チューリップス・シスター第16話 真理の出会い人
先入観で診療する5人の精神科医達、先入観の視点から切り離す事が出来ない強引な捜査をした刑事達と制服の警察官、父直継の自殺や母高子の失踪、差別、誹謗中傷の罪を犯した人間達に罪の償いの為、美咲にとっての「復讐」という予兆の能力とは正義だった。
美咲の復讐という能力が不完全である事に気付いていたのは、神イエスや神ゼウスと聖霊や天使の他には、教会の神父とフリーランスの精神科医コナン・グレードだけだった。
セラピストは寄り添うだけだったが美咲にとってはビショップ理解してくれる従者として気付いていたのかもしれない。
しかし、日本にはいない神父の甥は、真理の心に世界の神々のゼラトウスと神イエスから認められた能力でイメージしたものを神イエスを透し伝令を出していた。
それは、美咲の能力に真理の能力を転送するよう伝えていた、何故か、この時に止められるのは真理の中で眠っている能力だけで双子ならではの能力だけだった。
しかし、誰も美咲の能力ならでの行動を止める事なく美咲を自由にしていた、真理が自分の予兆の能力に心の中で見つめ気付き、心の中で受け止め心の扉が開けるよう導いていたのだ。
この時の真理は自分の予兆の能力を受け止めようとはしない、自分自身と叔父夫婦だけを信じて素直に正直に生きられなかった。
神父の甥は真理に美咲と同じように何度も伝令していた。
しかし、まだ日本へ帰国してはいない神父の甥は真理と美咲と会う事がなく、遠く離れた外国の地から念じて転送する事しか出来なかった。
美咲の予兆の能力の段階は、真理よりも懸け離れていたので、美咲の3つのうち1つの能力の「復讐」だけにしか真理の予兆の能力の「慈悲」しか重ね合わせる事が出来なかった。
その為、大学病院周辺で、美咲の予兆の能力で暴風雨、竜巻、雷、地震、停電、そして2人の生命を奪ってしまった。
真理と出会い人とは、世界の神々ゼラトウスによって次元の違う夢のようで奇跡のような幻想の世界での出会いから始まる。
教会の中で一番前の席の椅子に座る真理は、眼をつぶり花々の香りを感じながら、誰かの足音はゆっくりと近づいて来る。
真理は、罪があるとは思う事が出来ず、大学病院内で2人の生命を奪ってしまった事で、神イエス、聖母マリアに許しを求めている時であった。
近づいてくる足音は、真理の後ろの方の席の椅子で止まり、後ろを振り向かず声が聞こえた。
「振り向かないで、叔父の神父はもう聖人として亡くなりました、これからは私がこの教会の神父になります」
この言霊のような音声を真理は言われるままに、前を向き目の前にある十字架を見つめていた。
「あなたは、誰ですか、神父さんなのですか」と、振り向かずに真理は言った。
「さあ、どうでしょう、真理さんなら眼をつぶり神に祈る事に集中すれば見えてくるものがあると思います」と、何かを試そうとする返事があった。
真理は、教会の中に響く言霊に導かれ試そうとする声に従い真理は過去を振り返ると教会の中の光景が一変した。
教会の中一面にはチューリップが咲き乱れる、雨上がりのダブルレインボー、太陽の光を浴びてホワイトレインボー、月光を浴びてルナレインボー、3つの建物が見える、幼き子供が2人真理と美咲がいる、チューリップ畑の中で2人遊んでいる、真理と美咲は父母と遊んでいる、真理と美咲の父の自殺か事件か警察は自殺と判断、母の不審な失踪は情報がないまま捜査の中止、先入観で診療した5人の精神科医の失踪は不審な行方不明、先入観で捜査をした私服の刑事達と制服の警察官の世捨て人として犯罪者の運命と未解決事件、真理と美咲の周辺での事件は全て未解決事件、大学病院で2人の生命を奪った罪悪感、棘のある茨の道を歩く真理自身、美咲と一緒にいる誕生日のケーキとロウソク、真理と美咲が笑顔で火を吹き消す、内科医の叔父と看護師の叔母からの愛情、この順番で真理は今まで生きてきた過去を映像として見ながら思い出すと、真理の哀れみ、楽しさ、喜びの感情が動き自然と涙がこぼれた。
世界の神々ゼラトウスの能力のある声の主は、真理が生きてきた過去からの経緯を思い出させていた。
