歴タビ日記~風に吹かれて~

歴タビ、歴史をめぐる旅。旅先で知った、気になる歴史のエピソードを備忘録も兼ね、まとめています。

映画「日本のいちばん長い日」1967版

2023-01-31 14:37:45 | 歴史 本と映画
アマゾンプライム、おためし会員のうちにと、
日本の戦争映画を観ている。
前記事「226」に続き、「連合艦隊」(1981)、
そして「日本のいちばん長い日」。

「日本のいちばん長い日」は、2015版を観たかったのだが、
アマゾンビデオでは購入しかできないので
1967版を観た。

半藤一利の『決定版 日本のいちばん長い日』(文春文庫)を
読了したのは、一昨年だったか。
人名は、大臣クラス程度しか覚えていないので
例によって例の如く、「Wikipedia」のキャスト欄で確認しながらの
観賞となった。

それでも、白黒画像のうえ、皆、軍服姿なので
誰が誰やら、わからない。
そもそも、1967年の映画なので、知らない俳優さんも多い。
ちなみに、女性俳優は新珠三千代だけしか出ない。

とにかく、男臭い映画。
8月15日、みな真夏の汗をダラダラ流しながらの演技なうえ
グロいシーンもバンバン出てくる。
血が飛び散るのは、岡本喜重監督だからか。

それゆえ、兵隊が皆、坊主頭でないのは、
この際、眼をつぶれるくらいだ。

内容はわかっているくせに、
怖くて緊張してしまった。

でも最終盤は、なだれ込むようにして終わってゆくのが残念。



戦争映画を見続けているせいか、とみに思うことなのだが・・・
(時代劇も同じ)

刀や銃を持っている人間が、その辺を歩いているのは、恐ろしい。
かつては武士、終戦までは軍人。
いつなんどき、その武器が私的な目的のために使われるか
わからない。
同じ事は、師団にもいえる。
兵隊を私的目的のために、動かす輩。
とにかく危険。銃刀法は不可欠、しっかり取り締まってもらわねば。



さて映画。

玉音放送で終戦。
私ですら、テレビなどで何度も聞いたことのある、
天皇のお声「たえがたきを耐え」・・・

その放送の陰で、これほどの出来事があったのだと、
ひたすらに恐ろしい。

考えてみれば、進駐軍は日本軍の抵抗を恐れていたというのだから
敗戦を受け入れられず、徹底抗戦を叫ぶ輩がいるのは当然。
危機管理が甘いぞ、内閣も宮城も、陸軍も、どこもかしこも。
もしも、万が一、玉音盤が反乱兵に見つけられていたら、
ポツダム宣言受諾は、吹っ飛びかねない。
もっとたくさんの命が喪われてしまう。

現に、8月15日終戦の当日、前夜に特攻へと飛び立った者や
埼玉県の熊谷のように空襲された街もある。
(壺井栄「母のない子と子のない母と」は、この空襲で焼け出された
母子が小豆島へやってくるところから始まる)

印象的だったのは
宮城事件の首謀者(反乱兵士)が
「226の連中が反乱軍となったのは、天皇を擁していないからだ。
我々は(宮内庁?省?を占拠したので)反乱軍ではない。
攻撃してきた方が反乱軍なのだ。
天皇に攻撃するはずがない。
勝利は我々にある」と叫ぶ。

怖いなぁ・・・
そもそも、軍が動いたのは、偽の命令書が、
反乱者に偽造されたからで・・・

こんな風に権威が悪用されてしまうのは歴史でも明らか。
「錦の御旗」の偽物が出てきたことだってある。
平和な世では考えられないことが、
非常時には起こるのだ。肝に銘じなければ。

あれから80年近くの年月が流れたが、
私も含め、やっぱり、この国は、もろもろの危機管理が甘い。


映画では、三船敏郎演じる阿南惟幾 ・陸軍大臣が自決する際、
義弟・竹下中佐らに語りかける。
「全ての人たちが一緒になって、この国を再建するしかない」と。

その後、阿南は、こう締めくくる。
原作には、管見する限りない。
「生き残った人びとが、こんな惨めな日を迎えないよう、
再建してほしい」と。

平和を望むというのとは、ちょっと違う言葉。
とりようによっては、もっと武力を持て、ともとれる。
曖昧。
死にゆく阿南の言葉だからか?
これは、いらなかったように思う。


さて、このあと、2015版「日本のいちばん長い日」を
観ることはあるだろうか。
本木雅弘の昭和天皇と、松山ケンイチの佐々木武雄・横浜警備隊長は
観たい気もするけれど・・・

きっと、1967年の白黒映像と比べると、
美しく感じるような気がする。
「日本のいちばん長い日」は、絶対に、美しく感じてはいけない。
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