現在COVID-19患者の診断のgold standardはRT-PCRですが、サンプル採取がうまく行かないと偽陰性になる可能性はあります。このような欠点を補うものとして抗体検査の実用化が期待されています。この論文において著者らはCOVID-19患者における抗体の変化を検討しました。
使用したのはBioscience Co.社のmagnetic chemiluminescence enzyme immunoassay (MCLIA)です(Cai et al., medRxiv https://doi.org/10.1101/2020.02.22.20026617 のものだと思います)。
(結果)COVID-19患者285名の横断調査において、ウイルス特異的IgGは発症17-19日後では100%陽性、ウイルス特異的IgMは発症20-22日後で94.1%で陽性でした。IgG, IgMとも発症後3週間上昇し、その後IgMは少し減少しました。IgM, IgGとも重症例で高タイターを示しましたが、有意に異なるのは2週後のIgGのみでした。
次にCOVID-19確定患者63例で3日ごとに縦断的に血清を採取して抗体を測定したところ、seroconversion rateはトータルで96.8%(61/63)で、2例(母娘)では入院期間を通じてIgM, IgGとも陰性でした。最初に抗体陰性であり、IgM, IgGの少なくともいずれかが陽性化した26名において、陽性化は20日以内に見られました。Seroconversionには3タイプあることも明らかになりました。すなわち①IgG とIgMが同時期(9人)②IgMがIgG より先(7人)③IgGがIgMより先(10人)です。IgG seroconversionを起こした19名では、初めにIgGが検出されてから6日でプラトーに達し、プラトーレベルには20倍程度のばらつきがありました。プラトーのIgGレベルと臨床症状との間には関係は見られませんでした。同様の傾向はIgMにも見られました。
MERSではWHOがMERS-CoV感染確定criteriaとして推奨しているのは、①seroconversionあるいは②特異的なIgG抗体の4倍上昇ですが、この基準がCOVID-19にも当てはまるかを発症1週目、その後2-3週目の2点でサンプル採取を行ったCOVID-19患者41名で検討しました。41名中はじめseronegativeだったうち51.2%(21/41)において抗体の出現が1週目に見られました。また1週目にseropositiveだった18人中8人はvirus-specific IgGが4倍になり、41人中29名(70.7%)が上記のWHO criteriaを満たしました。
次に血清学的検査がCOVID-19患者を見つけるのに有用かを検証するために、COVID-19の症状を呈するか、画像所見のある患者で少なくとも2回PCR陰性だった患者について検討したところ、52名中4人にウイルス特異的IgGかIgMが検出されました。
最後に濃厚接触者164名(うち16名はPCRでSARS-CoV-2感染が認められた)について検討を行いました。PCR陽性であった16名は全て抗体陽性、残りの148名については7名でIgG, IgMのいずれかあるいは両者が陽性でありPCR偽陰性であった可能性を示していました。
これらの結果は、MERSに対するWHO criteriaがCOVID-19患者でも適当である可能性を示しています。しかしそのためには初めの血清採取をなるべく早期に行う必要があります(7日でIgGタイターがプラトーに達してしまう患者が12.2%いたため)。
いくつかの問題はあるものの、COVID-19の血清学的検査はRT-PCRを補う検査として有用であると考えられます。ただしこの検査キットの感度、特異度に関しては述べられておらず(特異度はまあまあ良さそうですが)、PCR陰性だった患者で抗体陽性であったというデータは、治癒例を拾っている可能性があるのではないかと思います。また抗体がずっとできなかった症例があるということで、このような患者はキャリアになっている可能性があり、ウイルスの排出がどのようになっていたのか気になります。
使用したのはBioscience Co.社のmagnetic chemiluminescence enzyme immunoassay (MCLIA)です(Cai et al., medRxiv https://doi.org/10.1101/2020.02.22.20026617 のものだと思います)。
(結果)COVID-19患者285名の横断調査において、ウイルス特異的IgGは発症17-19日後では100%陽性、ウイルス特異的IgMは発症20-22日後で94.1%で陽性でした。IgG, IgMとも発症後3週間上昇し、その後IgMは少し減少しました。IgM, IgGとも重症例で高タイターを示しましたが、有意に異なるのは2週後のIgGのみでした。
次にCOVID-19確定患者63例で3日ごとに縦断的に血清を採取して抗体を測定したところ、seroconversion rateはトータルで96.8%(61/63)で、2例(母娘)では入院期間を通じてIgM, IgGとも陰性でした。最初に抗体陰性であり、IgM, IgGの少なくともいずれかが陽性化した26名において、陽性化は20日以内に見られました。Seroconversionには3タイプあることも明らかになりました。すなわち①IgG とIgMが同時期(9人)②IgMがIgG より先(7人)③IgGがIgMより先(10人)です。IgG seroconversionを起こした19名では、初めにIgGが検出されてから6日でプラトーに達し、プラトーレベルには20倍程度のばらつきがありました。プラトーのIgGレベルと臨床症状との間には関係は見られませんでした。同様の傾向はIgMにも見られました。
MERSではWHOがMERS-CoV感染確定criteriaとして推奨しているのは、①seroconversionあるいは②特異的なIgG抗体の4倍上昇ですが、この基準がCOVID-19にも当てはまるかを発症1週目、その後2-3週目の2点でサンプル採取を行ったCOVID-19患者41名で検討しました。41名中はじめseronegativeだったうち51.2%(21/41)において抗体の出現が1週目に見られました。また1週目にseropositiveだった18人中8人はvirus-specific IgGが4倍になり、41人中29名(70.7%)が上記のWHO criteriaを満たしました。
次に血清学的検査がCOVID-19患者を見つけるのに有用かを検証するために、COVID-19の症状を呈するか、画像所見のある患者で少なくとも2回PCR陰性だった患者について検討したところ、52名中4人にウイルス特異的IgGかIgMが検出されました。
最後に濃厚接触者164名(うち16名はPCRでSARS-CoV-2感染が認められた)について検討を行いました。PCR陽性であった16名は全て抗体陽性、残りの148名については7名でIgG, IgMのいずれかあるいは両者が陽性でありPCR偽陰性であった可能性を示していました。
これらの結果は、MERSに対するWHO criteriaがCOVID-19患者でも適当である可能性を示しています。しかしそのためには初めの血清採取をなるべく早期に行う必要があります(7日でIgGタイターがプラトーに達してしまう患者が12.2%いたため)。
いくつかの問題はあるものの、COVID-19の血清学的検査はRT-PCRを補う検査として有用であると考えられます。ただしこの検査キットの感度、特異度に関しては述べられておらず(特異度はまあまあ良さそうですが)、PCR陰性だった患者で抗体陽性であったというデータは、治癒例を拾っている可能性があるのではないかと思います。また抗体がずっとできなかった症例があるということで、このような患者はキャリアになっている可能性があり、ウイルスの排出がどのようになっていたのか気になります。
Long, Q., Liu, B., Deng, H. et al. Antibody responses to SARS-CoV-2 in patients with COVID-19. Nat Med (2020). https://doi.org/10.1038/s41591-020-0897-1