経営コンサルタントの知見

経営に役立つ知見をgoo blogで

「私の本棚2019.4.23」

2019-05-06 19:04:49 | 経営コンサルタント

 

■         今日のおすすめ

 『組織の未来は「エンゲージメント」で決まる』(新居佳英 松林博文 著 英治出版)

 

■         日本企業の驚くべき現実!やる気のない社員が7割!(はじめに)

 私の日本企業観は、細かい処まで行き届く、品質的には世界のトップクラスを行き、日本企業(日本人)に対する、世界の信頼感は圧倒的に高いと思っていました。その考えは今も基本的には変わっていません。しかし、ここ1,2年の間に起きた、余りにも多い、しかも優良企業の、品質検査データ改ざん事件(旭化成建材、日産、スバル、神戸製鋼所、三菱マテリアル、KYB、日立化成等)を目にして、何故という疑問が答えのないまま、頭の中に残っていました。

 しかし、紹介本を読んで、最近の日本企業の現実を理解し、一つの答えが出てきたように思いました。紹介本が紹介する日本企業の現実とは、米国ギャラップ社が2017年に世界各国の企業を対象に実施した「従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査」結果に現れている事実です。日本は、「熱意溢れる社員」は6%、「やる気のない社員」は70%、「周囲に不満を撒き散らしている無気力な社員」は24%と驚く数字が出ているのです。調査対象139か国の中で132位と最下位クラスに属しているのです。

 著者は、『日本企業も高度成長期時代は、エンゲージメントは高かった。しかし、バブルが崩壊し「失われた30年」と言われる時代は、欧米の「事業」に関する指標が取り入れられ、それを基に「事業」の再構築が図られ、「事業」の指標に目が向けられる一方で、「組織」の状態を測る指標が存在しなかった。つまり経営者が「エンゲージメント」の側面を意識してこなかった結果が調査結果として現れている』と説きます。

 この結果、労働生産性(GDP/就業者数)国際比較においても、OECD32か国中22位(GDPでは18位)と、アメリカの労働生産性の6割程度に留まっている現実となっているのです。

 ここで、誤解の生じないよう、従業員満足度とモチベーションとロイヤリティーとエンゲージメントの違いに簡単に触れておきましょう。『「エンゲージメント」は、従業員相互の対等の関係に基づき、主体的・意欲的に取り組んでいる状態を言う。これに対し、従業員満足度(ES)は組織が与えるもので、ESは必ずしも業績や生産性の向上に結び付かない。モチベーションは個々人の動機付けであり、必ずしも組織としての生産性の向上とは結び付かない。ロイヤリティーは上下関係が生み出すもので、相互の対等の関係による「エンゲージメント」とは異なる。』と著者は記します。詳細は紹介本をお読みください。

 それでは、エンゲージメントが経営上どの様な成果を上げているか、次項で実例を参考に見てみたいと思います。

 

■         ポテンシャルは高い日本企業。エンゲージメント経営で変革できる。

【JAL再生成功の本質】

 著者は、日本企業と日本人のエンゲージメントのポテンシャルとても大きいとし、その象徴的事例として、JAL再生成功を挙げています。

 JALは2010年1月に会社更生法の適用を申請。申請直後の2010/3期の営業利益は▲1,337億円。2012年9月に再上場。再上場直前の2012/3期の営業利益は2,049億円の黒字。約2年余りの再生期間で、3,349億円の採算改善を成し遂げました。

 かかる奇跡的な再生は何故できたのでしょう。再生に当たり、世界中から航空会社を再生させたと称するコンサルタント会社が売り込みに来ました。しかし、最終的には、JALの再建に携わった企業再生支援機構(現地域経済活性化支援機構)委員長の瀬戸英雄弁護士(瀬戸氏自身も倒産企業の再建のベテラン弁護士として、JAL再建成功のもう一つのカギと評価されている)が、京セラの名誉会長稲盛和夫氏を再生会社JALの会長に招聘することに成功したからです。

 稲盛和夫氏は、経営について次のような公式を持っています。『人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力』。JAL再生に当たってもこの公式を全面的に導入しました(「アメーバ経営」の導入)。その中でも特に「考え方」が大切と稲盛氏は主張します。特に、JALで実現すべき経営的「考え方」は、従来の組織構造を革命的に変革し、全社員との家族のような関係の構築、経営者意識を持った人材の育成、独立採算意識を浸透させるためのアメーバ組織と収益状態を管理するツール(「京セラ会計」)の導入、アメーバ組織間の利害対立の解消、全社員の会社経営への参画であると主張します。

