新型コロナウィルス、第11波の流行にのってしまった。
去年の1月は、夫が罹患しても、やりすごせたのに・・・
既に夏バテ気味で体力が落ちていたから、
今回は、ひとたまりもなかったのだろう・・・
療養中、熱が下がるのを待ちかねて、本を読む。
昨秋、インフルエンザにかかったとき、
半藤末利子『硝子戸のうちそと』(講談社)を読んで大泣き、
「病人なんだから、もっと明るい本を読みなよ」と
夫に呆れられたのに・・・
重い・・・といったら、今回は、それ以上。
性懲りもなく読んだのは、
ハン・ガン著 斎藤真理子訳『別れを告げない』(白水社)。
世は何度目かの韓国大ブームながら、
ヘソマガリなので、あえて韓流には背を向けてきた。
辛いモノ、食べられないし💦
それでも、小説だけは、話題になった大ベストセラーのあの小説を筆頭に、
いくつか読んはみたのだけれど・・・どうもね😞
辛いモノ、食べられないし💦
それでも、小説だけは、話題になった大ベストセラーのあの小説を筆頭に、
いくつか読んはみたのだけれど・・・どうもね😞
ところが、本作は違った。
まず、わたしが全く知らなかった、
戦後すぐの事件をテーマにしていることが大きかった。
「済州島四・三事件」
1948年3月3日、南半分だけの「単独選挙」に反対して済州島民が
起こした武装蜂起を契機とする、朝鮮半島の現代史上最大のトラウマ
というべき凄惨な事件である~本書より
1950(昭和25)年の朝鮮戦争で、日本は特需に沸き、
戦後復興を大きく進めているのだから、
その直前に、朝鮮半島で何が起きていたかは
ぜひ知りたいと思ったのだ。
あらすじを、ざっくりと。
始まりは現代のソウル。
著者自身の投影であろうキョンハは、
友人のインソンから、突然、病院へ呼び出される。
済州島にいるはずの友人が、なぜ?
インソンは、大けがを負い、済州島の病院から
ソウルへ緊急搬送されてきたのだった。
状況は予断を許さない。
インソンは、キョンハに済州島の自宅へ向かうよう、頼み込む。
着の身着のままながら、友人の願いを聞き、
大雪の済州島へと向かうキョンハだった・・・
読んでいて、あまりにも美しい描写に、何度もため息をつく。
読み始めて知ったのだが、著者は、国際ブッカー賞受賞者、
しかもアジア人初受賞と言うではないか!
わたしは「ブッカー賞」に弱いのだ。
若かりし頃、アニタ・ブルックナーの「秋のホテル」を
読んだときの、あの衝撃!
(頑張って原文で読もうとしたよね・・・挫折したけど!)
そういえば、本書にも、どこか、
ブルックナーの如き静謐さが漂っているのは
ブッカー賞ゆえかも・・・
とにかく、凄惨な歴史を扱っているのに、小説自体は美しいのだ。
とりわけ、雪の描写の見事さ!
多くの犠牲者のなか、その顔に雪が積もっているか否かで
生者か死者か見極める、美しくも切ないシーンが忘れられない。
やがて、夢とうつつを行きつ戻りつする不思議な世界が続く。
いつしかソウルにいたインソンが帰ってきて・・・
事件について語り出す。
それは自身の母親の生き様をたどることでもあった。
実は、インソンの家は、「済州島四・三事件」の
処刑現場にほど近く、インソンの母親は、
その村のたった二人しかいない、生き残りだった。
物語は歴史を語っているのだが、
同時に母をめぐる愛の物語でもある。
著者ハン・ガン自身は、愛の物語として書いたということが、
よくわかるのだ。
それは、インソンの母親の存在に負うところ大である。
インソンと母、母と母の両親兄弟、とりわけ兄と・・・
その想いがたまらなく胸に迫る。
それだけに、この事件が、長らく、隠蔽されてきた、
最近になってようやく真実の解明に動き出したという
事実が、重くのしかかる。
こんなに悲惨な歴史があったのだね、
日本が戦争に負けて、故国へ帰国したのに、再び日本へ渡ってきたという
日本が戦争に負けて、故国へ帰国したのに、再び日本へ渡ってきたという
「南」の人たちの中に、済州島出身者が多いのは、
このためだったんだね。
・・・折しも、「虎に翼」、
今週は、韓国・朝鮮人問題が扱われている。
ドラマは既に戦後を迎えており、
今年の、いわゆる「八月ジャーナリズム」期間は、
どう描くのかと思っていたら、こうきたか。
さすが、攻めるなぁ~~~!
新しい切り口として、「戦争」や近代日本の有様を、
「虎に翼」流の見せ方を楽しみにしている。
最後に、ハン・ガン小説について。
本書は作者の最新刊である。
こちらは繰り返し、読みたいので、購入を検討中。
さらに、作者の過去の作品を読んでみたいのだけれど、
本作を超えることってできるのだろうか。
本作を超えることってできるのだろうか。
がっかりしたくないのだ。
そう思うと、図書館にサクッと予約ということができずにいる。
そう思うと、図書館にサクッと予約ということができずにいる。
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おつきあいいただき、どうもありがとうございます。
個人の読書感想文です。
もろもろの不備はお許しを。