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第二次安倍政権下の2015年、トルコから入国して取材で訪れたシリアで武装勢力に拘束された戦場ジャーナリストの安田純平さん。
3年余りも拘束された結果、2018年に解放され、トルコ経由でやっと帰国して日本国に旅券の再発給を申請されました。
ところが、安田さんに少数民族迫害を報道される危険を感じていたトルコ政府は一連の経緯を受けて安田さんを入国禁止にしており、外務省は旅券法の
「渡航先の法規で入国を認められない者には発給を制限できる」
との規定に基づいてパスポートの発給を拒否しました。
そこで外務省が安田さんにパスポート発給を拒否した処分は憲法違反だとして、安田さんが処分の取り消しを求めた裁判で、東京地裁は2024年1月25日、発給拒否はトルコや近隣国以外への渡航まで制限する措置で、
「外務大臣の裁量権を逸脱し違法」
と認定して、安田さんへの発給拒否の処分を取り消しました。
つまり外務省の処分はやり過ぎだというわけです。
判決を詳しく見ると、この訴訟で原告安田さんは、発給拒否は日本国憲法第22条が
1 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
と定めた「海外渡航の自由」の規定に違反すると主張しました。
そして、安田さんが違憲だと主張した旅券法の規定の目的は
「入国禁止にした国と日本との二国間の信頼関係の維持にある」
と指摘し、当該国やその国の利害に影響を与える国への渡航を制限するのは合理的で違憲とは言えない、としました。
つまり、原告側の法令違憲の主張は排除したわけです。
逆に被告国側は、国際秩序の維持などを理由に全ての国への渡航制限も合理的だと主張しましたが、東京地裁はこの主張に対しては、渡航先を限定した旅券が発給できる制度もあることなどから「採用できない」とこの極端な主張も排除しました。
その上で、東京地裁は、トルコや近隣国以外に渡航することは
「トルコとの信頼関係を損なわない」
から旅券法の発給拒否の趣旨に反しないとして、全ての国への渡航を制限する旅券の発給拒否は
「外務大臣が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用してしたものと言わざるを得ず、違法である」
と判断したのです。
つまり、旅券法の規定自体は合理性が認められ合憲だが、安田さんの場合にこれを適用するのは外務大臣のやりすぎで旅券法違反だ、というわけです。
基本的には日本の裁判所がなかなか違憲判決を出さない伝統的な司法消極主義を維持しながらも、手堅く旅券法の立法趣旨から説き起こした判決なので、これは国が控訴しても安田さんが負けることはないでしょう。
安田さんは判決のあとの記者会見で
「外務省の処分が取り消されたことは喜んでいいと思うが、制約の根拠となっている旅券法に問題があると認められなかったことは残念です」
と話し、安田さんの代理人の岩井信弁護士はこの判決について
「処分が取り消されたのは大きな意味を持つ」
と評価した一方で
「旅券がないと別の国に行けない。絶対的な権利制約なのに、憲法違反などの論点が認められず納得できない」
と語って、控訴する意向を示しました。
この旅券法の違憲性については東京高裁で今後も争われることになりましたが、とにかく、安田さんがトルコなど以外には行けることになって本当に良かった。
ぜひ、ガザやウクライナに飛んでほしいですね!
これは安田さんが身柄拘束されたのではないかと報道された2015年12月に書いた記事。
シリアで身柄拘束の可能性、安田純平氏について国境なき記者団が日本政府に救出の努力求める。
これは2016年に心配して書いた記事。国民の命を救うのは国家の最も基本的な義務。そのために税金払ろとんねん。
【私も署名しました!】戦場ジャーナリスト安田純平さんの即時救出を政府に求める署名開始!【国家の義務】
安田さんは無差別爆撃など凄惨な紛争地の現状を伝えようとフリージャーナリストになって発信を続けてきたのに、パスポートの発券を拒否された2018年以降は海外取材はできていません。
安田さんは判決後の記者会見で
「移動の自由は国家によって制限されるべきではない。それが当たり前のようでそうではなかった」
と語り、紛争地では民間企業の社員も強制退去になるケースがあるとし
「私や紛争地取材だけの問題ではない。『裁量』で発給する、しないを決めていいのか」
と話されました。
戦場ジャーナリストがパスポートがなく、外国に行けなかったら仕事にならないわけですよ。
生活の糧だけではなく、ふたたび生きる望みを絶たれたのも同じことです。
記者会見で安田さんは、外務省による発給拒否について
「人間性や半生を否定されたのと同じだった」
と振り返っておられましたが、安田さんの人間性や半生をテレビの公共電話で堂々と否定したのがダウンタウン松本人志です。
自民党や維新の会という権力と癒着して儲けに儲ける吉本興業の最高の権力者であった松本人志。
安倍政権発足の翌年の2013年に始めたワイドナショーは安倍晋三首相を持ち上げるために作ったと言っても過言ではなく、現に、安倍氏が首相を辞任した後、松本も出番を減らし、そして出演しなくなりました。