 この様な思考を背景に、「考え方」を具現化したもの(手帳)が「JALフィロソフィー」です。JALフィロソフィーは、経営理念を指針化したもので40項目に亘ります。JALフィロソフィーは、社員メンバーを集め、自ら作り上げたのです。しかも、JALフィロソフィーの基本となる経営理念は、『≪全社員の物心両面の幸福を追求し、≫≪お客様に最高のサービスを提供します。≫≪企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。≫』でした。「公的支援を受けた企業」の経営理念には相応しくないと批判を浴びながら、あえて導入したのは、社員一人一人の幸福なしに、何事も進まないことを、稲盛氏はよく理解していたからでした。

 JALの再生成功を振り返ってみて、正にそれは『「エンゲージメント」経営』であると理解できるのではないでしょうか。米ギャラクシーの「従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査」で最下位クラスの日本でも、立派に出来ることの証ではないでしょうか。

【外国企業は先を走っている】

 ここ数年前から、グーグルは新しい幹部役員として「CHO(Chief Happiness Officer」という役職を置いています。又マイクロソフトでは、2014年にCEOに就任したサティア・ナダラ氏は「コンパッション(思いやり)」や「エンパシー(共感)」を重視した経営を行うと公言し、「私たちは、満たされていない、明確にされていない顧客ニーズを展開している。深い共感力、つまり他者の視点を持つ力なしには、この目的を果たし続けることはできない」と語り自らを「CHO」と称しています。両社ともニューヨーク株式市場の時価総額のトップクラスを競う企業に成長しているのです。

【日本の企業も『「エンゲージメント」経営』を導入し始めている】

 日本企業でも、大企業から中小企業に至るまで、著者の会社が売出す「WEVOX」(「エンゲージメント」の見える化のSaaS)を利用している会社が、リリース1年半で約500社に上ると著者は言います。紹介本にも幾つかの導入成功事例が紹介されていますが、これからの時代、「エンゲージメント」経営が注目されるのではと思います。

 

■         成長企業が新たな経営手法「エンゲージメント経営」を導入(むすび)

 前項で記しましたように、「エンゲージメント経営」が、世界では既述2社の他、アップルやディズニーなど多くの企業で導入されています。日本でも既述の如く多くの企業がトライをしています。

 これからの時代、「共創」「共感」「協働」「生産性の向上」「品質の向上」等、人・組織の行動を重視し持続的成長を目指す企業において、「エンゲージメント経営」が注目されて来るのではないでしょうか。

 

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。 

https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

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「私の本棚2019.3.26」

2019-05-06 18:47:02 | 経営コンサルタント

 

■         今日のおすすめ

 『2019~世界と日本経済の真実「米中貿易戦争で日本は果実を得る」』(高橋洋一著 悟空出版)

 

■         日本を取巻く世界の政治・経済情勢のメタを知ろう(はじめに)

 著者の高橋洋一氏は、自らを「数量政策学者」と称しています。著者は「2019~世界と日本経済の真実」を、数量的分析と著者の経歴で積み上げた人脈からの情報により、他の著書では得られない、メタ情報として紹介本を通して発信しています。紹介本により、私達が持っている常識的な情報が、より深い新たな発見として見出す事が出来たり、全く違った認識に変えられたり等、新たな知見を与えてくれます。

 紹介本には、アメリカ、EU・イギリス・ロシア、中国・北朝鮮・韓国、日本について貴重な知見、しかも、それは著者独自のデータに基づいた知見をベースとした「世界と日本の真実」が書かれています。紹介本を読むことで“エッ!そうなのか”と新たな気付きを見出すことができます。

 紹介本の中で語られている“真実”のいくつかを次項でご紹介しましょう。

 

