「葵の花」のラストシーン。去年、脱稿してありますが、ストーリーが間延びしているので、そのうちに描き直します。まー一言で言うと、主人公が親友の好きな人を盗る話です。主人公は早川。
ここから下に書いてあるストーリーは、盗られた方の神澤翔が主人公。
いつも、このくらいのストーリーを作ってプロット、ネームに入ります。ネームで大幅に話が変わることもあります。
一人称が、俺と僕になっていますが、俺は現在に近く僕は子供目線です。覚書のようなものなので読みにくいので、面倒な方はスルーしてください。
「いとこ同士」
陽に初めて会ったのは俺が8歳。陽が5歳の時だった。俺たちは母親同志が姉妹のいとこだ。
あの場所は本家の水川神社だった。奥多摩の古いお化け屋敷のような神社。あの日は、なんであそこに連れて行かれたのか俺は知らない。沢山の人がいた印象が残ってる。
「アンタが翔?」見下ろすように俺を見た目つきが怖いおばさん。その人が陽の母親だった。つまり、俺の実の叔母。叔母の隣には金髪碧眼の白人の背の高いおじさんが居て「初めまして。ポール テイラーと言います」と流暢な日本語で挨拶してきた。おじさんの足にしがみついていた女の子がチラッと俺の方を見ておじさんの後ろに隠れた。左手に護り珠をかけていた。
「陽(あかり)、いとこのカケルだよ。今日はは?」とおじさんに促されると、おじさんの後ろから顔を出して、おずおずと「シャイン、あかり、テイラーです」と言った。「お人形だ!」としか言えない女の子。金色のキラキラ光る髪、綺麗な海の色の目。真っ白な肌にピンク色の頬。顔立ちは完全な外国人。叔母さんの血を引いてるはずなのに。誰が見てもよその国の子供だと俺は思った。
「私の名前は穂月よ。アンタのお母さんの妹。初めまして。」うぁ〜いちいち目が怖い叔母さんだ。
この日の出来事から二、三日してテイラーさんはオーストラリアに帰って行った。おじさんとおばさんは離婚したんだ。
「翔、これから、あかりを家で預かることが増えると思うから、可愛がってあげてね。妹だと思って。」と母、かやのが言った。「お母さん、娘が欲しかったの。毎日楽しみだわぁ」と母は言っていた。
僕が小学校から帰ってくると、家に金髪の人形がいる。あかりの家は徒歩10分の賃貸マンション。朝、穂月おばさんが連れてきて、夕方迎えにくる。叔母さんは看護学校に通ってる。卒業したら、交代勤務の仕事になる。どの道、あかりは俺の家に預けることになる。僕とあかりは兄妹のように育つ。
あかりは直ぐに僕のことを「お兄ちゃん」と呼び始めた。
この妹は抜群に可愛い。いるだけで可愛い。で、僕のことが大好き。僕の後をついてまわる。文化の違いからかハグやキスは当たり前。
ある日、僕は気づいた。なんで、あかりは保育園に行かないの?お母さんに聞いてみた。「う〜ん。考えたくないんだけど。。。いじめられるって心配しているの。私も穂月も。」「小学校も行かないの?」「小学校にはお兄ちゃんがいるでしょ。守ってあげてね。カケル」。。。抜群に可愛い妹は、目立っちゃうんだ。分かったよ。僕が守る。
あかりが小学生になった途端、母と叔母の心配は現実になった。あかりは、ハーフだけど日本人らしさは微塵もない容姿だった。入学初日から「日本語が分からない」とか訳のわからない噂を立てられ、近づいてくる同級生はほとんどいなかった。居るだけで目立つ自分に、あかりも気がついていた。教会で育ったからなんだろうか、自分から攻撃的な発言をすることもなく大人しく座っていた。一年生は早く授業が終わる。みんなは仲良しの子と帰るのに一緒に帰ってくれる友達もいなかった。だから4年生の僕の授業が終わるまで、校庭で待っていた。そんな時でも髪を引っ張られたり、どつかれていた。校庭で僕の教室が見える場所で時には泣きながら待っていた。
おまけに、あかりは勉強ができなかった。それもイジメの理由になった。
僕は授業が終わると、直ぐに校庭のあかりを迎えに行って一緒に帰った。僕が迎えに行くと、目を赤くしたあかりが「お兄ちゃん」と言って手を伸ばして握ってくる。手を繋いで、トボトボ僕の家まで帰る。そんな学校でもあかりは登校拒否はしなかった。「私何も悪くない」というあかりの目は穂月おばさんの娘だなと思わせた。
あまりにも勉強ができないので、僕がよく勉強を見てあげていた。「う〜ん」と考えても分かるのに時間がかかったし、物覚えが悪い。英語は話せるけどスペルはメチャクチャ。