そんな安倍政権を揺るがしたのが2015年安田さんが武装勢力に拘束され、安倍政権が手をこまねいて全く助けようとしなかった事件だったので、安倍政治が続く2018年にやっと解放されて帰国した安田さんを松本は叩きまくりました。
ダウンタウン松本人志、文春砲の性暴力事件報道を理由に芸能活動を休止。「事実無根なので闘いまーす。それも含めワイドナショー出まーす」(呆)。松本人志の暴言と安倍晋三・維新の会という権力との癒着を振り返る
2018年10月放送のワイドナショーでは、安倍政権の見殺し方針が猛批判を浴びていたので、安田さんをディスることで安倍首相を弁護。
「そもそもジャーナリズムとはなんなんだろうか。みなさん、ジャーナリズムをうまく利用してるところがあるなって、結構ジャーナリズムでなんでもいけちゃうなーって。
我々みたいな芸人はちょっとなんか言うたらすぐ叩かれるけど、我々も突き詰めたらそこそこのジャーナリズムやからね」
そしてさらに11月には、3年4カ月ぶりに解放された安田さんについて、
「ただ、いろんな人が安田さんへのバッシングをしているじゃないですか。それに対してジャーナリストの人がジャーナリストがいかに大切かを説いている。これはずっと平行線ですよ」
「なぜならば、安田さんを叩いている人は彼がジャーナリストなのかというところで叩いている。ジャーナリストの皆さんはジャーナリストの大切さを言うだけだから、これは交わらないんですよ」
「それ(戦地取材をし、その状況を伝えること)ができる人だったのか、というところで(批判が)起こっている」
戦場ジャーナリストに対して、「彼はジャーナリストなのか」と問う松本人志。
これぞまさに安田さんの
「人間性や半生を否定したのと同じ」
発言でした。
この記事の最後に思わず「お笑い芸人はお笑いだけやっとれ!」と大文字で書いて、あとから『とは言いませんよ。誰にでも言論の自由はあり、芸人さんもどんどん社会問題・政治問題について発言してもらったらいいんですよ。でも、彼って結局視聴率を上げるためにちょっと目立つことを言うだけの人でしょう。こういう勘違いした人には、仮にも「報道的」なこともやる番組はやってほしくないですね。』と付け加えた。
ワイドナショーで松本人志氏が安田純平氏をまだバッシング!「安田さんはジャーナリストなのかということで叩かれている」。
安田さんが6年前に帰国された時には、謝罪しないとご家族を含めて身の危険さえ感じたであろう状況だったんです。
こんな日本の社会は狂っていると思いますよ。
《安田さんを叩いている人は彼がジャーナリストなのかというところで叩いている》
— 安田純平 (@YASUDAjumpei) January 27, 2024
《(戦地取材をし、その状況を伝えること)ができる人だったのか、というところで(批判が)起こっている》
取材して報道番組等で発表しているが?
全く取材できないフジとスポニチこそ無能。https://t.co/a3b0aB1Q3V
安田純平さんの事件をきっかけに「自己責任」論について書いた関連記事。
「自己責任」と「過失責任」は法律学の基礎。自己責任とは「自分のやったことしか責任を負わないこと」
国民は税金によって自己責任を「前払い」している。さらにジャーナリストは命を市民に捧げているのだ。
危険なのは覚悟のうえのはずというのなら、自衛隊員・警察官・消防士の殉職もみな「自己責任」か。
「もう政府に助けを求めないで」
— 安田純平 (@YASUDAjumpei) January 26, 2024
助けを求めていません。
よりによってこの「意見」を取り上げるか。
拘束中の撮影で自分の意志で話せるわけがなく、あれは私が読まされた拘束者の言葉。
私自身は拘束者に分からないかたちで「助けるな」という文章を送っている。https://t.co/PeECGP87uz
未だに日本のマスメディアの報道姿勢はこれ。
およそジャーナリズムを自称するなら、安倍政権が安田さんを見殺しにしようとしたことに踏み込んだらどうなんだ。
安田さんに申し訳ない限りです。
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ジャーナリスト・安田純平さんの旅券発給拒否は「違法である」、処分取り消し命じる…東京地裁
●安田さんは旅券の再発行を拒否された
安田さんは2015年6月、内戦の続く中東シリアに入国したが、その後、武装組織に拘束された。3年以上経った2018年10月に解放されて、隣国のトルコから日本に帰国した。
2019年1月、武装組織に没収された旅券の再発行を申請したところ、外務大臣から同年7月、「トルコへの入国が認められない者」であるため、旅券法13条1項1号に該当するとして、旅券発給を拒否された。
安田さんは2020年1月、旅券法13条1項1号に該当する事実がないため、旅券発給を拒否した処分の取り消しや発給の義務付けを求める訴訟を起こした。さらに2022年12月には、国家賠償法に基づいて損害賠償550万円を求めて提訴していた。
●発給拒否の処分は「違法である」
東京地裁は、安田さんが「トルコの法規によりトルコに入ることを認められない者に該当する」と認めつつも、トルコ及びトルコと地理的に近接する国を除いた地域に渡航したとしても、トルコと日本の「信頼関係が損なわれる蓋然性はない」と判断。
