数カ月ぶりのブログ更新です。
X(Twitter)でお伝えしていた息子の高校受験についての詳細について述べていきます。
3歳でDQ50台,会話ができなかった息子。
小学校と中学校と特別支援級に在籍したまま学力試験(5教科)で高校受験に挑み,
結果,偏差値60前後の理系の学科に合格しました。
はじめに述べておくと,私も夫も偏差値の高い学校に行かせたいと思っていたわけではありません。
本人に至っては受験勉強が本格化する中3二学期くらいまで,偏差値を気にしていないどころかその言葉の意味すらわかっていませんでした。
ただ,本人が行きたい!と思った学校に入るのに要求される学力が高かったために,猛勉強をしたのです。
だから,難しい受験にチャレンジすることを決めさせ,結果的に息子を成長させたという意味で,学校選びはとても重要だったと思います。
支援級からの高校受験について全部書くとかなり長くなるので,今回は最初の課題:学校探し,について書いていきます。
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息子の進学先を真剣に探し始めたのは中2の夏です。
それまで私は中学卒業後の進路として通信制高校を考えていて,本人もそのつもりでいました。
それがマイペースな息子にはあっていると,みんなが思っていました。
ところが中学生になって息子にさまざまな変化が表れ始めました。
周りが見えるようになり,いろんな気遣いができるようになったほか,コミュニケーション能力が格段に上がったのです。
その変わりっぷりは,息子の幼馴染が「昔は一人でゲームばっかりして全然喋らなかったのに,久しぶりに会ったらよく喋るやつになっちゃって」と驚くほどでした。
そんな息子を見て私は,このまま通信制高校だけを考えていていいのだろうかと疑問を持ち始めました。
息子には理系の私から見て,理系専門職が向いていると思える特性があります。
集中力,観察力,自然のシステムについて体系的な仮説を立てたがるなどなど。
特に体系化志向は理系の職業では重要な能力で,自閉症をもたらす遺伝子と一緒に受け継がれている可能性がケンブリッジ大学の研究者から提唱されており*,息子にもぴったり当てはまります。
だからいずれは大学もしくは大学院で専門的なことを学び,そこで技術と社会性を身につけて自立していけたら……と私は考えていました。
通信制高校は,自宅で自分のペースで勉強しながら高卒の資格をとり,次の進路に備えられるという点で理想的でした。
しかし,コミュニケーション能力が上がった今,同年代の仲間と切磋琢磨しながら上を目指せる環境の方がより成長できるのではないか,そんな可能性が浮かんできたのです。
ではそんな息子にあった学校をどうやって見つけたらいいのでしょうか?
大学進学を希望しているからといって,進学校は息子には向かない気がしました。
偏差値の高い大学に行くことがいいことで,模擬テストでの成績がいい人が評価される学校は,それにかなった人やその目標に共感できる人はいいのですが,成績がとれない,そこに価値を感じられない人間にとっては窮屈な場所です。
大学受験のためだけに息子が3年間通いたいと思えるかどうか疑問でした。
そこで,大学進学者がある程度いつつ,理系の専門的なことを学べる学校を探すことにしました。
そういうタイプの学校は日本全国で見れば数はあるものの,家の近くにはありません。
そこで親戚や友人のつてをたどり,時には飛行機に乗って4都道府県の学校を見て回りました。
最初に見学したのは,子育てがしやすいといって私の友人が移住した先の地域の学校です。
中2の夏休み,学校公開の日に訪れました。
独特のゆる〜い空気が流れる土地で,その学校は大学のような自由な雰囲気があり,マイペースな息子が支援級から出てもここならやっていける! そう感じられるものがありました。
さらにパソコンを使った授業が進んでいるためプリントが少ないというのも,整理整頓ができない息子にとっては魅力的でした。
ほかにもいいところはたくさんありましたが,その中でも特に印象的だったのは生徒たちです。
最上級生が自分の研究を紹介しているコーナーで,私と息子が研究内容についてあれこれ質問をしました。
「もしかして専門家の方ですか!?」と聞き返されるほど突っ込んだことも聞いたのに,その的確な受け答え方で教育レベルの高さがわかり,私は衝撃を受けました。
そんな先輩方に憧れたのでしょうか。
帰り道,息子は私にこう言いました。
「オレ,勉強してここ受けるよ」。
私は息子が自分の意思で目標を持てたことに感激し,なんとかしてその願いを実現させてあげたいと切に思いました。
支援級から受験できるのか,内申点はどうなるのか,足りない学力をどう伸ばすのか,
わからないことだらけでしたが,
なんとかする
そう覚悟を決めて対策を立てていくことにしました。
(2につづく)
*「自閉症と理系思考」,S. バロン=コーエン(英ケンブリッジ大学)著,日経サイエンス2013年3月号参照。