新型コロナウイルス感染症も第5波になって様相が変わってきたようです。東京都では感染拡大に歯止めがかからず、重症患者であっても入院調整に困難をきたすケースが増加しています。感染患者が増えれば、当然比例して重症患者の数も増えるのですが、重症化には発症後1-2週を要することを考えると、今後さらに重症患者は増加することが予想されます。「重症患者用の病床(コロナ患者用のICU病床)の数を増やせばよい」という議論もありますが、これは思っているほど簡単ではありません。一人の重症コロナ患者の治療には多くの人手がかかるため、重症コロナ患者の病床を増やすためには、その3倍の通常病床を削る必要がある(通常の医療をかなり制限する必要がある)、ウイルスの感染力が高いため、多くの場合個室管理が必要(個室の数によって入院患者は制約される)、特にネイザルハイフローと呼ばれる酸素療法を行うためには陰圧個室が必要で、そのような病室はさらに限られる、などの理由から、やみくもに病床増加を進める訳にはいきません。したがって、限りある重症病床をいかに効率的に使うかが重要になります。東京都では重症患者用病床を有する病院に、毎日空床数を報告させていますが、院内患者の重症化や、直接の転院依頼への対応など、各病院の事情によって空床数は一日のうちでも大きく変動するため、機械的な患者と病床のマッチングは困難です。もし入院が必要な重症患者についての情報を一か所に集約するとともに、各病院の空床数や病院の内部事情をリアルタイムでモニターできる有能な人員(できれば医師か看護師)を配置して、都全体の重症病床をコントロールすることができれば、効率よい病床運用が可能になるのではないか、と思います。とはいえ病床数が限られていることに変わりはないので、やはりいかにして感染患者を減らすか、感染患者の重症化を防ぐかがポイントです。前者のためには、ありきたりですがワクチン接種の促進と、人と人との接触抑制が必要です。一方後者のためには、最近使用可能になった抗体カクテル製剤(ロナプリーブ)の使用も有用ではないかと思います。多くの方の知恵と協力で、現在の危機的状況を乗り切りたいものです。
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