今夜は「ニュルンベルクのマイスタージンガー<新制作>」初日で新国立劇場。
月曜日からバイロイトとMETの録画をみたり、演出家イェンス=ダニエル・ヘルツォークの話を読んだりして思いを巡らせていた。
初演は1868年。
いったいどんな新演出なのか。
中世ドイツ、ギルド組織、職人の世界、のドラマをどう現代ものにするのか。
ヘルツォークは劇中劇の設定を使い、劇場や芸術の陳腐化と停滞を打破しようとするザックスの闘いとして描いていき。
それら古きものと訣別し、新しい道を探そうとするヴァルターを、ザックスは助け、育て。
そしてそのヴァルターはエーファを勝ちとるのだが。
“トオキョオのマイスタージンガー”は、ヴァルターとエーファに、権威との訣別を選択させて、幕を閉じた。
ぼくは、この”どんでん返し“のフィナーレを、三幕の中頃からシュテファンと林さんの演技、表情をみながら予感しはじめていた。
だからMETのヨハンボーダーのように、わかりましたとあっさり頭を下げていたら、逆に違和感があったろう。
演出家ヘルツォークがメッセージの中で「とても特別な筋道を考えついた」と書いていたのがこれだったのだ。
日本語字幕もとてもよくて、このストーリーの理解を助けた。
今回外国人勢はぜんぶ当たり。
特にシュテファン・フィンケもアドリアン・エレートもとても良く、ザックスのトーマス・ヨハネス・マイヤーは最高に素晴らしかった。
そしてこの外国人勢とからむ林正子さんはまったく見劣りせず、素敵だった。
ダーヴィット役をもらった伊藤達人さんも見事で、コートナーの青山さんも力をみせた。
そして妻屋さん、大沼さんら日本人のスター、実力者がずらりとマイスターに名を連ねる超豪華キャスト。新国立オペラでなければ絶対にできないこと。
ぼくと同郷の山下牧子さんは1幕で歌も頑張ったし、今日も芝居はうまかった。嬉しかったし、誇らしかったよ。
大野マエストロと都響は5時間にわたってすごいワーグナーを奏でた。
バイロイトの録画をみて“とてつもないオペラ”だと思ったが。
日本が世界に誇るオペラハウスで、こんな“とてつもないオペラ”が公演されたこと、それを観れたこと、感激しています。
すべての関係者みなさんに感謝します。