とはずがたり

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悪性腫瘍の産生するレチノイン酸が免疫療法抵抗性に関与する

2020-03-13 13:59:10 | 免疫・リウマチ
悪性腫瘍に対する免疫療法が無効な理由として、immunosuppressive tumor microenvironment(TME)(腫瘍が免疫抑制性腫瘍微小環境)の形成が知られています。固形癌に浸潤した単球は、樹状細胞(dendritic cell, DC)ではなく、immunosuppressive TAMへ分化し、immunosuppressive TMEを形成することがわかっていますが、そのメカニズムは不明でした。この論文で著者らは様々なマウス肉腫モデルを作成し、T細胞の分泌するIL-13によって腫瘍細胞が産生するレチノイン酸(retinoic acid, RA)が単球からTAMへの分化を促進することを示しました。一方でRAはDC分化に重要な転写因子Irf4の発現を抑制することも明らかになりました。腫瘍によるRA産生やTMEにおけるRA受容体シグナルを抑制することによって、抗腫瘍反応が増強されることも示されました。実際のヒト肉腫においても、RAによって誘導される遺伝子発現が強い(RAシグナルが強い)腫瘍ではTGF-βやIL-10など腫瘍に対する免疫に抑制的に作用するサイトカイン発現が亢進していました。この結果は、RAを抑制することによって、免疫療法抵抗性の腫瘍の治療効果を上げることが可能な可能性を示しています。RA自体はall trans RAがAPL(急性前骨髄球性白血病)に対する治療効果を有することからも、抗腫瘍効果を示す場合もあり、腫瘍の種類による役割の違いにも興味が持たれます。
Cell 181, 1–17, 2020
DOI:https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.02.042
Tumor-Derived Retinoic Acid Regulates Intratumoral Monocyte Differentiation to Promote Immune Suppression


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