起こさないように 小さく ドアをノックして部屋に入ると聖名はまだ寝ていた。
しかし俺の悲しい癖で、ベッドの脇にしゃがみ込んで 聖名がきちんと呼吸をしているかを確認せずにはいられなかった。
俺の親代わりの祖父は自宅で亡くなったのだが 、その第一報は、慌てふためいた祖母からの電話だった。
ーおじいちゃんが息をしていないみたいなんだよ…
あれは高校1年の夏で、試験の最終日が終わって帰宅する途中の道すがらだった。
携帯を、とり落としそうになった。
あんなにショックなことはなかった。
退院してきたばかりだったのに…
その後のことはあまり覚えていない。
しかしその後は亡き父の弟である叔父さんたちが全部取り仕切ってくれたので、何も問題はなかった。
それで俺は寝ている 身内を見かけるたびにちゃんと呼吸しているのか確認せずにはいられなくなったのだ。
もちろん 聖名はきちんと呼吸していた。
俺はほっとして…聖名のベッド脇の床に座って…そのまま聖名の背中を見たまま…ベッドにもたれかかって…
「えーっ!」
俺は 大声で叫ばれて、我に返ったと言うか…うとうとしていたのか俺。
目の前の聖名は目を大きく見開き 、怯えている。
軽蔑の色が見えて、俺は焦った。