■         これだけは知っておきたい「2019~世界と日本経済の真実」

【紹介本の題名「米中貿易戦争で日本は果実を得る」とは何?】

 アルゼンチンで行われたG20財務相・中央銀行総裁会議で議論するための参考資料として、2018年7月にIMFから発表された「The Global Impact of Escalating Trade」をもとに、著者は、米中貿易戦争の日米経済への影響を試算しています。それは、「①鉄鋼、アルミへの関税及び2018年6月と7月に実行された対中輸入関税と中国による同額の報復関税による影響」「②2018年9月に追加された対中輸入関税2,000憶ドル(10%)と中国による同規模の報復関税による影響」「③自動車輸入関税:米国が全自動車輸入にかける追加関税(25%)と、各国の報復措置による影響」の3つの点に於いて1~5年後の日米両国のGDPへの影響比率を試算・算出しています。

 この試算は、米国が全ての項目において、GDPの減少の影響を受けるのに対し、日本は、③の自動車関税により、若干(最初の2年間は若干のプラス。5年後にマイナス0.1%程度のGDPの減少。)のマイナス影響があるものの、①②の項目ではGDPの若干の増加(プラス1.5%程度からプラス0.25%程度)と示しています。

 一方、自動車については、日本はアメリカに174万台(約360億ドル)を輸出する一方で、アメリカ国内で377万台(アメリカからの輸出・国内販売を含め757億ドル)を生産し、150万人の雇用を生み出していると著者は指摘します。

 この様な観点から、著者は、米中貿易戦争に関しては、『日本は「高みの見物」でいい』と主張するのです。

【米中貿易戦争の根底にあるもの(中国の主張する「自由で公平な貿易、公正な国際秩序の継続」の矛盾)】

 昨年の12月のアルゼンチンで行われたG20の最中に行われた米中首脳会談では、米中貿易戦争の90日間の休戦とその間の交渉で合意した。しかし、米中貿易戦争の根底にあるものは、「資本の自由化」「公正な知的財産の保護」「公正な競争」です。

 著者は、その点について、『中国は一党独裁の社会主義国であり、自らが主張する「自由で公平な貿易、公正な国際秩序の継続」は、中国国内での「資本の自由化」「情報の自由化」引いては「司法の民主化」を求められる。しかし中国が一党独裁を続ける限りそれはできない。中国の主張(「自由で公平な貿易、公正な国際秩序の継続」)は口先だけである。米中貿易戦争の長期化は避けられない。』と言います。

 90日間の休戦の期限(2019年2月)の翌月に、中国では全人代(中国全国人民代表大会)が開かれます。その時までに中国の政治情勢がどの様になっているかによって、米中貿易戦争の方向性が見えて来るのではないでしょうか。

【日本財政が破綻しないワケ】

 著者は、この点について同様の主張(「日本の財政は破綻しない」)を、その他の著書でも、繰り返しています。著者の主張は、会計論的に見れば当たり前の主張です。具体的には、「国の連結貸借対照表(日銀を連結。2017年度。)において、純債務は100兆円以下になる。加えて、国の徴税収入50兆円は、一つの資産であり、将来的には資産価値が増加し600兆円以上(根拠は書かれていないが、将来のインフレ率等を勘案か)となり、日本国の財政は破綻しない」と主張します。

 【中国に飲み込まれる韓国】

 「韓国の対中国輸出は2003年には、アメリカを上回り最大の輸出国になった。2017年には対中国輸出が1244億ドルと、韓国全体の輸出額の25%(韓国GDPの11%)を占め、更には、対中輸入額870億ドルを差し引いた対中貿易黒字は374億ドルとなっている。米中貿易戦争の影響で中国の景気が悪化すれば、韓国経済にとっては大きなダメージになる」と著者は言います。また政治的にも、『2017年5月に就任した文大統領も同年10月に訪中し「アメリカ主導のミサイル防衛システムには参加しない。日米韓の安保協力を軍事同盟に発展させない。THAADを追加配備しない」と合意した。文大統領が北朝鮮の金委員長との米朝会談に貢献したことは事実だが、その背景には常に中国と連絡を取り合っており、中国の意向を受けていることは間違いないだろう』と著者は付け加えています。

 この様な事実から、韓国も北朝鮮も中国の傘下にあると考え、今後の朝鮮半島情勢の動向には注目する必要があると思います。朝鮮半島がアメリカの傘下になるか、中国の傘下になるか、いずれにしても、もし、実現した場合には日本に大きな影響をもたらす事になります。

