「採用は天秤座を優先」。
２０１２年１月７日付け共同通信によると、中国の週刊誌「新民周刊」最新号が、湖北省武漢市の民間企業が昨年、求職者の星座を採用基準にしていたことが発覚したと報じたとのこと。
この企業の責任者は「てんびん座は仕事にまじめで友好的」と話した、ということです（笑）。
中国でこうしたケースが明るみに出るのは初めてではなく、２０１０年にも物流企業が採用の際に星座や血液型を参考にしていたことが問題だと報じられたそうです。
運勢占いなどの信仰が根強い中国では、人材登用の際に意見を聞くため占星術師を雇う企業もあるということで、星座だけでなく、求職者のえとを条件にする企業も出てきているとのこと。
さて、このように特定の星座や血液型など合理的とは言いがたい基準を採用条件とする企業の行動が問題視されているのですが、これって許されないことなんでしょうか？
（雇用における差別問題は毎号のように特集されている労働法・労働問題の争点を鋭く探る専門誌
就職希望の人に憲法２２条１項が保障する職業選択の自由があるように、民間企業の側にも、同項に由来する「営業の自由」があり、契約の自由があり、誰と雇用契約を結んで採用するかは自由であるはずです。
この中国の会社のような民間企業が、てんびん座の新人ばかり集めて損をしてもそれはその企業の自己責任です。
もちろん、一般企業に契約自由の原則があると言っても限界はあって、性別で差別すると法の下の平等に反するとか、採用される側の思想・信条を調査して内定を取り消したりすると、その人の思想良心の自由違反になるというようなことは大いにあり得るわけですが。
ところが、日本の官公庁や地方自治体が公務員の採用に当たって、「これからは獅子の時代だ！獅子座優先！！（笑）」などとやると、これは許されないでしょう？
それはなぜなんでしょうか。
まず、国や地方公共団体には人事採用に当たって能力本位の合理的な選考基準をもって臨むべきであるという法的拘束があると考えるべきです。
例えば、国家公務員法３３条１項は「職員の任用は、この法律の定めるところにより、その者の受験成績、人事評価又はその他の能力の実証に基づいて行わなければならない」と規定しています。
なぜなら、国や地方公共団体はその職務を通じて国民の人権保障のために奉仕するという公的な立場にあるからです。
それを公務員を目指す国民の側から言えば、公務員になるのは単なる職業選択の自由の行使のみならず、憲法１５条が保障する「公務就任権」の行使であるからだといえるでしょう。
従って、国や地方公共団体の恣意的な採用は、人事権の濫用として違法となるのです。
（「就職・失業・男女差別 いま、何が起こっているか」
著者：岸智子 日本経済評論社
失業やフリーター問題、女性の就業や少子化など現在の日本で進行している様々な問題を取り上げ、人々が生産活動を行い、その成果を分かち合えるような仕組みを考える。）
このところ、公務員に対して一方では「公僕」だから政治的活動の自由や労働基本権など一般市民としての権利を認めないとしながら、免職・降格など待遇に関しては民間以下を求めるという、矛盾したことを言う政治家が目立つようです（そうです、また橋下大阪市長のこと。 笑）。
公務員も民間並みであれというとき、それは公務員も一般市民の一人であり市民的権利を認めるべきであることをも意味するということを忘れてはなりません。
そして、採用の場面でも明らかなように、公務員はやはり一般企業の従業員とは違う役割を担っているのであり、そこから義務も生ずるけれども、義務は権利と表裏一体です。
したがって、公務員の地位に伴う身分保障は、国民の福利のために公務員関係を憲法が予定しているという憲法由来のものですから、単なる「既得権益」と呼んでなんでも剥奪すれば良いというものでもないことを銘記すべきでしょう。
ところで。
橋下・ハシズムについて書くと、必ず、私が公務員や既得権益と関係があるんだろうとコメントをする人がいますが、私、橋下さんに対するのと同様、公務員とも労働組合とも政党とも、「既得権益」とはな～～んも利害関係ありません。
当方、獅子ならぬ一匹狼ですので、そこんとこよろしく。
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