去年は安倍政権において感染症対策予算が削られていることを指摘、桜を見る会問題でも一番鋭い追及をした日本共産党の田村智子副委員長は2020年6月15日の参院決算委員会で、新型コロナウイルスの影響で広がる解雇・雇い止めや生活困窮への政府の対応を安倍首相に正しました。
この中で、田村氏はドイツでは
「誰一人として、最低生活以下に陥ることがあってはならない」
として、新型コロナ対応で120万人の生活保護利用を見込んでいることを紹介。
それに比べて、日本では保護申請者を厄介者扱いする対応の根っこに、行政が
「生活保護は権利」
の認識を養わないどころか、一部政党が侮蔑や敵意をあおってきたことがあると指摘したうえで、安倍首相に
「生活保護は権利だとこの場で呼びかけてほしい」
と迫りました。
これに対して、安倍首相もとうとう
「文化的な生活を送る権利がある。ためらわずに積極的に申請していただきたい」
と答弁させられたのですが(憲法25条の「健康的で」が抜けているけど、安倍首相にしては上出来でしょう 笑)
ただですね、ねちっこくて往生際の悪い安倍首相はその答弁の前に一言
「先ほど田村委員は一部の政党が生活保護に対して、攻撃的な言質を弄しているという主旨のお話をされましたが、それは勿論、自民党ではないということは確認しておきたいと思いますが」
と、また大法螺を吹いてしまって、田村議員から
「民主党政権の時、ワーキングプアが増えて、それを生活保護で救おうと増やした時に、それを攻撃したのは自民党なんですよ。」
とすかさずダメを押されてしまいました。
たとえば、2012年、お笑いコンビの次長課長のうちの一人のご家族が生活保護を受けていることがわかったときに、片山さつき自民党参議院議員(第二次安倍政権で地方創生・女性活躍などの特命大臣)が、親の仇のように彼を批判し続けて
「生活保護は生きるか死ぬかという状況の人がもらうべきもの」
というテレビで公言して人気絶頂に。
そして、生活保護について
「正直者にやる気をなくさせる!?福祉依存のインモラル」
という書籍も出版したのは記憶に新しいところです。
根っから右翼の伊吹氏はともかく、片山旋風に乗っかったジャーナリストの田原氏とか岩見氏などは恥を知るべき。
河本準一さん親子問題から考えると間違える。生活保護の本質は憲法上の基本的人権である生存権の保障だ!
安倍首相の背後霊こと世耕弘成現自民党参院幹事長(元経済産業大臣)なぞ、雑誌への寄稿で堂々と生活保護受給者に対して、彼らにはフルスペックの人権保障は認められない、
「税金で全額生活を見てもらっている以上、憲法上の権利は保障したうえで、一定の権利の制限があって仕方がないと考える」
と恐ろしいことを言い放っています。
基本的人権というのは人が生まれながらにして持っている権利であり、税金を払っているとかいないとか、福祉を受けているとかいないとかとは全く関係なく保障されるものです。
世耕さんそんなことを言うのなら、議員歳費などすべて税金で暮らしているあなた方国会議員の基本的人権も制限させてくださいよ。
さらには、数少ない安倍首相より頭が悪い議員として知られる石原伸晃自民党幹事長(当時)。
テレビ朝日の番組で
「ナマポ…ゲットしちゃったー、簡単よ、どこどこに行けば簡単にもらえるわよ、こういうものを是正することはできると思う」
という発言をしています。
すみません、ナマポというのは生活保護を縮めて「生保」、これをネトウヨがナマポと呼んでいるんです。
この人も、生活保護が憲法の保障する基本的人権である生存権の具体的な表れだと全く分かっていませんよね。
とにかく、民主党政権時代の2012年、自民党は生活保護受給者を攻撃しまくることで世論を喚起、2012年12月の衆院選挙ではなんと
「生活保護費の1割を削減」
を公約して、民主党に圧勝し、安倍晋三氏は総理の座に返り咲いたのです。
個人的な思い出ですが、政権交代の前後、兵庫県弁護士会の一人として、武庫川の河川敷に住んでおられるホームレスの方々に生活保護の受給申請しませんかと尋ねて回る活動をしたら、ほとんどのテント暮らしのホームレスの方に
「いま、生活保護受けてる人への風当たり強いやろ?このままでええわ」
と断られて、悲しい思いをしたものです。
2012年5月、ホームレスの方のお留守宅に名刺を置いている私。
ホームレス法律相談に関学法科大学院の教え子4名が参加!ロースクールを見くびるな!!