【その他の注目したい真実】

 紹介本には、上述以外にも注目すべき「真実」が記述されています。

□     EUとロシアと日本の今後を読む。

□     EPA(経済連携協定)とFTA(自由貿易協定)の違い。共産党支配の中国は、資本の自由化を認めるわけにはいかず、絶対にEPAを結べない。

等です。それぞれ示唆に富んだ「真実」がデータに基づき説明されています。是非紹介本を手に取って読んで下さい。

 

■         「真実」追い求め、冷静に対応して行こう(むすび)

 2019年も世界と日本の経済・政治は一見波乱に富んだ年になりそうです。そのような環境の中で、「真実」は何かを真剣に追い求め、そして分析し、それに基づいた冷静な判断を行い、対応していくべき年と思います。

 その場その場の情報に惑わされずに、『世の中の「真実」を見る目』を常に養いつつ、その「真実」に対応する中で、経営のレベルの向上を計る年にしたいものですね。

 

【酒井 闊プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

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「私の本棚2019.2.26」

2019-05-06 18:44:45 | 経営コンサルタント

 

■         今日のおすすめ

 『日経大予測2019「これからの日本の論点」』(日本経済新聞社編 日本経済新聞出版社)

 

■         2019年の「日本の論点」に注目してみよう(はじめに)

 新しい年のスタートの時期に当たり、新年のPESTに係る本をご紹介します。

 紹介本は毎年日本経済新聞社から出版される恒例の本であり、表題の「2019『これからの日本の論点』」が出版されると、「もうそんな時期になったか」と思うと共に、新年はどんな年になるのだろうと、胸をどきどきさせながら読みます。

 2019年版は、「経済・金融のこれから」「産業・企業はこれからどうなる」「政治・国際情勢・世界経済はこれからどうなる」の3Chapter、22項目に亘って日本経済新聞の記者が書き下ろしたものです。

 日頃からPEST(政治・経済・社会情勢・技術)に関心を持ち、新聞やテレビなどから情報を取集しておられる方にとっては復習的になるかもしれませんが、改めて22のテーマについて読みますと、意外と新たなメタな情報の発見があります。

 22のテーマの中には、日頃のニュースではあまり報じられていないもの、報じられても表層的で、深く分析的に報道されていないものがあります。そのような中から「注目したい日本の論点」を、次項でご紹介します。

 

■         2019年の「日本の論点」の特徴は

【2019年は国際情勢が懸念の中心に】

 紹介本は、2018年を総括して、『トランプ大統領の「やりたい放題」の政策が現実の姿となって現れたのが、2018年という1年の特徴だった』と表現しています。更に『米前大統領のオバマ政権の時から、「もはや世界の警察官ではない」と公言し、世界のリーダー役から退く構えを示してきた経緯があったが、「世界秩序の破壊者」と称されるトランプ政権の時代になり、世界のリーダー役の不在が現実となってしまった。中国もロシアも強権国家であり、リーダーの代替にはなりえない。結局トランプ政権がもたらした国際的な混乱に世界は揺さぶられ、国際秩序は当面リーダーとなる調整役が不在のまま不安定な状況が続くとみるべきであろう』、と強調しています。

 崩れた国際秩序の中で、2019年はどんな懸念があるのでしょう。紹介本は22項目の内7項目を割いて国際情勢の懸念を予測しています。それは日本の政治・経済情勢が、国際情勢の影響を受けやすい年である事を特徴づけています。

 それでは、どんな国際情勢の懸念があるのか、重要と思われる幾つかを以下で採り上げてみましょう。

【米中貿易戦争と日本】

 米中貿易戦争は、米中が世界の政治・経済・技術での覇権争いです。米国と中国の競争状況を数字で拾ってみると、特許出願数では中国は日本を抜いて2位(1位は米国)、スーパーコンピューターの計算速度では中国は米国に次いで2位、スパコンの保有台数では中国が米国を抜いて1位、AIを手掛ける企業数では僅差で中国は米国に次いで2位となっており、米国としても中国の脅威を感じざるを得ません。

