とはずがたり

論文の紹介や日々感じたことをつづります

COVID Human Genetic Effort

2020-05-15 00:05:57 | 新型コロナウイルス(疫学他)
新型コロナウイルスが多くの人に恐怖を植え付けている理由の一つは、それまで全く何の異常もなかった人が感染をきっかけに急速に状態が悪化し、場合によっては亡くなってしまうという事例が少なくないからです。その一方で日常的にウイルスに曝露している医療従事者の中には大したprotectionもなしに作業をしていても全く感染しない(あるいは症状を出さない)人もいます。このような事実の背景にあるメカニズムが明らかになれば何らかの治療法や予防法につながる可能性があります。Rockefeller大学のJean-Laurent CasanovaとNIAID/NIHのHelen C. Suがco-leaderになって進められているCOVID Human Genetic Effortのプロジェクトは、このような疾患感受性の違いが遺伝子レベルの差異によって生じているのではないかという発想からスタートしています。そのような例で有名なものとして、CCR5遺伝子の欠損者においてはHIV感染が生じにくいという事実があります(この遺伝子は中国の賀建奎氏がCRISPR-Cas9システムを用いてHIV抵抗性のゲノム編集ベビーを作ったことでも有名になりました)。現在Casanova氏らは「リスク因子がないのに50歳未満で重症化したCOVID-19患者」にフォーカスを絞って遺伝子の変異を同定しようとしています。まだ結果が提示できるような段階ではないようですが、今後の発展が強く望まれる分野です。 
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(20)30611-5