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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

米国が「原爆の日」式典に参加。国際人道法違反の無差別殺戮。「不必要な苦痛」。原爆投下を謝罪せよ。

2015年08月05日 | 被爆者援護と核兵器廃絶

 

 それはそれで、ある意味結構なことなのですが。

 アメリカ国務省(日本で言う外務省)は、明日2015年8月6日行われる「広島原爆の日」の式典と、9日に行われる「長崎原爆の日」の式典にケネディ駐日大使が去年に続いて参列するほか、核軍縮を担当するゴッテモラー国務次官も参列すると発表しました。

 国務省のトナー副報道官は4日の記者会見で、

「オバマ大統領が目指す核兵器のない世界に向けて、日本とともに取り組みたいということだ」

「戦後70年を迎え、日本と長期的な関係を築くなか、8月6日と9日は、厳粛に思いをはせる日であり、より平和な世界に向けて、われわれの意志を新たにするものとなる」

として、オバマ大統領が就任以来、掲げる「核兵器のない世界」の実現を日本とともに目指すというメッセージになるという認識を示しました。

 オバマ政権になってから、「原爆の日」の式典には、2010年に、当時の駐日大使がアメリカとして初めて参列しましたが、ワシントンから、政府高官を派遣するのは今回が初めてで、原爆投下から70年となる節目の年に、アメリカとして核軍縮に取り組む姿勢を強調するねらいがあるということです。

2009年4月5日、プラハでの、オバマ米大統領の有名な核兵器廃絶演説。末尾に詳報掲載。

 


 政権2期目になって、医療保険制度改革(いわゆるオバマケア)やキューバとの国交回復、イランとの核開発停止合意と成果を上げ、やはり前任のブッシュ大統領とは一味違うということを証明したオバマ大統領ですが、大統領就任直後にプラハで

"I state clearly and with conviction America's commitment to seek the peace and security of a world without nuclear weapons."

「今日、私は核兵器のない世界の平和と安全保障を追求するという米国の約束を、明確に、かつ確信をもって表明する。」

と演説した核廃絶については、いったい何をしたというのでしょうか。

 原爆投下から70年の今年。

 オバマ大統領が自分で直接広島、長崎に訪問し、生き残ってこられた被爆者の方々と、亡くなった方々と、広島・長崎の街と、「唯一の被爆国」日本に対して、こう謝罪したらどうだったでしょうか。

 

 

 

「原爆投下当時は核兵器の使用を禁止する明文の条約はありませんでした。

 しかし、ハーグ条約は、すでに市民に対する無差別殺戮を禁じていました。

 また、戦争の目的に不必要な苦痛を相手国の国民に与えることも禁じていました。

 原爆投下は、まさに広島、長崎市民に対する無差別殺戮でした。一瞬にして、広島、長崎市民を何十万人も殺してしまいました。

 また、生き残った方々も、家族が死に絶え、これまで生きてきた共同体を徹底的に破壊された広島、長崎市民の苦しみは想像を絶するものです。

 母を、子を、見捨てて逃げざるを得なかった方々の痛恨の手記や詩は、涙なしには読めないものでした。」

 

 

「我々アメリカは、放射線被害を調査して資料を集めるためだけに被爆者を診察しましたが、治療は一切しませんでした。

 また、原爆投下の被害を報道されては困るため、GHQが徹底した報道管制を敷き、被爆者の救済を遅らせました。

 そもそも、広島と長崎で違うタイプの原爆を投下したのも、本当に申し訳ないことですが、人体実験の側面がありました。

 そして、原爆は戦争終結後も市民に放射線後障害、いわゆる原爆症をもたらしました。

 その被害は放射線に被曝した後、数十年経ってもまだ現れ、今もなお被爆者の方々を苦しめています。

 これこそ、戦争が終わっても、戦争被害者が死ぬまで続く、戦争に「不必要な苦痛」以外の何物でもありません。

被爆者の平均年齢が80歳を超える。原爆症認定訴訟、国は被爆者が死に絶えるのを待っているのか!

