鍵穴ラビュリントス

狭く深く(?)オタク
内容は日々の戯言
イギリス、日本、リヒテンシュタイン、大好きです
プラトニックlove好き

ケイトの6

2013-09-06 15:57:31 | オリジナル小説
 もう初夏です。
 お姫様はねこをひざに乗っけたまま、気難しい表情で編み物をしていらっしゃいました。
 そこに、ケイトが入ってきました。
「おひい様、オレンジジュースを持って参りました」
「分かんない!」
お姫様のヒステリックな叫びと同時にケイトはテーブルの上にオレンジジュースを置いて、お姫様の傍に近づきました。
「どうしたのでございますか?おひい様」
「いまレース編みをやっているのよ。でも細かすぎて分かんないわ」
ケイトはぱっと顔を明るくさせました。
「おひい様。わたしが教えてしんぜましょうか?わたし、こう見えてレース編みは得意中の得意なのですよ」
「まさか?発音もろくにできてないあなたが?」
「おひい様……」
ケイトはうな垂れました。
「でもほんとなのです。田舎では妹と弟のレース編みをいっぱい拵(こしら)えてあげましたから」
「――わかったわ。それじゃあなたの為に教えて頂戴」
「…?」
「あなたの地位をもう少ぅし上げてあげるって言っているのよ!ありがたく思いなさい!」
「おひい様…ほんとですか?」
「出来ばえによるけどね」
お姫様はぷいと横を向きました。
「お任せください」
にっこり笑ったケイトはそれはそれは可愛らしかったので、お姫様は赤面したまま、ケイトをソファの自分の横に座らせました。
 ケイトの手に10歳のお姫様の手はすっぽりうもれてしまいました。
 ケイトは慣れた手つきでレース編みを教えていきます。
「細かいって思っちゃだめです。細かくても目はちゃんとあるのです。出来上がったときのことを思えばこんな苦労大したことありません」
お姫様のいつもより緊張した様子がうかがわれて、
(さわられるのが嫌なのだろう)
とケイトは思いましたが、全然そんなことはありません。お姫様はケイトのことが、本当は大好きなのでした。


*次話から、忙しいので、2週間ごとにうpするようにします。
  待っている方(いるといいのですが…)申し訳ありません。