「オーロラ」
「な、なによ、こんな朝早くに」
ヴィスはオーロラを押して、オーロラの家に滑り込み、急いでドアを閉めた。
オーロラはオーロラで、まだ顔も洗ってないのにヴィスが来てしまってうろたえていた。
「はぁはぁ」
ヴィスは両手でオーロラの肩をがっしりもったまま、肩で大きく息をしている。尋常ならぬヴィスの様子に、オーロラはこれから言われるであろうことを思って身震いした。
「どうしたの?」
「――聞いてくれ。俺、黒賊に狙われてる。俺だって無駄な殺しはやりたくない。それにお前にだって迷惑がかかる、というか、お前も狙われてしまうはずだ。一刻も早くここを去らなければいけない」
「………!」
「お前と勉強できて俺はうれしかった」
「そ、そんな…。もう…会えないの?」
「たぶんな」
オーロラはヴィスとのお別れを想って、涙を瞳に浮かべた。つぃとひとすじ、珠がくずれ頬をつたってゆく。
「泣かないでくれ…やっぱり俺、ここに残って黒賊全滅させるべきか?」
オーロラは首を横にふった。
「あなたにこれ以上人殺しさせたくない…。でもわたし、あなたと別れたくない…。だって…だって…」
ヴィスは眼を瞑って、しばし黙したあと、オーロラのことを抱きしめて、おさげの外にはみ出している耳たぶに優しくキスを落とした。
「俺がお前に捧げられるものはこれくらいしかない」
「ヴィス!」
オーロラはばっと離れて、顔を真っ赤にして叫んだ。
「じゃあな。どうか、元気で」
「ま、待って。どこに行くつもりなの?」
「――都」
「そう…。気を付けて」
ヴィスは薄く寂しげな笑みを零した。
「俺はこいつがある限り、絶対に死にやしない。安心しろ」
そして、懐から例の拳銃を取り出してくるんと一回りさせた。オーロラの頭を軽くポンポンと叩いて、また寂しげに笑って。
「あ、待って!おじい様が都にいるの。今メモを書く」
言うが早くオーロラは玄関に置いてあった紙のきれっぱしにさらさらと文字を書いていく。
「はい」
「サンキュ。世話になった」
それから、ドアを静かに開けてヴィスは去っていった。後ろを振り返ることもなく。ただ、フード付きのマントをどこか春らしい風にはためかして。
一方、その頃。
セラとアイの家に、年に3回王宮で開かれる大舞踏会の招待状が届いていました。
気難しいお父様がセラとアイ二人を書斎に招き入れました。きっと大舞踏会のことに違いありません。二人は胸を高鳴らせながら、書斎のソファに腰かけました。
「な、なによ、こんな朝早くに」
ヴィスはオーロラを押して、オーロラの家に滑り込み、急いでドアを閉めた。
オーロラはオーロラで、まだ顔も洗ってないのにヴィスが来てしまってうろたえていた。
「はぁはぁ」
ヴィスは両手でオーロラの肩をがっしりもったまま、肩で大きく息をしている。尋常ならぬヴィスの様子に、オーロラはこれから言われるであろうことを思って身震いした。
「どうしたの?」
「――聞いてくれ。俺、黒賊に狙われてる。俺だって無駄な殺しはやりたくない。それにお前にだって迷惑がかかる、というか、お前も狙われてしまうはずだ。一刻も早くここを去らなければいけない」
「………!」
「お前と勉強できて俺はうれしかった」
「そ、そんな…。もう…会えないの?」
「たぶんな」
オーロラはヴィスとのお別れを想って、涙を瞳に浮かべた。つぃとひとすじ、珠がくずれ頬をつたってゆく。
「泣かないでくれ…やっぱり俺、ここに残って黒賊全滅させるべきか?」
オーロラは首を横にふった。
「あなたにこれ以上人殺しさせたくない…。でもわたし、あなたと別れたくない…。だって…だって…」
ヴィスは眼を瞑って、しばし黙したあと、オーロラのことを抱きしめて、おさげの外にはみ出している耳たぶに優しくキスを落とした。
「俺がお前に捧げられるものはこれくらいしかない」
「ヴィス!」
オーロラはばっと離れて、顔を真っ赤にして叫んだ。
「じゃあな。どうか、元気で」
「ま、待って。どこに行くつもりなの?」
「――都」
「そう…。気を付けて」
ヴィスは薄く寂しげな笑みを零した。
「俺はこいつがある限り、絶対に死にやしない。安心しろ」
そして、懐から例の拳銃を取り出してくるんと一回りさせた。オーロラの頭を軽くポンポンと叩いて、また寂しげに笑って。
「あ、待って!おじい様が都にいるの。今メモを書く」
言うが早くオーロラは玄関に置いてあった紙のきれっぱしにさらさらと文字を書いていく。
「はい」
「サンキュ。世話になった」
それから、ドアを静かに開けてヴィスは去っていった。後ろを振り返ることもなく。ただ、フード付きのマントをどこか春らしい風にはためかして。
一方、その頃。
セラとアイの家に、年に3回王宮で開かれる大舞踏会の招待状が届いていました。
気難しいお父様がセラとアイ二人を書斎に招き入れました。きっと大舞踏会のことに違いありません。二人は胸を高鳴らせながら、書斎のソファに腰かけました。