「私にも、力があるのです」と、28歳のあるシングル・マザーが口を開いた。彼女が経営するレストランはカクマ・キャンプにあり、周りには男性が経営する何百もの店が軒を連ねている。自分の成功について、アマさん(仮名)は、「売買から経営まで、かなりのことができるようになりました。成功の秘密は、自分が働き者だということ」と話す。
アマさんのレストランは、ソマリ市場内でも特に賑やかで人通りが多い一画に位置している。おいしく、丁寧に調理されたおいしい食事は人気があり、あちこちのコミュニティーから人が訪れる。地元の若い女性たちが給仕を担当し、仕事がスムーズに回っている。
こうした働きの甲斐あって、アマさんのビジネスは成功した。「一日に3000ケニア・シリング(訳注=約3000円)の売り上げがあります。毎日、50人から70人のお客様にご利用いただいています」と言う。
アマさんはルワンダ人コミュニティー出身。カクマ・キャンプに住んですでに10年ほど経つ。夫は、10年以上前にルワンダで殺害された。
ビジネスが成功したものの、その経験は決して簡単なものではなかったそうだ。「父親のいない子どもを育てていくことを受け入れられず、本当に悲嘆にくれていました。誰からも見放された気がして。子どもたちも、私が頻繁に泣く姿に動揺しました」と言う。
怒り、自責の念、孤独と戦いながらも、配偶者を失った親は家の外で働き、帰宅してからは家事をこなさなければならない。自分の時間、労力の使い方を切り替える必要に迫られる。
「誰か男性が近くにいてくれれば、と思うこともあります」とアマさんは言う。「たとえば、車が変な音を出すのに原因が分からない時。どうしたらいいのか分からないです」 アマさんは、ルワンダで車を持っていた。ケニア国境もその車で越えてきた。
同じくビジネスを成功させたアマさんの友達でスーダン人のシングル・マザーは言う。「配偶者を失ったなかで子育てをするということは、いくつものボールを操る曲芸師になるようなものです。自分の持っているボールすべてを一度に操るには、少なくとも6ヶ月が必要。でも『できた!』と思ったらすぐ、また新しいボールが現れるのです」
アマさんは、多忙な生活の中で自分のことをすっかり忘れてしまうことがあると言う。「お腹が減って初めて、ご飯のことを考えることもあります」。
夫なしの生活について、「子どもたちには、よくない影響がおのずと現れています。でも、だからって嘆いてばかりいられません。夫が亡くなり、私は子どもと取り残されましたが、子どもの将来のために戦っていかなければならないのです」。
父、もしくは母を亡くしたカクマ・キャンプの多くの子どもたちは、困難に直面する。親の突然の喪失を受け入れていかなければならないからだ。
子どもに仕事を手伝わせてはどうだろうか。確かにその必要はあるだろうが、親は常に子どもにとって一番よいことをするべきだとアマさんは言う。「子どもを働かせすぎないようにしなくては。でも、たとえば食器の片付けとか、子ども部屋の掃除とか、小さいことを頼むことはできますね」。
「配偶者を失った中での子育てでは、家庭での自分の役割を認識して、そこに喜びを得るのが大切。これは、子どもの幸せにもつながることです。これだけは言えますね」。
ビジネスで成功した女性たちを訪ねて、何度もナイロビまで足を運んだアマさん。「何をするにも、私は必ずプロの人や専門家に相談してから決めるんです」。
知識のある友人や本、専門家などに意見を求めることにより、アマさんはどんなシングル・マザーでもビジネスを成功させることができると言う。ほかの女性たちもそれぞれやるべき課題を見つけて、自己実現してほしいと願っている。
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