鑑賞するには、明の初期の歴史を少し学んだ方が
よく分かると思われる。
私はかつてチャン・ツィイーのファンで大作映画は
よく鑑賞したが、ドラマは初めてだ。
韓流ドラマもちゃんと全話鑑賞したのは
かなり以前の「チャングムの誓い」だけ。
韓流と華龍では、また異なる。
同じ華流でも、あまあまラブストーリーは敬遠。
「戦い」のあるドラマが好きなので。
(戦争賛成派では、決してない)
★「大明皇妃」は、明王朝で随一の猛将と言われた
第三代永楽帝が、実の甥である建文帝(けんぶんてい)の
正当な皇帝位を簒奪したことから始まる。
建文帝もまた、複数の伯父や叔父を取りつぶしていたのだから
身内の皇帝位争いから、ことは始まるのだ。
攻められた建文帝は僧侶に化けて逃げ延びた説があるのだから
物語は作られやすい。
★主人公の孫若微(そんじゃくび)と、妹の(萬いん=後の胡善祥)は、
政府高官だった父を持ち、両親を目の前で殺され生き別れになる。
姉の若微は父の部下に連れられて逃げ延び、十年間、
武術や学問を仲間と学ぶ。
妹のまんいんは、宮廷の高位の女官の元で体罰を受けながら育つ。
宮廷内の生活しか知らない。
この対比は、後の悲劇を生む。
★靖難の変の十年後、永楽帝の暗殺をしようとした若微たち。
しかし、失敗。捜索にやってきた
錦衣衛(きんいえい=政府の憲兵のような存在)の長に就いていた
永楽帝の孫、朱せんき(ジュ―・ヤーウェイ)と鉢合わせして知り合う。
若微に惚れた皇太孫の朱せんきにたびたび会ううち、
後に、復讐するという意志はなく、仇である皇帝家に嫁ぐことになる。
生き延びていた永楽帝の甥の、元、建文帝と永楽帝の再会時に
手紙のやり取りを取り持つ役目まで担うことになるのだが。。。
仇である永楽帝の家に嫁ぐまで心の変化が、少し描き切れていないと
感じるのは少し残念ではあるが、簒奪者の一族として、世間から
後ろ指さされていた孫の朱せんきと、暗殺者としての
後ろめたさを同じく感じていたという描写は、ワンシーン存在する。
★宮廷の宴会で仲間をかばうために、永楽帝を守って
胸に矢キズを負った惹微は、奇しくも妹のまんいんと
再会を果たすが、彼女は
皇帝家の財産を半分、奪うという復讐を考えていた。
★胡善祥(まんいん)について
孫若微そんじゃくびの実妹、胡善祥(こぜんしょう)。
皇太孫の朱せんきの妃に己が身を皇帝の次男に捧げてまでも
強く志願し、実現させる。
美しくとも魂は鬼畜そのもの。
姉との育ちの違いが招いた不幸なら哀れとしか
言いようがない。
人間のもろさ、弱さを描いている。
親友さえ野望のためなら殺害し、その報いに
腹の子を失うも、懲りずに宮廷であるまじき所業を繰り返し、
ついには愛おしい孫まで不幸のどん底に追いやることに!!
それがまた新しい不幸を招く。
しかし、彼女の強烈な悪女ぶりが際立つほどに、
主人公の孫若微(そんじゃくび)の正当な
皇太后(後に太皇太后)ぶりが輝いて見える。
残忍な妹を完璧に演じたドン・ジェジェさんにも惹かれる。
★中盤に多く描かれた草原の騎馬の戦闘シーンは、おおいに
見ごたえがあった。
何百万、何十万という兵力のぶつかり合い。
通信手段が伝令の馬しかないとはいえ、
草原の民の扮装もまじえて当時の様子を鑑賞することができた。
★ラスト感想
昨年12月半ばから観続けていた中国ドラマ
「大明皇妃」が最終回を迎えた。
全62話 ものすごく集中して視聴。
自然に惹き込まれる作品だった。
最初は字幕でさえ難しい漢語調のセリフだったのと、
登場人物の男性が、ほとんどヒゲを生やしていて
見分けが付かなかったせいで苦戦したが、
何より明王朝に興味があったのが惹かれた所以で、
主演のタン・ウェイさんの
艶やかさと武術と心の逞しさが大好きなせいもある。
★三浦春馬氏の審美眼は流石だ!!
<三浦春馬氏は13年の読売新聞のインタビュー記事で、
タン・ウェイさん出世作になった
「ラスト・コーション」をおすすめのDVDとして紹介している>
🐎この作品をぜひ、観てほしかった。
さて「大明皇妃」は、ドラマティックすぎて
圧倒されまくりの全話だった。
主要登場人物の殆どが亡くなるという悲しい結末だった。
★主人公の若微が、老いてようやく知る意味。
中国の歴史はひとつの家がひとつの地方を平定しただけ。
(皇帝は龍でも神でもありはしない)
ただ勝利して土地を手中にしただけ。
これは大正解だと思う。
当時の皇帝には理解できなかったのだろうか?
★しかし、主人公が寝床で目を閉じ字幕で
「🟠🟠、🟢🟢何年逝去。波乱の人生であった」で
終わるのではなく、明るい終わり方で慰められた。
史実との創作であれ、主人公はどんな地位に昇りつめようと、
やはり最初の設定(立場)であったと言いたげなラストに
満足している。
★★孫若微と胡善祥は実在した人物であるが、
姉妹というのは創作である。
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