あかりが4年生になると僕が中学に進学した。中学受験をした。国立の中高一貫校。僕があかりのぶんの脳みそを奪ったみたいに僕は勉強ができた。しなくても授業だけで全部分かるんだ。もちろん合格したよ。
それで、あかりは小学校で一人になった。
その頃から、あかりのことを忘れてる時間が増えた。中学は周りに面白い人間ばかりで、それに俺も思春期という時期だったんだろう。
生まれて初めて、女の子に告られた。一つ上の派手目の子。好きでも嫌いでもなかったけど付き合った。好きになるかもしれないし。
あかりが、一番早く気づいた。「お兄ちゃん、彼女できたでしょ。」って言ってきた。「小4のガキが何言ってんだよ。マセがき」と言ってやった。否定も肯定もしなかった。
俺は、その彼女と初体験をした。でも、直ぐ振られた。一月もしないうちに、また、違う彼女ができた。俺はこの繰り返し。「本当に好きだ」っていう気持ちはまだ知らない。
「好きでもない女の子と付き合って楽しいの?」唯一の親友。早川が言ってくる。
赤毛の天然くるくるパーマのどチビ。顔も小学生みたい。
「だって、やれるじゃん」
「そんなにセックスが必要なのかね」
「テメェみてーな何にも知らない野郎にはわからネェ話。」
「確かに分からないな。」と言って参考書に目を通し始める。こいつはすげぇガリ勉だ。でも、俺より成績が下。
俺が中2の時、あかりが転校することになった。
それも、超有名な青葉女子学園。おばか女子校&お嬢様学校。小学部から女子大までのエスカレーター。だけど、学費は大学並み。なんか酷いことが今の学校であったみたいだ。俺には母さんもおばさんも教えてくれなかった。
叔母さんは「夜勤を増やさないとならないの。姉さんの世話になってばかり。すみません。」と母さんに言っていた。
奥の部屋に行くと、あかりが膝を抱えて泣き腫らした顔で窓から外を見ていた。
「私、シドニーのパパと暮らそうかな。。。シドニーだったら金髪も青い目も普通だから。。。」
「あのさ、叔母さんはあかりのために頑張ってきたじゃん。あかりの父さんだって養育費を増やすって聞いたよ。青女は、あかりに合ってる。青女の女の子は優しいって聞いてるよ。俺も母さんもあかりが居なくなると寂しいよ」と俺が言うと「お兄ちゃん」って言って、あかりは俺に抱きついて小さな時のように泣き出した。
まだ小5の女の子。だけど、子供じゃなくなっていた。少しづつ大人になり始めていた。
青女の制服はとても似合っていた。小学部、中等部は黒のセーラー服。初登校の日。すごく緊張していたみたいだけど、早速、友達ができたと言っていた。「あのね、お兄ちゃん。みんな私みたいな感じなの。ぼーっとしてる。髪の毛も目も「染めるの禁止、カラコン禁止だから、いいねぇ」だって。あかりはニコニコ笑う。「男の子なんか大嫌い。先生も男の先生はあまりいないの。よかった。」
「あかりは男嫌いなの?」「うん。大嫌い。。。お兄ちゃんは別だよ。」
何があったんだろう。。。
そっか、男嫌いか。いいんじゃねぇの。
あかりが中学生になる頃、俺が高校生になる頃から俺たちの関係は変わり始める。いや、俺の方の理由だ。
あかりは、綺麗になってきた。可愛いから綺麗に。俺は、あかりと話すのが苦手になった。さらに、目が合うと自然と目を逸らすようになった。遠くから姿を見ると心臓がドキンとする。
あかりが無邪気に「お兄ちゃん」とハグをしてくるのが耐えられない。
こんな気持ち初めてだ。余裕なんて全くない。
ずっと「妹」だったのに。子供の頃、一緒に風呂入って一緒に寝てたんだ。
俺はあかりから目を逸らすようになった。
最初は怒って絡んできていたあかりも、何も話さなくなってしまった俺に諦めたように接してる。
本当の兄妹だって大人になれば、こんなもんだろ。異性の兄妹はさ。
でも、本当は違うんだ。俺はあかりが好きすぎて普通の態度が取れないんだ。
俺は悩んでる。本当は悩んでる暇なんかなかったのに悩んでいた。
日曜日は、あかりがウチに来ない日。
だから、友達は日曜に連れてくる。あかりを見せたくないから。
早川を連れて二階に上ろうとしたら、廊下の隅にあかりが立ってた。
差し込む光の中で金色の髪が光っていた。
早川が、あかりに目を向けた。
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