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セイネンキレジェンド15話

2024-05-27 07:50:10 | 小説セイネンキレジェンド


試合会場に入ると直也には最初に感じていたものとは違う感じがした。2回戦目から8名で控え室に戻る事はない。1回戦目は強度のの緊張がある事から控室で休憩をするが2回戦目からはリング下で自分の順番が来るまでリング上を見つめる事になる。強度の緊張は思春期の頃の選手であれば誰もが持つものだった。それを配慮したルールだった。2回戦目から試合が終わったとしても次の試合までリング下でリング上を見つめる。
「アイツら強い強いぞ」
2回戦目となると、それぞれが自分の体力を考え1回戦目とは違うと思う直也だった。そして直也は次の相手の選手を見つめていた。
「アイツ笑ってやがる」
直也は前回3位だった次の相手を見ながら思っていた。直也は次の相手の笑う姿によって再び緊張が始まった。
「直也、相手の作戦に惑わされるな」 「え?なんで?」
コーチは直也に声を掛け緊張をほぐそうとしていた。2回戦目からは誰もが緊張がほぐれる。しかし互いに戦うもの同士は相手を気にする。直也にとっては初めてのトーナメントだ自分1人で戦う事は出来なかったがコーチの声掛けで直也の緊張は消えていく。
「これが、ボクシング、相手を思い心理的な作戦もあるんだ」
コーチの声掛けは緊張をほぐすだけでなく直也に本当のボクシングを教えていた。ボクシングジムでの練習では教えられない事を試合の中で教えていくのだ。1回戦目は8組目2回戦目は4組目。 前回1位の選手は1組目という事は直也が勝ち進めば最終的に前回優勝者との戦いだ。優子は直也の隣に座り直也の横顔を見つめている。コーチは直也の肩や首をマッサージし優子の反対の隣には同じジムに通うプロテスト前の工藤康志の他の学生も座っていた。
「直也、次の試合から俺がリングサイドにつくからな」
「会長じゃないの?」
「お前が面白くなったよ」「え?」
「3ヶ月ぐらいで、お前はプロテスト受けてるみたいだ笑えるよ面白いな」
スパーリングでアッパーで倒された工藤康志からの言葉は直也を勇気づけた。
「俺、面白いって?なんだよ!」と言葉にはしないが直也は胸の内で思った。
会場の観客やサポーター、次の相手の選手はプロテスト前の彼を知っている。
「まさか、プレッシャーを?」
会長はリング上だけでなく周囲の観客や選手達を見ていた。そして直也が選手達にプレッシャーをかけるとすればプロテスト前の知られた康志をリングサイドに置く事こそ最善の作戦であったのだ。プロテスト前の彼は高校1年生で中学時代トーナメント3回の優勝した選手だった。康志は会長に自分がリングサイドにつく事を交渉していた。康志は直也の天才的なものがどういうものか知りたかったのだ。直也にとっても強い康志がリングサイドにつく事で安心感を感じていた。そろそろ4組目の試合だ。
「直也、気を付けてね」
優子が直也に声を掛けると直也は笑顔でうなずいてリング上へ向かう。


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