 

 

 

「原爆投下は明文の規定はなかったとしても、国際法の基盤にある国際人道法に反する。

 そう言って、国際司法裁判所は1995年11月、

『核兵器による威嚇、および、核兵器の使用は一般的に言って国際法に違反する』

という勧告的意見を出しました。

 この勧告的意見で、裁判所が判断しないとしたのは(合法としたのではありません)、

「国の存立にかかわる究極の自衛の場合」

の核兵器の使用についてでした。

 しかし、第二次大戦における原爆投下の当時、存立の危機に立っていたのは日本であって、アメリカではありません。

 アメリカの原爆投下に国際司法裁判所の勧告的意見の例外部分が当たる余地はなく、広島長崎への原爆投下が国際法違反であったことは明らかです。

 しかし、アメリカの法制度はアメリカ政府に対する責任追及を不可能にしていますので、今まで、アメリカが法的責任を問われることはありませんでした。」

国際司法裁判所に核兵器の違法性について勧告的意見を求めた世界法廷運動についての個人的思い出

(国際司法裁判所で証言する平岡敬広島市長)

 

伊藤長崎市長
(核兵器使用の違法性について、写真パネルも使って証言する伊藤長崎市長)

 

核兵器裁判 (NHKスペシャル・セレクション)
NHK広島核平和プロジェクト (著)
日本放送出版協会

それはある主婦のキッチンから始まった(という話にこの本ではなってます。その方がドラマチックだからw)。市民の会合から国連総会の議決を経て、国際司法裁判所に持ち込まれるに至った史上初の「核兵器存在」の是非を問う司法判決の流れを克明に辿る。

 

 

「第二次世界大戦における、アメリカによる原爆投下から70年。

 私、バラク・オバマは、アメリカの広島、長崎に対する原爆投下を謝罪するためにここに来ました。

 広島、長崎の、そして全国、全世界にいらっしゃる被爆者の皆様。

 皆様の健康を奪い、家族を奪い、社会を破壊した原爆投下について、アメリカ政府は痛切に反省し、心から深く、深く深く謝罪いたします。

 アメリカがしてしまったことは取り返しがつきません。そして、原爆投下後も、アメリカは核実験を繰り返し、核兵器を製造し続けてきました。

 今、アメリカ大統領として、被爆者の皆様へのお詫びとともに、お誓い申し上げます。

 アメリカは、自国の、そして世界の核兵器を廃絶します。

 皆様に「核なき世界」を見ていただくために、全力で、全速力で核兵器廃絶のための努力をすることをお約束して、今日の私のお詫びと哀悼の言葉とさせていただきたいと思います」

「白人」警官により殺害されたアフリカ系市民に哀悼の意を表して、アメージング・グレースを歌ったオバマ大統領。

あなたが鎮魂すべき相手は日本にもいる。

 

 

なお、冒頭の写真は、2015年7月19日、フロリダ州で17歳のアフリカ系(黒人)少年を射殺した男性が正当防衛で無罪になった7月13日の判決に触れ、「少年は、35年前の自分だったかもしれない」と沈痛な表情で述べるオバマ大統領。

 

 

アメリカが謝ったら、被爆者の方々もどんなにか報われるかしれません。

植民地支配も侵略も謝れない安倍首相には望むべくもなく、資格もないことですが、本来、日本政府がアメリカに原爆投下の謝罪を要求すべきなのです。

アメリカのミサイルを「弾薬だから」と言って運搬している場合か。

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中国・北朝鮮が賛成している核兵器禁止条約に反対する日本に広島・長崎への訪問を呼び掛ける資格はない 

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「原爆の日」式典に米政府高官が初出席へ

 アメリカによる原爆投下から70年となる今年、広島と長崎の平和記念式典に初めてアメリカ政府の高官が出席することになりました。

 アメリカ国務省は3日、核軍縮を担当するガテマラー国務次官が6日と9日に、それぞれ開かれる広島と長崎の式典に出席すると発表しました。アメリカが広島と長崎の式典に政府高官を派遣するのは初めてで、「核兵器のない世界」の実現を目指すオバマ政権が引き続き、核軍縮に取り組む姿勢を示す狙いがあるとみられます。 

 ガテマラー国務次官は6日から10日まで日本に滞在する予定で、7日は東京都内で講演を行い、その後、岸田外務大臣と会談するほか、10日には軍縮問題に関する日米協議に臨むということです。また、東京のアメリカ大使館によりますと、ケネディ駐日大使も広島と長崎の平和記念式典に出席する方向です。ケネディ大使が式典に出席するのは去年に次いで2度目です。(04日14:14)