 加えて、トランプ、習近平の背景には、それぞれの国の政治情勢が深く絡んできます。習近平の権力も盤石とは言えません。北京の近くの保養地で毎年8月に開催される「北載河会議」、2018年は引退した江氏、胡氏等の長老と現指導部からは李克強など4名が出席したと報じられています。その会議で、江氏と胡氏が手を組み習近平に、外交・経済政策の見直しを求める1万字を超える意見書を提出したとの噂も出ていることから、盤石に見える習政権に何か変化が起きる可能性を否定できません。

 この様な米中の深い対立があって、日本と中国の外交的改善や協力関係の推進が持ち上がって来ていますが、米中の板挟みの中での日本の判断は悩ましいものとなりそうです。

【世界に広がる「ナショナリズム」と「ポピュリズム」】

 2018年に蒔かれた、トランプの「アメリカ・ファースト」が世界に多くの「ナショナリズム」と「ポピュリズム」の国家を生みました。「ナショナリズム」とは国家主義と訳せばいいのでしょうか。「ポピュリズム」とは大衆迎合政治と訳せばいいのでしょうか。ドイツの「ドイツのための選択肢」の躍進、オーストリアの極右・自由党政権の成立、イタリアの「五つ星運動」「同盟」の連立政権の成立、チェコ、ハンガリー、メキシコなどでの政権交代等世界は大きく変わってきています。

 今までの世界秩序を維持してきた、「普遍的・公正なルール」が通用しなくなるのではと懸念されます。G7、G20、APEC等の国際秩序を作ってきた同盟組織・機構が機能を果たせなくなる事態が起こるのではないかと懸念されます。そこから生じる地政学リスクに注意を払う必要のある年になりそうです。

【目を離せない中東情勢】

 アメリカの、核合意離脱によるイランへの制裁強化は、これからどのような影響を世界に与えていくのでしょう。まさかホルムズ海峡の封鎖には至らないでしょうが。

 あれだけ結束の固かった「湾岸協力会議」が、現在はメンバーの一員であるカタールがサウジアラビアと断交しています。ジャーナリスト、ジャマル・カジョギ氏の殺害から明らかにされつつある、サウジアラビアの非民主主義・強権国家・恐怖政治体制が中東の秩序にどのような影響を生じさせるのでしょう。中東からも目を離せません。

【まだまだ沢山ある国際情勢の懸念】

 以上述べてきた以外にも多くの、国際情勢の懸念が多くあります。字数の関係もあり、上記に留めますが、ご興味をお持ちの方は、紹介本をお読みください。

 

■         2019年は課題満積の年。PESTの動きから目を離すな(むすび)

 「日本の論点2019」から読み取れる特徴は、既述いたしました様に「国際情勢からくる懸念に基づくPESTの動きに注目」と言えるのではないでしょうか。

 経営に係る私達は、見通しと対応の難しい年にどう対処したらよいのでしょう。私見ですが、『スピーディーな「メタ(表に必ずしも現れない事態の原因となっている真の事実)」情報の収集、分析、仮説、検証、実行』をしていく事でしょうか。

 

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。 

https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

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「私の本棚2019.1.22」

2019-05-06 18:42:02 | 経営コンサルタント

 

■         今日のおすすめ

 『「7つの習慣」会社、家庭、個人、人生のすべて・・・成功には原則があった!』

(スティーブン・R・コヴィー著 ジェームス・スキナー 川西茂 訳 キング・ベアー出版)

 

■         名著「7つの習慣」との出会い(はじめに)

 明けましておめでとうございます。新しい年の準備はできましたか。私は、2019年を迎えるに当たり、毎年使っている片面1週間計画のリファイル(refill;バインダー式差し替え手帳)に加え、何か面白い年間手帳は無いかと思い探していると、「7つの習慣入門手帳2019」に出会いました。その手帳のPR文言に、『全世界1,500万人が選んだ「人生を変える手帳」』『全世界3,000万部のベストセラー「7つの習慣」を実践できる手帳』と記されていました。

 実は、「7つの習慣」の上記(今日のおすすめ)初版本(1996年)が新品のまま私の本棚に積読で置いてあるのです。“7つの習慣”なんて、松下幸之助の‟感謝があれば10ヶ条”を実践しているので、読まなくてもいいなと思い、積読にしてしまったのです。