すさまじい数ある自民党による生活保護受給者者たたきのほんの一端だけご紹介しましたが、こんな現実があったにもかかわらず、わざわざ、
「それは勿論、自民党ではないということは確認しておきたい」
と言ってしまう安倍首相の神経と言うか、人格が信じられないんですよ。
こんな歩くモラルハザードには早く退場してもらいましょう。
安倍首相「生活保護バッシングをしたのは自民党ではないと思います」 いえいえ完全に自民党です
藤田孝典 | NPO法人ほっとプラス理事 聖学院大学心理福祉学部客員准教授
6/15(月) 18:37
安倍首相「生活保護バッシングは自民党ではない」
6月15日の参議院決算委員会での田村智子参議院議員(日本共産党)の質問に対する安倍首相の答弁に衝撃を受けた。
正確性を期すため、上記の6:00:00以降の田村智子参議院議員の質疑に対する安倍首相の応答を動画でもご確認いただきたい。
田村智子参議院議員「生活保護はあなたの(受けるべき)権利です。この場でそう呼びかけてもらえませんか。」
安倍首相「先ほど田村委員は一部の政党が生活保護に対して、攻撃的な言質を弄しているという主旨のお話をされましたが、それは勿論、自民党ではないということは確認しておきたいと思いますが…」
田村智子参議院議員「民主党政権の時、ワーキングプアが増えて、それを生活保護で救おうと増やした時に、それを攻撃したのは自民党なんですよ。」
と、こんなやりとりが行われた。
なお、安倍首相は生活保護について、様々な事情がある方もいらっしゃるので、権利ですからためらわずに積極的に活用いただきたいとも答弁している。
この部分はその通りで、過去の自民党関係者の発言とは大きく違うところで、評価できる。
以下に挙げる現職閣僚も含めた自民党関係者は猛省をしていただきたい。
生活保護バッシングが民主党から自民党への政権交代に利用された過去
実は2012年の民主党政権時、野党であった自民党は田村議員が言う通り、苛烈に生活保護バッシングを展開した過去がある。
生活保護を受ける人は働けるのに働かない人、ズルをしてもらって卑怯な人、家族が支えられるのに家族が扶養義務を負わない冷たい人、などという印象を強く植え付ける役割を負ってきた。
最初はあるお笑い芸人が母親を扶養できる能力があるにもかかわらず、生活保護を受けさせていた特異な事例を取り上げた。
これがあたかも不正や違法であるように、マスメディアと一緒になりながら、連日非難し続けた。
生活保護制度は親族の扶養を優先するが、様々な事情や関係性を考慮し、扶養能力があろうとも扶養を強制していない。
扶養するか否かは扶養者の能力ではなく、あくまで相互の意思によるものを考慮して運用を行なっている。
つまり、不正でも違法でもない適正運用の事例を取り上げ、生活保護や受給世帯に対するイメージを毀損させることを意図的におこなってきた。
また、当時は民主党政権下であり、自民党は何が何でも政権奪取をしたい意欲を掲げ、まさに禁じ手として「弱者攻撃」に手を染め、支持者を集め始めたのである。
2012年はリーマンショックの傷跡が残り、東日本大震災に苦しむ人も多く、貧困や格差も厳しい状況であった。
特に、生活保護バッシングは小泉・竹中改革で派遣社員や非正規雇用が増加するなか「頑張って働いても報われない」と嘆くワーキングプア層にネガティブな感情と差別感情、分断を想起させて、巧みに支持基盤に取り込んで行った。
要するに、生活保護受給者を「仮想敵」として設定し、別の社会的弱者を団結させて、支持基盤に取り込むという醜悪な政治手法だった。
もちろん、給与引き上げや生活改善をしろ、という政治要求も収まるため、生活保護バッシングは政治家に大きな免責理由さえ与えてきた。
政治家にとって、生活保護バッシングは、国民生活向上に何も責任をとらずに、支持層も増やせる非常に使い勝手がいい方法だった。
当時のマスメディアも共犯関係にあり、そもそも雑に比較すること自体に意味はないのだが、生活保護基準と単純比較して、いかに年金が少ないか、給料が少ないか、を伝える記事や番組が多く配信された。
政治が悪いことは隠され、関係がない生活保護基準が高すぎる点に焦点が当てられていく。
これらの支持をうけて、その後の国政選挙では、生活保護基準10%引き下げを自民党の公約に掲げて、政権奪取にも成功する。
努力をすることが不公平であり、生活保護のせいで、私たちは不幸になっているという印象を強く意識させるキャンペーンは見事に効いてしまった。
これらの政治手法は「悪き禁じ手」であるが、国内同様、海外でも主に極右政党が差別を利用して、人々のネガティブな思いを巧みに利用する醜悪な政治活動を行なっている。日本でも典型的な差別扇動による政治利用の場面に立ち会ってしまった。
例えば、片山さつき参議院議員は2012年当時に「生活保護は生きるか死ぬかという状況の人がもらうべきもの」というテレビ発言もし、「正直者にやる気をなくさせる!?福祉依存のインモラル」という書籍も出版した。
この書籍では、民主党政権において、働ける年齢層への生活保護支給が急増してきたことを挙げ、政府や自治体に頼る意識自体を戒めている。
極端に言えば、生活保護を簡単に受けるべきではないし、福祉依存はモラル崩壊を招くという主旨だ。
現在のコロナショックにおける経済危機も、リーマンショックと似たような状況である。
