Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2018年2月号 トランプ政権が難民に与える悪影響

2018年05月13日 | オピニオン
執筆:カバタ・ボル

トランプ政権が難民への取り締まりを強化したことによって、難民キャンプにいる人々の間にはストレスとトラウマが広がっている。

トランプ大統領の難民への否定的な姿勢は、難民の自由と安全、社会的つながりに大打撃を与えている。これは移民社会全体への打撃でもある。

カクマ難民キャンプでは、何千人もの難民が再定住のために渡米する予定だったが、突然中止になった。2017年を境に、再定住予定だった難民の夢はもろくも崩れ、恐怖と困惑にさいなまれている。ナイロビの第三国定住支援組織によれば、2017年1月から8月までの間に、8カ国3000人の難民が渡米を拒否された。

実際、移動の禁止は人口統計にも影響を与えている。底辺で生きる人々の基本的人権への認識や保護が置き去りにされ、欧米の白人の特権がますます優先される危険がある。最も脆弱な人々が押しのけられ、難民の生命は米国に住む人々の生命よりも価値が低いと言わんばかりだ。米国は、移動禁止措置の第5項により、難民申請を120日間中止した。米国への入国を許可される人数も、以前の11万人からわずか5万人に、さらに4万5千人に引き下げられている。

トランプによる入国禁止令と、その命令を阻止しようという訴訟や闘争は、大きな課題をつきつけ、トランプ政権はアメリカの歴史を根底から変革させている。10月、連邦裁判官とハワイ司法長官は、チャド、リビア、ソマリア、イラン、イエメン、シリア、北朝鮮、ベネズエラ政府関係者およびその家族の入国を禁止する命令に反対を表明した。トランプ大統領は米国からイスラム教徒を排除するという公約を掲げてきたが、その結果、西欧社会に難民を排斥する強い風潮を巻き起こした。今こそ、全世界が、難民の危機に対する人道支援の任を負うべきである。

カクマをはじめとするアフリカの難民キャンプでは、通常でも複雑な再定住の審査に、さらに時間がかかっている。第三国定住申請を外国大使館に出しても、なお3〜5年間、さらに審査や人物調査のために待機しなければならない。難民は個人または家族で15〜20年という歳月を孤立したキャンプで過ごしてきたが、この期に及んでさらに待たなければならなくなった。

難民の数は、世界に6500万人以上といわれている。ケニアのカクマ難民キャンプには、少なくとも16万人の難民がいて、その多くが、米国への入国禁止対象国であるスーダンとソマリアの出身者だ。トランプ政権の新しい命令以降、再定住するために渡米する人数は、週1800人からわずか2人に減少した。


【写真】カクマとナイロビ間を運行する人道支援機。カバタ・ボル撮影

母国の内戦、飢饉、迫害から逃れカクマにたどり着いた人々を待ち受けるのは、人口急増で資金的制約に苦しむ支援団体からの援助しかない。トランプ政権が国連などの人道機関への資金援助を削減したことと、他の地域の政情不安により人道支援団体への依存度がより高くなっていることで、難民キャンプでは食糧配給が削減されている。世界食糧計画(WFP)すら、毎日の配分量として推奨されている量を半減させた。厳しい飢饉にさらされているソマリア、南スーダン、エチオピア、イエメン、ナイジェリアは、今後もこの資金削減の影響を大きく受けていくだろう。

トランプ政権はまた、気候変動に対し独自のスタンスを取り、多くの人が飢餓を経験できるよう尽力しているようだ。厳しい気候条件を生み出せば、環境難民を効果的に増やすことができる。

フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は、米国は「難民保護の黄金基準」を代表する国であり、すべての国の模範であると述べた。トランプ政権は、世界のリーダーたちが手を結んで後退ではなく前進すべきときに、こうした輝かしい地位を台無しにする危険を冒している。

しかしながら、難民に対して口をつぐんでいるばかりではなく、もっと言うべきことがあるように思う。「国際社会」は、難民の人権や安全保障、自由を保障するよりも、西洋人の特権の保護に努力を傾けているではないか、と。

移民を減らすことは、トランプ氏が大統領選で掲げた公約の一つだが、2018年に米国に再定住できる難民の人数はいまだに明らかになっていない。


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