聖名が無表情なのが怖かった。
でも俺はどうにか、
「あ、グラノーラな。今用意するよ」
すると、聖名はわずかな笑みをたたえて、
「先輩も一緒に食べない? 朝飯まだでしょ?」
聖名の気遣いに甘えて、 俺も相伴することになった。しかし、いつもと違い 俺の横に聖名は座ったので 表情は横からしか見えない。
聖名はそのまま正面を向いたままで、
「先輩 ごめんね。とっさのことで 先輩ってわからなくて。わかってたらあんなに騒がなかったんだけど」
そして 重い口を開き始めた。
「…実は大学生の頃 襲われかけた経験があって」
予想が当たって俺は黙り込むしかなかった。
友達の知り合いの家で飲んで、酔ったみんなは潰れた聖名のことを忘れて帰ってしまい、その家の主と二人きりになったところを襲われたという。
「まあ、抵抗しきれるかなとは思ったんだけど、友達が偶然忘れ物を取りに来て、助けてくれて…」
すると聖名はうつむいて、
「だからセンパイがずっといてくれる ここ最近がすごくありがたくて…」
そう言われて俺は本当に嬉しかったが…
「でも センパイにならオレ、襲われてもいいかなぁ…」
目をそらしてではあったけど、冗談にしてくれてよかった。
「そうだな、俺が心霊に変身できるようになったらな」
「何だよそれ~」
ようやく聖名は俺の目を見て笑ってくれた。