直也が2階で静養時に叔父が学生達の相談役になっていた事は直也は知らず、うるさい典子と2人で2階の部屋で生活をしていました。その典子の姿はまるで久美子と実家の裏庭の縁側で一緒にいるように感じる直也は忘れる事よりも受け入れる事が大切な事に気づいていきます。数々の出来事を体験する事で直也の心は変わります。その出来事に気づき始めた直也は2通の手紙の事を考えていました。叔父と叔母は春樹を事故で失った時に諦めたわけでなく交通事故の出来事がきっかけとなり今の叔父と叔母があるのです。直也は叔父と叔母の姿から気づき始めますが受け入れる事は簡単な事ではない事を知っています。生きている事の意味とは何の為に生きているのかを考えますが答えは今この時にはありませんでした。典子は自分でドリームキャッチャーを見よう見真似でたくさん作り店に置いてもらい直也の仲間達に無料でドリームキャッチャーを押し付けるように渡していきます。この夏休みに入ってドリームキャッチャーをベルトに付けるもの首からさげるもの仲間達は自由に体の一部やカバンに付けていました。この夏休みは単位がとれなければ休みでも補習授業があり学生服でラーメンを食べに来る学生もいたのです。典子はカバンや身についていれば仲間というか友達というか知り合いだという事が分かると考えていたようです。真一は相変わらず直也の代わりに叔父に言われるがままラーメンやチャーハンやギョーザ等を近くビル内の会社に出前をしています。出前をしなが真一が「えっ」と気づいた事は真一の知らない直也のもう一つの顔でした。
「からかいがいがあるんだよな素直な直ちゃんが笑うと、どうしても次の日の出前もとりたくなるんだよ君は直ちゃんの友達なの?」
出前先での直也の評判で直也が来れないのを残念がる人達もいます。高校を卒業したら配達先の会社にスカウトでもしようかという企業もあるのです。出前先で良く直也の事を言われる事があり真一は本当の直也の姿が見え隠れしていました。強い心を持っている直也の姿が浮かんでしました。真一は出前をする事で直也との関係を考えながら魅力ある直也という存在を追いかけるようになっていきます。夏休みの10日も過ぎると痛みは残りますが内出血あとも薄くなり顔の腫れもひき直也は普段どおりに動けるようになりました。叔父と叔母は直也に典子の両親へ挨拶に行くよう声をかけます。典子の看病のおかげで早く動けるようになっていたと思ったのでしょう。直也は白のジャージに着替え典子に連れられ「焼肉十重(じゅうじゅう)」という典子の両親が営む焼肉店に向かいます。焼肉店「十重」はラーメン店「どんどん屋」から歩いて30分ほどの所にありました。典子と一緒に歩いている間では久美子のようにしゃべりどおしです。そんな典子の姿をみていると過去の久美子の事が思い出され直也の心に詰まっているものを感じるようになります。店内に入ると典子の両親と2つ年上の先輩「相川篤志(あいかわあつし)」と典子の3つ年上の姉「玲子(れいこ)」がいました。まず声をかけてきたのは姉の玲子でした。
「へぇ、結構、かっこいいじゃない?典子にはもったいないねぇ」
「うるさいよーお姉ちゃん向こうに行っててよね、直也に近づかないでよね」
典子は照れくさそうな顔をしながら直也の手を引いて席につき注文をします。
「あんたが直也君かい大変だったねぇ元気になってよかったね、うちの娘は迷惑じゃなかったかい?」
典子の母は奥から出てきて直也に言います。
「助けられたのは、こっちだから、むしろ感謝しないといけないんですよ」
直也は典子の母へ言葉を返します。普段から会話があまりないのに母と会話する直也の姿をみて典子はちょっと不思議な気分になります。違う!私が知ってる直也じゃない何かが変わったような気がする春樹?でもここにいるのは直也だよねと典子は心の中で思っていました。姉の玲子は直也の隣に座り2人にちょっかいを出します。
「直也君、典子より私のほうが、あってそうな気がしない?」
「何よー、おねぇはあっちに行っててよね、二人で食事するんだから」
「いつでもいいからね、直也君、デートOKだからさ」
こんな姉と妹の会話に直也は無視し表情も変えず会話に入ることはせず厨房の中を見ると償いをする2つ年上の先輩「篤志」の姿があり仕事をする姿をみてると直也は春樹の事を思い出していました。「あの人を助けるために、命かけたんだ」と直也は心の中で思います。
典子の父親は先輩に指示を出して先輩はその指示に何も言わず従っていました。仕事で手があくと典子の父親は声をかける事なく厨房から出て直也の顔を見つめています。直也も同じように見つめます。典子の父親の眼は春樹の父親の眼力と同じように直也は感じていました。しばらく無言の状態が続きます。
「直也ごめんね、うちのお父さん、ちょっと変な人なんで」と典子は少し落ち着きのなくなった直也に言います。直也は哀れみも慰めも感じさせない典子の父や春樹の父の眼から何かを感じとっていました。「自分の人生だ、きっかけはつくるが自分の道は自分で歩け」直也は叔父の言葉を思い浮かべます。典子の父には言葉一つかけられる事なく顔を見つめられただけでしたが厨房に入ると皿を持ってすぐに出てきます「これな特別なんだが、これで力付けて、もっと元気になるようにな」典子の父親が唯一直也にかけた言葉でした。病み上がりの直也は最初は緊張もしていたが典子の両親は病み上がりの直也の身体を気づかい、さり気ない言動やしぐさで緊張もほぐれていきます。直也は店内を見回すと叔父夫婦と春樹と典子そして典子の両親が写っている写真が飾られていました。その写真を見ていると過去の事が思い浮かんでくるのです。典子には亡くなった久美子の事が重なって見えてしまう直也でした。一緒にいたいでも無理だ。直也の心に典子への思いはありましたが徐々にすれ違いの思いを持つようになっていきます。写真に写る春樹を良く見ると首にかけられたものがありました。春樹が首からさげていたのは久美子が作ったドリームキャッチャーです。久美子は姿を変えて写真に写っていると直也は思いました。中学に入る前には春樹は直也の自宅へ遊びに来た時に久美子を紹介した事があったのです。その時に久美子は春樹にもドリームキャッチャーを渡していたかもしれない。春樹の部屋には2つのドリームキャッチャーがありました。1つは手渡しで2つ目は手紙に入れて渡していたのかもしれないと直也は思います。ドリームキャッチャーを一番最後に渡されたのが直也であった事をその写真を見て感じこの地域では春樹の存在が大きかった事を直也は知ったのです。直也は春樹の残した伝説を軽視していたが地元から離れた春樹の街でも同じ事が起きていた事を感じていました。「逃れるのではなく受け入れることか」久美子が直也に何かを気づかせるように春樹の街の学校へ導いたのでしょうか。直也は自分に何ができるかを考えるようになっていきます。無鉄砲で気まま曲がった事が嫌いであった春樹は直也にとても大きな存在であったのです。春樹のようには成れないが春樹の思いを受け継ごうと直也は心の中で思うようにもなります。直也と春樹の話だけでなく春樹がいた街で喧嘩をする学生が少なくなった事も隣の街まで広がりをみせています。隣の街の学校の学生達である出来事がはじまっていました。夏休みである日の事や尊学・松校・崔校の3校の学生達が騒めきはじめます。
各高校の情報屋をする学生達だけがある出来事に巻き込まれていたのです。
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