生活保護受給世帯は増加している。当時も今も経済危機の発生源は金融市場かウイルスかは別にしても、似たような傾向がある。
私は社会福祉の専門職として、生活保護を受けることによって、命や暮らしが助かり、地域経済にも大きな還流効果があるので、「生きるか死ぬか」以前に、早く生活保護を受けるべきだと一貫して主張している。
誰でも生活保護は申請できる どんどん生活保護を申請しよう 生活保護申請が増えることを大歓迎する理由
だからこそ、2012年当時、片山さつき参議院議員やその周辺は、民主党政権に限らず、私たちのような生活保護受給世帯を支援する団体、生活保護増加を容認する専門家を政治的に利用するため、攻撃対象、激しいバッシング対象とした。
私たちなど、生活困窮者支援団体に対する非難や攻撃、「貧困ビジネス」「不当要求をする集団」「福祉NPOは怪しい」という誹謗中傷も激しさは続いており、新しく支援活動に取り組もうという学生や仲間たちの意欲を大きく削ぐ結果となっている。
いかに生活困窮者が増えようとも、日本の生活困窮者支援団体は増えないように、その効果は絶大であるといえよう。
差別はいつの時代もその社会を破壊してきたが、すでに日本でもそれは起きている、という認識が大事だ。
片山さつき参議院議員だけではない。
自民党所属の世耕弘成経済産業大臣も当時は「生活保護受給者にフルスペックの人権を認めるのはいかがなものか」という完全に一発アウトの差別発言もおこなっている。当時の記事を参照いただきたい。
当然ながら、生活保護受給者が受け取る保護費は権利として支給されるものであり、よほど異常な消費行動がない限り、その使途を制限することは禁じられている。福祉事務所による指導・指示は最小限に留めなければならない、ということが生活保護法の主旨である。
生活保護受給者を一括りにして行動を制限するようなことはあってはならないものだ。
そして、片山氏、世耕氏だけではない。
当時、石原伸晃自民党幹事長はテレビ朝日の報道番組に出演し「ナマポ…ゲットしちゃったー、簡単よ、どこどこに行けば簡単にもらえるわよ、こういうものを是正することはできると思う」という発言をしている。
もう論評に値しないトンデモ発言だが、生活保護は簡単にもらえることが悪いことだという印象を強く植え付けるひどい発言だ。
生活保護制度は言うまでもなく、厳しい資産調査があり、簡単に受けられるようなものではなく、多くの課題を有している。
さらに、自民党幹事長が生活保護をネットスラングであり、差別用語である「ナマポ」などと呼び、公然と生活保護受給に対する差別感情を煽ってきた。
これは明確に言い逃れができないが、当時の自民党幹事長の肩書きによる差別発言である。
安倍首相による「生活保護バッシングをしたのは自民党ではないと思います」という発言はウソであることが明白であり、自民党幹部による生活保護への攻撃だ。
インターネットが普及していない時代は、ある程度のウソも許容されたかもしれない。
しかし、今の時代は少し調べれば、ウソか否かを判断できる時代だ。
安倍首相はもうウソを繰り返すのではなく、事実を認め、差別をこれ以上広げないよう、現職閣僚も含め、過去に差別発言をした者たちへの対策を取るべきである。
差別をしても出世ができるのであれば、今後も同じ過ちは繰り返されてしまうことを意味するのだから。
差別によって、生活保護を受けたくない、生活保護は恥ずかしい、と思ってしまったら、助けられる人も助けられなくなる。
そしてコロナ禍で苦しむ人々が増えないためにも「必要な方はすぐに生活保護を受けてください」と継続的に強いメッセージを発し、生活保護制度も受けやすくなるように、断続的に改正を続けるべきだろう。
生活保護費増加の問題の根源は、給付水準が高すぎるため、本来自立できる人が保護に頼るというモラルハザードが生じていることだ。その結果、国民の間にも不公平感が広がっている。
勤労者所得は直近の10年間で約15%減少しているが、生活保護費は0.7%しか見直されていない。自民党はこうした所得の減少や国民年金とのバランスを考慮し、給付の10%削減を提案している。
現金給付から現物給付への転換も必要だ。生活用品や住宅を現物で支給すれば、貧困ビジネスを抑制できるほか、受給者の自立へのインセンティブにもつながるだろう。
生活保護法改正案で前面に出したいのは、自立支援策だ。具体的には、保護期間に自立後の基金を作る「凍結貯蓄」の仕組みなどを導入することで、働いたほうが得だという明確な方向を打ち出したい。
権利の制限は仕方ない
現物給付や親族の扶養義務の強化で、本来必要な人に届きにくくなるという声もある。しかし本当に生活に困窮していれば、受けにくくなることはないのではないか。
見直しに反対する人の根底にある考え方は、フルスペックの人権をすべて認めてほしいというものだ。つまり生活保護を受給していても、パチンコをやったり、お酒を頻繁に飲みに行くことは個人の自由だという。しかしわれわれは、税金で全額生活を見てもらっている以上、憲法上の権利は保障したうえで、一定の権利の制限があって仕方がないと考える。この根底にある考え方の違いが大きい。
せこう・ひろしげ
1962年生まれ。早稲田大学卒業後、NTTを経て、伯父の地盤を引き継ぎ1998年より参議院議員(自民党)。
(週刊東洋経済2012年7月7日号)