とはずがたり

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マウスにおける変形性膝関節症の性差には疼痛が関与している

2020-07-03 06:27:47 | 変形性関節症・軟骨
変形性膝関節症(knee osteoarthritis, KOA)には性差があり、ヒトでは女性の方が頻度が高いことがコホート研究などから明らかになっています(Yoshimura N et al., J Bone Miner Metab. 2009;27(5):620-8)。このような性差は動物にも存在するのですが、興味深いことにマウスKOAモデルではメスのほうが軽症であることが報告されています(Ma H-L et al., Osteoarthritis Cartilage. 2007 Jun;15(6):695-700 )。このような性差がなぜ生じるのかについては明らかになっておらず、単に性ホルモンの違いだけでは説明できないようです。
この論文で著者らはマウスKOAモデルを用いて、メスでは軟骨損傷が軽度であるのに対して、骨棘形成には性差がないことを明らかにしました。彼らはその原因を検討し、
①活動性には差がない ②炎症性サイトカインの発現には差がないが、軟骨修復に関与するBmpr2, Fgf2, Pmepa1などTGF-β依存的に誘導される軟骨修復遺伝子がメスのほうで高い ③メスのほうがOAは軽度であるにもかかわらず疼痛には性差がない ④疼痛に関与する遺伝子glial cell derived neurotrophic factor, neurturin, neurotrophic factors 3, 5などの誘導はメスで高い、ことを明らかにしました。この結果から疼痛関連因子、あるいは疼痛回避行動(および疼痛関連因子による軟骨修復因子の誘導?)がメスのKOAの進行に抑制的に働いている可能性があると結論しています。

IS von Loga et al., Does Pain at an Earlier Stage of Chondropathy Protect Female Mice From Structural Progression After Surgically Induced Osteoarthritis? Arthritis Rheumatol. 2020 Jun 30. doi: 10.1002/art.41421.


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