 しかし、全世界で3,000万部も読まれている、日本でも200万部読まれているそんな名著を積読にしておいたのは、コンサルタントとして恥ずかしいと思い、読むことにしました。もう皆さんは読んでおられるので、ご紹介するのは如何かと思いましたが、もしかしたら私と同じように読んでない方がおられるかもしれないと思い、紹介本として採り上げることにしました。尚2013年に『完訳 「7つの習慣」 人格主義の回復』(フランクリン・コビー・ジャパン翻訳、キング・ベアー出版)が出版されています。内容的にはほとんど変わりませんが、より著者の意図に忠実に翻訳をしようとの意図で、若干の修正が加えられています。

 話は少し飛びますが、改訂版の翻訳者のフランクリン・コビー・ジャパンの社名は、アメリカの建国の父と言われているベンジャミン・フランクリン関連の出版を手掛ける「フランクリン・クエスト社」とコヴィー博士が率いる「コヴィーリーダーシップセンター」が1997年に合併し、「フランクリン・コビー社」となったことに由来します。

 それでは本論に戻り、企業経営に、組織運営に、チームマネジメント等人生のあらゆる場面に有益な原則「7つの習慣」を次項でご紹介します。

 

■         知って得する「7つの習慣」

【「7つの習慣」を読み終えて深く印象に残ったこと】

 紹介本を読み終えて先ず感じたのは、マネジメントに係るノウハウやツールと言った知識・経験はそれなりに積み上げて来たという自負はありましたが、しかしそれらの土台となる「自己の確立(紹介本では“自立”)」という点に目が向いていなかったことです。「自己の確立」とは普遍的・永続的な価値を持つ原則(正義、公正、誠実、正直、人間の尊厳、忍耐、犠牲、勇気、思いやり、隣人愛等)に基づいた「ミッションステートメント(目的)」を持ち、その上で「反応的(主体的の対極にあるもの。アウトサイド・インに影響を受けて行動すること。)」ではなく「主体的(インサイド・アウトに良い影響を周囲に及ぼしていく事)」に行動できるパラダイムが身に付いていることです。

 更には、「リーダーシップとマネジメント」の意味を間違えていたことです。著者はピーター・ドラッカーの「マネジメントは物事を正しく行うことであり、リーダーシップは正しい事をすることである」を引用し、『「リーダーシップ」は何を達成したいのかという問いに答えようとするもの(目標を探求すること)であり、「マネジメント」はどうすれば目標を能率よく達成できるかという手段に集中することである』と説き、「リーダーシップ」の重要性を強調します。昨年の11月に発覚した日産のゴーン会長の不正事件も、『リーダーシップ(永続的な価値を持つ原則による「自己の確立」)』のパラダイムがどこかで崩れ、「マネジメント」もそれに伴い迷走して行ったのでしょう。「7つの習慣」の大切さを、改めて痛感する事件でした。

 この他にも紹介本を読み終え、ショックを受けた事は多くあります。しかしこの強烈なショックにより、私自身の考えを改め、或いは、新しくパラダイムを作り替えることを始める事が出来たのも、この強烈なショックのおかげと思い、紹介本「7つの習慣」との出会いを感謝しています。この様に、新たな経験を変革・実践に移していく事こそ『「第7の習慣」“刃を研ぐ(再新再生;定期的に、賢明に、バランスよく磨き、そして、向上させること)”』に該当することなのだと気付いているところです。

【自己を確立する3つの習慣「主体性を発揮する」「目的をもって始める」「重要事項を優先する】

 『第一の習慣「主体性を発揮する」』『第二の習慣「目的を持って始める」』については、上述の私の“ショック”経験談から理解していただけると思います。勿論、色々な新たな発見が他にもあると思います。詳細は紹介本を手に取ってみてください。『第三の習慣「重要事項を優先する」』にも新たな発見が多くあります。私が実践を始めた事をお話ししましょう。紹介本には、「何をするにも健康が基本である」という前提で、一日30分の運動を、「重要優先事項」に入れることを勧めています。今日は時間がないから等の理由で意外と後回しにすることが多いのではないでしょうか。『1年8,765時間の内183時間を運動に投入することで、残りの8,577時間の健康が守られるのだから「重要優先事項」入れるのが合理的だ』と説くのです。これを読んだ時から、私は、1日30分のノルディック・ウォーキング実践をしています。

