋に母が女官で2人でいました。私の正装は1着だけ。部屋では宮仕の服でした。」
「綺麗な着物は重いのよ。髪もぐいぐい引っ張られて結われて簪も山盛り。宝石のアクセサリーもこれでもかって言うくらい付けさせられて重かったぁ。エリ様が髪を結うのが大嫌いっていうの分かるわ。」




「ワタリはとっくに鬼のお腹の中だって思ってた。子供だよね。仕方ない。7歳だもの。高天原で7歳からやり直しをした。王族よりも宮仕が私には向いていた。王族の気持ちが分かる女官なんて最高でしょう?」
「私も自分をそう思います。まぁ、元々王族扱いされていませんでしたが、母は泣きましたが、代わりに沢山勉強する時間があってよかったです。」

「早く主の下に帰りたい。無事でいらっしゃるかどうか心配なんだ。」
それを聞くとワタリは亜遊を安心させようと思い言った。
「私の同僚カケルとリョウも高天原に行きました。あの2人は強いから大丈夫。」
「カケル?いつから赤界に?」
「10年ぐらい前に召し上げられました。王妃様の女官長の夫です。整った顔の口の悪い良い奴ですよ。」
ワタリの言葉を聞いて亜遊は暫く黙って考えたが、ワタリがそう言うのなら大丈夫だと思った。「それでは寝みます。」と言って亜遊は部屋に戻った。

ワタリはそのままベランダにいた。
初めて亜遊に会った時、真っ赤な膨れっ面をしていたのは着物や装飾品が重かったから。。。2度目は大きな人形みたいだった。。。今は人形じゃない。
ワタリは気がついていた。多分、この気持ちが「好きになっちゃった」だ。いつから?。。。7歳からだ。
「そしたらな、取りに行くんだ。」とカケルは言っていた。どうやって?それは聞いていない。
セキ様は、第一世代の年寄りなのに14歳のエリ様の心を射止めた。どうやったんだろう。セキ様なら話してくれるかな。。。

23に続く。。。



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