米 「原爆の日」式典参加「核なき世界目指す」

8月5日 6時49分 NHK

アメリカ国務省は、核軍縮を担当する国務次官が、初めて、広島と長崎の「原爆の日」の式典に参列することについて、オバマ大統領が掲げる「核兵器のない世界」の実現を日本とともに目指すというメッセージになるという認識を示しました。
アメリカ国務省は、6日行われる「広島原爆の日」の式典と9日に行われる「長崎原爆の日」の式典にケネディ駐日大使が去年に続いて参列するほか、核軍縮を担当するゴッテモラー国務次官も参列すると発表しました。
国務省のトナー副報道官は4日の記者会見で、「オバマ大統領が目指す核兵器のない世界に向けて、日本とともに取り組みたいということだ」として、オバマ大統領が就任以来、掲げる「核兵器のない世界」の実現を日本とともに目指すというメッセージになるという認識を示しました。そのうえで、「戦後70年を迎え、日本と長期的な関係を築くなか、8月6日と9日は、厳粛に思いをはせる日であり、より平和な世界に向けて、われわれの意志を新たにするものとなる」と述べました。
「原爆の日」の式典には、2010年に、当時の駐日大使が初めて参列しましたが、ワシントンから、政府高官を派遣するのは今回が初めてで、原爆投下から70年となる節目の年に、アメリカとして核軍縮に取り組む姿勢を強調するねらいがあるとみられます。


オバマ大統領、核廃絶に向けた演説詳報

2009年4月5日23時14分 朝日新聞

写真

プラハで演説するオバマ米大統領=AP

 オバマ米大統領が5日、プラハで行った演説の主要部分は次の通り。

 米国は、核兵器国として、そして核兵器を使ったことがある唯一の核兵器国として、行動する道義的責任がある。米国だけではうまくいかないが、米国は指導的役割を果たすことができる。

 今日、私は核兵器のない世界の平和と安全保障を追求するという米国の約束を、明確に、かつ確信をもって表明する。この目標は、すぐに到達できるものではない。おそらく私が生きている間にはできないだろう。忍耐とねばり強さが必要だ。しかし我々は今、世界は変わることができないと我々に語りかける声を無視しなければならない。

 まず、米国は、核兵器のない世界を目指して具体的な方策を取る。

 冷戦思考に終止符を打つため、米国の安全保障戦略の中での核兵器の役割を減らすとともに、他の国にも同じ行動を取るよう要請する。ただし核兵器が存在する限り、敵を抑止するための、安全で、厳重に管理され、効果的な核戦力を維持する。そしてチェコを含む同盟国に対し、その戦力による防衛を保証する。一方で、米国の核戦力を削減する努力を始める。

 核弾頭と貯蔵核兵器の削減のため、今年ロシアと新たな戦略兵器削減条約を交渉する。メドベージェフ・ロシア大統領と私は、ロンドンでこのプロセスを始め、今年末までに、法的拘束力があり、かつ大胆な新合意を目指す。この合意は、さらなる削減への舞台となるものであり、他のすべての核兵器国の参加を促す。

 核実験の世界規模での禁止のため、私の政権は、直ちにかつ強力に、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を目指す。50年以上の協議を経た今、核実験はいよいよ禁止される時だ。

 核兵器に必要な材料を遮断するため、米国は、核兵器用の核分裂性物質の生産を検証可能な方法で禁止する新条約(カットオフ条約)を目指す。核兵器の拡散を本気で止めようとするなら、核兵器級に特化した物質生産に終止符を打つべきだ。

 次に、我々は核不拡散条約(NPT)を強化する。国際的な査察を強化するために(国際原子力機関〈IAEA〉に)さらなる資源と権限が必要だ。規則を破ったり、理由なくNPTから脱退しようとしたりする国に、すぐに実のある措置をとる必要がある。民生用原子力協力のため、国際的な核燃料バンクを含む、新たな枠組みを作り、核拡散の危険を増すことなしに原子力利用ができるようすべきだ。

 今朝我々は、核の脅威に対応するため、より厳しい新たな手法が必要なことを改めて思い起こした。北朝鮮が長距離ミサイルに利用できるロケットの実験を行い、再び規則を破った。

 この挑発は、午後の国連安全保障理事会の場のみならず、核拡散を防ぐという我々の決意の中でも、行動が必要であることを際立たせた。規則は拘束力のあるものでなければならない。違反は罰せられなければならない。言葉は何かを意味しなければならない。世界はこれらの兵器の拡散を防ぐために共に立ち上がらなければならない。今こそ厳しい国際対応をとる時だ。北朝鮮は脅しや違法な兵器によっては、安全と敬意への道は決して開かれないことを理解しなければならない。すべての国々は共に、より強力で世界的な体制を築かなければならない。