真理は青空の海原で美咲は森の中の湖で地下にある水脈で繋がり、真理の新たな部屋の左右の壁画と美咲の絵画の保管庫の天井に彫刻されているフェニックスで繋がっているが、出会い人によって真理の能力と美咲の能力は強く繋がり重なっていく。
真理の能力の平和を求めるものと美咲の能力の破滅を求めるものが、重なり合う事でフェニックスによって自由と平等と平和への能力となっていくが、過去の生い立ちが真理と美咲の能力を邪魔される様になると、魔性の邪気を祓いながら倒していくのは出会い人である事を伝えた。
次に真理に自分の過去を振り返りさせ心の中から完全に罪悪感を消し、美咲の能力が求めるものを伝え、真理自身の能力の全てを受け止めさせる様に導いていく。
美咲の予兆の能力は自然の天候を操り、美咲の復讐は美咲とっては正義である。
大学病院では、強盗殺人での前科もあり罪のある2人の生命を奪い、その先は次元の違う炎が燃え上がる世界に送った。
美咲の能力は怒り、憎悪、復讐、美咲の感情は苦しみ、悲しみ、喜びという明暗である。
美咲の明暗とは自分自身の心を開きはっきりさせる事である
真理の能力は憂い、歓喜、慈悲、真理の感情は哀れみ、楽しさ、喜びという陰陽である。
真理の陰陽は自分自身を心の中に閉じ込めてしまう事であった。
この出来事は映像化され、真理に見せていた光景である。
「これが美咲さんと真理さん貴女達の本当の過去の真実です」と、声の主は言った。
「私の生き方や感情と思いは迷い間違っていたのですか?」と、声の主に聞いた。
しかし、真理の言葉に返事はなかった。
それは、過去と現実の他には幾つもの次元の違う世界があるという真実を信じるさせる為、真理の運命が導かれている事に自ら気付かせる為に、声の主は答える事はなかった。
「真理さん、焦らずにゆっくりと考えてください、きっと気付けると思います」と、真理の脳裏をよぎり過ぎる声があった。
その声の導きで自ら真理は幻想の世界の光景を自分の心の中で再現していたようだ。
時計の秒針はゆっくりと動いていく、そして、教会の中にいる現実に見えたかの様だが、まだ次元の違う教会の中で夢か奇跡の幻想の世界にいた。
声の主は振り向くよう真理に伝えると、真理は声に従い振り向くと、そこには金の靴で金色のフードで殆ど顔が見えない全て金色の装いの姿の人物が立っていた。
「私は、美咲さんと会い伝令を話し、美咲さんの能力が動かないよう大結界をかけてきました」
「大結界とはなんですか」
「それは、8角形の仮想的な結界という空間で、美咲さんを含め9人の神のしもべによって美咲さんを守る空間です」
「美咲を守るって、美咲が含まれるのですか?」
「美咲さんは、中央にいて一時的に神のしもべとなり結界の中で今は眠りについています」
「あなたは、本当に神父なのですか?何故、全て金色なのですか?」
「今、真理さんが見ているのは次元の違う世界の私が見えているのです」
「次元の違う世界とは?」
「それは現実の世界に戻った後で話しましょう」
この会話で、止まっていた時計の針は現実に動き、現実の教会の中に戻る。
2人の運命に何かを導き働きかける新たな神父と出会う事で真理が祈りをやめ椅子に座った時だった、
隣の席にはフードつきの金色の柄のある白い装いで神父の姿の男性が座っていた。
「はじめまして真理さん」
「え?何が起きたのですか」
「真理さんと美咲さんの為に今、隣にいるんです、僕は神父ですよ」
「私が見ていたのは金だらけの姿でしたが」
「今は現実の世界です、全て金色に見えていたのは錬金術で、貧しい方々には生活の為に金を渡すのです」
「それはどういう事ですか?」
「幻想の世界を創り貧しい方々に金を渡し、その方々が現実の世界で金が与えられるという事です」
「私には良くわかりません」
「いいえ、真理さんは気付いているはずです、真理さんの持つ能力というものを」
真理は迷っていたが、神父との会話で真理は自分自身の予兆の能力を正直に話していく。
そして美咲との関わりや繋がりについても、また叔父夫婦に対しての思いも正直に話す。
「今気付いたのではなく過去から気付いていたのでしょう、罪悪感の苦しさに良く耐え乗り越えられましたね」