「紛争地域への原告の渡航を我が国が許したとしても、原告が再度テロ組織等から身体拘束を受け、テロ組織等と対峙する諸外国への対応手段に利用される可能性が高いということはできない。
また、紛争地域への原告の渡航を我が国が許すことが、仮に、原告が再度テロ組織等から身体拘束を受け、テロ組織等と対峙する諸外国への対応手段に利用されることにつながり得るものであったとしても、そのことをもって、トルコと我が国との二国間の信頼関係を損なうものになるとはいい難い」(判決要旨より)
それにもかかわらず、トルコ及びトルコに地理的に近接する国を除いた地域への渡航を制約するかたちでされた発給拒否の処分は「外務大臣が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用してしたものと言わざるを得ず、違法である」として、取り消しを命じた。
一方で、すべての地域を渡航先として記載した旅券発給や、トルコ以外のすべての地域を渡航先として記載した限定旅券の発給まで命じることはできず、国家賠償法に基づく損害賠償請求権も時効で消滅しているとした。
シリアで武装組織に拘束され、解放されたフリージャーナリストの安田純平さんへのパスポートの発給をめぐる裁判で、東京地方裁判所は、発給を拒否した外務省の処分は違法だとして、処分を取り消す判決を言い渡しました。
シリアで武装勢力によって3年余りにわたって拘束された安田さんは、拘束中にパスポートを奪われたことから、5年前、再発行の申請をしましたが、外務省は、安田さんはトルコへの入国が禁止されているとして発給を拒否する処分をしました。
これに対し、安田さんがパスポートの発給などを求めた裁判で25日、東京地方裁判所が判決を言い渡しました。
品田幸男裁判長は、トルコやその周辺国への安田さんの渡航については制約する必要性を認めましたが、それ以外の国については、「安田さんが渡航したとしてもトルコと日本の信頼関係が損なわれるとは言えない。安田さんの渡航を制約するのは違法だ」としてパスポートの発給を拒否した処分を取り消しました。
一方、安田さんが求めていたトルコなどへのパスポートの発給については認めませんでした。
安田さんは判決のあとに都内で会見を開き、「外務省の処分が取り消されたことは喜んでいいと思うが、制約の根拠となっている旅券法に問題があると認められなかったことは残念です」と話していました。
外務省「関係省庁と協議し対応決めたい」
判決について外務省は「部分的に国の主張が認められない判決が言い渡された。今後は判決の内容を十分に精査し関係省庁と協議したうえで対応を決めていきたい」とコメントしました。
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全然別分野ですが、北朝鮮拉致でもあり得ると思います
有本恵子さんは留学先のロンドンで拉致されましたからイギリス行きのビザはあったんですが、当然北朝鮮で生存が確認されたとしても正規の入国者じゃないしそれ以外の国で見つかってもそのことは同じ
日本政府がトルコとの外交関係に配慮したと言ってる安田さんのケースと同じことをまさか拉致帰国者にするとは思えませんが、本来旅券に関して同じ扱いをされるべき人達だと思います
自分の意志でイギリスなりシリアに行った、その先は意思に反した国に行く羽目になった、というところまでは共通してますしね
ところで、更新が速い割になぜかコメ欄は静かですね
連投してるのは反米カスだけだし
俺もこいつとバッティングしないよう注意しときますが、「阿修羅」や「世に倦む日日」丸パクリみたいなアホコメントを承認する忍耐を宮武さんが続けられるのかが心配です(笑)
最近、ブログランキングをクリックしてくださいと何度もお願いしているのはそのせいなんです。
それでわたくしもヤサグレておりました笑。
皆さま、コメントもクリックもぜひよろしくお願いいたしますm(__)m
〉「外務大臣が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用してしたものと言わざるを得ず、違法である」
と、「外務大臣が」という主語を明確にして報道しているのは、私の見たところ引用された弁護士ドットコムと、朝日新聞ぐらいでした。
より多くのメディアは、「(外務省の)裁量権を逸脱し」といった、主語がよく分からない書き方だったと思います。
NHKなどは、何故違法とされたのかすらよく分からない、巧妙な書き方をしています。
どうしてこうなるのでしょうか。また、実際に裁判官が言い渡したのは、どのような言葉だったのでしょうか
ちなみに入管難民法は法務大臣、生活保護法は厚生労働大臣などなど、日本の行政法規はその問題の管轄官公庁の長に権限を与えるという形式で、規定されています。
朝日新聞と弁護士ドットコムはさすがというところですね。
そうなると、やはり「逸脱し濫用した」のは、外務大臣ということですね。
実務上はほぼ現場に権限委譲されているのでしょうが、それは通常の発行時の話で、発行拒否ともなれば役人の一存で決められるわけではなく、形式的でない外務大臣の決裁が存在したと見ることが出来ると思います。
まして、当時の外務大臣であった河野太郎は、安田さんと面談していた事実もあるようです。
裁判官がそのような判断をしたということは、人権侵害が発生していたということで、それを「誰がやったのか」というのは小さくない問題だと思われます。