 イランはまだ核兵器を完成させていない。イランに対し、私の政権は相互の利益と尊敬に基づく関与を追求し、明快な選択を示す。我々はイランが世界で、政治的、経済的に正当な地位を占めることを望む。我々はイランが査察を条件に原子力エネルギーの平和的利用の権利を認める。あるいは一層の孤立や国際圧力、中東地域での核兵器競争の可能性につながる道を選ぶこともできる。

 はっきりさせよう。イランの核や弾道ミサイルをめぐる活動は、米国だけでなく、イランの近隣諸国や我々の同盟国の現実の脅威だ。チェコとポーランドは、これらのミサイルに対する防衛施設を自国に置くことに同意した。イランの脅威が続く限り、ミサイル防衛(MD)システム配備を進める。脅威が除かれれば、欧州にMDを構築する緊急性は失われるだろう。

 最後に、テロリストが決して核兵器を取得しないよう確保する必要がある。

 これは、世界の安全への最も差し迫った、大変な脅威だ。核兵器を持てば、テロリスト一人で大規模な破壊行為が可能になる。アルカイダは核爆弾を求めていると表明している。我々は、安全に保管されていない核物質が世界各地にあることを知っている。人々を守るためには、我々は目的意識を持って直ちに行動しなければならない。

 今日私は、テロリストなどに狙われうるあらゆる核物質を4年以内に安全な管理体制下に置くため、新たな国際的努力を始めることを発表する。これらの物質を厳重な管理下に置くため、新しい基準を制定し、ロシアとの協力関係を拡大し、また他の国との新たな協力関係も追求する。

 核物質の闇市場をつぶし、移送中の物質を探知・阻止し、財政手段を使ってこの危険な取引を妨害するといった取り組みも強化しなければならない。こういった脅威は継続的なものであるため、大量破壊兵器の拡散防止構想(PSI)や核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアチブ(GI)などを恒久的な国際機関に変えるべきだ。まずそのはじめとして、米国は1年以内に核管理に関する首脳会議を主催する。

 こんなに広範囲な課題を実現できるのか疑問に思う人もいるだろう。各国に違いがあることが避けられない中で、真に国際的な協力が可能か疑う人もいるだろう。核兵器のない世界という話を聴いて、そんな実現できそうもない目標を設けることの意味を疑う人もいるだろう。

 しかし誤ってはならない。我々は、そうした道がどこへ至るかを知っている。国々や人びとがそれぞれの違いによって定義されることを認めてしまうと、お互いの溝は広がっていく。我々が平和を追求しなければ、平和には永遠に手が届かない。協調への呼びかけを否定し、あきらめることは簡単で、そして臆病(おくびょう)なことだ。そうやって戦争が始まる。そうやって人類の進歩が終わる。

 我々の世界には、立ち向かわなければならない暴力と不正義がある。それに対し、我々は分裂によってではなく、自由な国々、自由な人々として共に立ち向かわなければならない。私は、武器に訴えようとする呼びかけが、それを置くよう呼びかけるよりも、人びとの気持ちを沸き立たせることができると知っている。しかしだからこそ、平和と進歩に向けた声は、共に上げられなければならない。

 その声こそが、今なおプラハの通りにこだましているものだ。それは68年の(プラハの春の)亡霊であり、ビロード革命の歓喜の声だ。それこそが一発の銃弾を撃つこともなく核武装した帝国を倒すことに力を貸したチェコの人びとだ。

 人類の運命は我々自身が作る。ここプラハで、よりよい未来を求めることで、我々の過去を称賛しよう。我々の分断に橋をかけ、我々の希望に基づいて建設し、世界を、我々が見いだした時よりも繁栄して平和なものにして去る責任を引き受けよう。共にならば、我々にはできるはずだ。

 

 

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1 コメント

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アメリカは過去の戦争について (H.KAWAI)
2015-08-19 15:54:16
○「謝らない」というのが「不動のスタンス」じゃなかったんですかね。
○例えば、イラク戦争では開戦の根拠が無かった事を認めましたが、謝りましたか?
○ですが、仮にオバマ大統領が広島・長崎への原爆投下について謝罪したとしてもですね、それで何かが変わりますかね。
○相変わらず沖縄には米軍が居座っていて、日本の空は米軍機優先だし。謝ったんだから、昔の事は忘れて米軍には精一杯協力するんだよって事になりそうで、何も言ってくれない方がマシって気がします。
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