「はい、でも私はどうしたらいいのですか」
「能力を持っている自覚と覚悟を持って下さい、後は僕達が自然と共に導いていけるかもしれません」
真理は新たな神父との出会いによって罪悪感から解放され、以前にいた神父亡き後に甥が神父として教会を引き継いでいた。
神父の甥の彼の名前は「中村勇介」といった。
勇介は、ヨーロッパを中心に回っていたが、以前の神父から手紙と遺言の内容に従い、あとを引き継ぐ事になった。
以前に会っていた神父は体調が悪く、入院し治療を受けたが治療が及ばず他界された事を勇介は真理に伝えた。
勇介は、真理に以前いた神父の事を説明をする。
しかし、叔父の神父は病死ではあったが、真理と美咲の苦しみを最小限にするために「神」との契約をしていたことを話す事はしなかった。
「神との契約」とは出来る限り双子姉妹の苦しみを避ける為、祈りを捧げると共に神は神父の寿命を捧げる事を条件としたのだ。
神父の心の神の言霊は神イエスから神ゼウスに変わり寿命を長くし真理と美咲を守っていたが、新たな神父が日本に戻ると神との契約により神父の命は消された。
70才を過ぎていた神父は、残りの寿命を真理と美咲にかけた。
その頃の神父は、この世界ではない、別な世界で何かが起きる事を感じ取っていた。
その為に必要な能力は、真理と美咲に与えられている事を全て知っていたのだ。
そして、神父の甥がが今後の真理と美咲の運命に関わる事を感じ取っていた。
真理が、和服を着て教会に来ている姿には、勇介はふれず声をかけた。
勇介の声には特徴があり、話をする、その声には相手の心に響く、そして優しく包み込むような話し方であった。
真理は表情を変えない勇介の話しを聞いていると、心が癒される、そんな感じを受けていた。
勇介に真理は、罪の意識の話をして良いものか迷いながら立ち上がり去ろうとした時である。
「真理さんですね、僕達は美咲さんの事も知っています」と、再び勇介は真理に声をかけた。
そして、以前の神父からの遺言の話をはじめた。
「もし、双子の姉妹と出会う事があったら、苦しみから解き放ってあげて欲しい」という事だった。
他界された神父から、真理と美咲の事を手紙で知らされていたという。
真理は話したいと思っても、いつもの自分ではない感覚があり言葉が声が発声する事ができずにいた。
椅子に座り、真理は美咲の事を考えはじめる。
勇介は、真理と少し距離をおき、ただ立たずんでいた、真理が美咲のことを考えている事を勇介は感じ取っていた。
勇介は、以前の神父やコナン・グレードと同様の能力や世界の神々ゼラトウス等の多くの能力を持っていた。
「美咲さんは元気です、貴女を見ていると美咲さんの魂を感じます、陽の光を浴びて真理さんを見てる姿を感じます」
この出会いが真理と美咲の運命を変え、これから真理と美咲のこれからの行く末を勇介は導いていく事になる。
「苦しい時には素直に苦しみなさい、苦しみの先に喜びがあるはずですよ、必ず」
勇介は、真理に声をかけた。
真理は、まるで全てを知るかのように話をする勇介が、不思議であったが真理にとっては信じられる存在である事を気付き知った。
突然、勇介は真理と美咲の過去の事を話してもらいたいと声をかけた。
真理は、話す事を躊躇(ちゅうちょ)していたが、美咲が共鳴し真理に言葉を与え話しはじめた。
「真理さんは自分の言葉で話してはいませんね、美咲さんの言葉のように感じます」
勇介は、真理と美咲が共鳴するものとは、どういう能力の持ち主かを確認していた。
そして、真理と美咲の3つの感情と3つの能力が共鳴し重なり合った時でもある。
勇介は、真理や美咲のように共鳴する事は出来ないが、敏感に何かを感じる能力を持っていた。
この日から、勇介は不自然に思える事に疑問を持ち、この世の現実だけでなく真理と美咲の観る別の世界を感じながら疑問を一つ一つ解いていく。
真理の苦しむ姿を勇介は映像化して心の中に残している。
何故かその過去が勇介には真理と美咲の今後の導き方に必要だったのかもしれない。
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