「傾国のラヴァーズ」

ボディーガードの翔真は訳有の美青年社長・聖名(せな)の警護をすることに…(閲覧者様の性別不問) 更新情報はX🐦にて

◆小説「傾国のラヴァーズ」その48・聖名の携帯

2023-05-14 18:10:00 | 傾国のラヴァーズその41~50
 聖名にスポーツドリンクのボトルを渡してやると、ひと口ふた口飲んだ後、俺に返してきた。
「大丈夫か?」
「うん。おいしい…ありがとう…」

 そこで俺は気付いた。

「夜中に何かあったのか? 嫌がらせの電話とか…」
 夜中にこの部屋で起こったことは俺には分からない。
「それはないよ。でも明日は 商談 だから午前は休むことにする」
 そして 専務の高橋さんに電話すると言い出したが、サイドテーブルにあったはずの携帯がないと言う。

「枕の下にでもあるんじゃない? 寝る直前まで見てて床に落としたとか」
 俺 は しゃがみ込んでベッドの下を見てやりながら 何だか 悔しいとでも言うような気持ちがこみ上げてくるのを感じていた。

 聖名がベッドの中で電話やメールする相手って…

「あったあった」
 俺が拾い上げて渡すと 聖名が礼を言いつつも微妙な顔をしたのはなぜだったのだろう。
 そして聖名は高橋さんに電話を始めた。

 明日の商談のことを告げ、
「…海原くんが看病してくれてるから大丈夫。病院はもう少し様子を見てみる」

 しかし、 電話を切ってから、 高橋さんに勧められたということで、今日1日は 明日に備えて休むことにしたという。

「何か食べられそう?」

「…いやもう少し寝てる。ごめんね」

 何かあったら LINE でも電話でも呼んで と 俺は部屋を後にした。

 すぐに駆けつけられるように、 自室よりは近いリビングで待機していることにした。

 眠ってしまっては大変と、テレビで日本のニュース 動画を流しながら、メールチェックやパソコン作業をしていた
 
 …はずが 気づけば1時間ほど眠ってしまっていた。

 図太い俺も滞在での警護に疲れてしまっているということか。
 幸い聖名からの着信はなかったが…

 しかし、それにしても俺はどうして熱を測った方がいいと言わなかったのだろう…

 テレビの動画は昨夜のニュース番組になっていて、ゲストらしい、50代前半ぐらいに見えるなかなかのイケメンがスタジオでインタビューを受けていた。

 大河ドラマにでも出ていそうな 渋い いい男だが、意外と笑顔が優しい。
 しかしこの番組で取り上げられる政財界の実力者にしては まだまだ 器が小さいと言った感じに見えた。

 …聖名から何もいってこないので、俺は聖名の様子を見に行きたくなリ、テレビを消して立ち上がった。インタビューには興味はわいていなかった。