goo blog サービス終了のお知らせ 

とはずがたり

論文の紹介や日々感じたことをつづります

Pax3のポリアデニル化が筋幹細胞の分化に重要

2020-03-13 17:28:41 | 骨代謝・骨粗鬆症
組織に存在する幹細胞は組織・臓器の恒常性維持のために重要な役割を果たしています。筋に存在する幹細胞(muscle stem cells, MuSCs)の恒常性はホメオボックス転写因子PAX3, 7によって制御されることが知られていますが、PAX7がすべての成体マウスMuSCで発現しているのに対し、PAX3は横隔膜など特定の骨格筋でのみ発現しています。以前著者らはMuSCにおけるPAX3タンパクの発現がmicro RNA 206(miR206)によって抑制されることを報告していますが(S. C. Boutet et al., Cell Stem Cell 10, 327–336, 2012)、本論文において彼らはPax3の発現がmiR206により翻訳レベルで制御されること、その制御はPax mRNA isoformの長さによって異なることを明らかにしました。mRNAの長さは3’ untranslated region (UTR)へのpolyadenosine tailの付加(polyadenylation)によって制御されます。Pax3の場合、遠位のpolyadenylation siteを用いると長いmRNAが、近位のsiteを用いると短いmRNAが産生され、short Pax3 mRNAはmiR206の標的配列を持ちません。後肢MuSC(長いPax3 mRNAを発現する)と横隔膜MuSC(短いPax3 mRNAを発現する)を比較することで、著者らはU1 small nuclear RNA (snRNA)の発現が前者で高く、long Pax3 mRNAの産生を促進することを示しました。つまりU1 snRNA→long Pax3 mRNAの産生→miR206によってPax3翻訳が抑制→Pax3タンパク低下、という一連のpathwayがMuSCの静止相⇔増殖相の移行を、それぞれの筋特異的に制御するという訳です。本研究はpolyadenylationによって幹細胞の増殖や分化が制御されることを初めて示した点で大変重要な知見だと思います。 
Science. 2019 Nov 8;366(6466):734-738. doi: 10.1126/science.aax1694.
Alternative polyadenylation of Pax3 controls muscle stem cell fate and muscle function.


最新の画像もっと見る

コメントを投稿