【人間関係の信頼とシナジーを高める3つの習慣「WinWinを考える」「理解してから理解する」「相乗効果を発揮する」】

 ここからは「相互依存関係」の習慣に入って行きます。『第4の習慣「WinWinを考える」』『第5の習慣「理解してから理解する」』『第6の習慣「相乗効果を発揮する」』の後半3つの習慣については、第4、第5の習慣を実践することで、シナジー効果が生まれてくる事は、皆様の頭にすんなりと落ちていく事でしょう。只、ここで紹介本は、生ずるシナジーの効果性は、「自己の確立」の良否によって大きく異なってくることを指摘しています。これは紹介本の重要な部分です。

【第7の習慣は、既述の6つの習慣に磨きをかける「刃を研ぐ」】

 この部分は、上述の私の“ショック”経験談から推測していただけることですので省略します。詳細は紹介本を手に取ってみてください。

 

■         新たな創造的な展開を可能にする「7つの習慣」(むすび)

 紹介本を読んで痛感したのは、経営者・経営に係る私たちの多くが学んでいることの多くは、“ツール”と言われる類なのかと思ってしまうぐらい、リーダーシップとマネジメントに於いて、人の心の内面の重要性を教えられました。

 紹介本「7つの習慣」を是非読んでください。そこには新しい発見があり、それを実践に移すことで、今まで上手くいかなかったことに、新しい道が開けてきます。又、今まで実現できなかった創造的なビジネスが生まれてきます。

 紹介本「7つの習慣」との「良い出会い」を見出す事が出来るでしょう。

 

【酒井 闊プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。 

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「私の本棚2018.12.25」

2019-05-06 18:39:32 | 経営コンサルタント

 

■         今日のおすすめ

 『「ITロードマップ2018年版」情報通信技術は5年後こう変わる!』

       (野村総合研究所 NRIセキュアテクノロジーズ著 東洋経済新聞社)

 

■         ITの動向に関心を持とう(はじめに)

 私事で恐縮ですが、最近、新聞・テレビ等を見て感じているのは、IT(情報技術)の進化に伴い、数年後には、ビジネス環境・生活環境が今より大きく変わっているのではとの思いです。過去の身近な例として、嘗ての固定電話の時代から、PHS、ガラ携帯、更にはスマートフォンへと世界的に変化していった事を挙げることができます。このような過去の変化は数え上げれば、きりが有りません。それと同じような変化がこれから起こってくるとの思いを強く持っています。

 そんな思いで、その変化を先読みし、対応していく必要が有るのではと思いの中で、紹介本に出合いました。紹介本は、2006年の初版から、毎年1冊、世界的なITの進化の状況と5年後の方向性を纏め、「ITロードマップ」として発刊しています。2019年版もあと数か月以内に発行されます(2018年版は3月22日に発行されています)。

 私はIT分野については余り得意ではありません。紹介本には専門用語が多く出てきて、読み進むには、理解できない専門用語を都度調べながらでしたので、苦労しました。しかし、そんな苦労をしながらでも、ITの進化に伴う世界的な社会の変化についての知見を持たなければ、これからの事業経営に係わっていく事は出来ない、との思いで完読しました。

紹介本を読み終えた効果もあってか、最近のITに係る新聞記事が掲載されていても

その背景を読み取ることが出来るようになりました。

 先日、「米国セールスフォースがアップルと提携」という記事が出ていました。(2018.10.4 日経朝刊。)セールスフォースは、世界で最初のエンタープライズ・チャットプラットホーム(次項で詳細を説明)「Chatter」を世に出した会社です。そこがアップルと提携する意味は、アップルの携帯端末(iOS端末)・チャット(Siri:Speech Interpretation and Recognition Interface。発話解析・認識インターフェース。)等との連携をすることで、セールスフォースのエンタープライズ・チャットプラットホーム・CRM(顧客情報管理)サービスの向上を図り、更にはセールスフォースの開発したAIアシスタンス「Salesforce Einstein」を活用した新たなサービスを提供できると考え、提携したことが理解できます。

 この様に、紹介本を読むことで、世界のIT状況が見えてきます。紹介本の内容は広く、全てをご紹介できませんが、次項で「5年後のIT関連の重要技術」をご紹介したいと思います。特に、経営に係る重要技術に重点を置いて、ご紹介します。

 

■         5年後のIT関連の重要技術

 紹介本で解説している「5年後の重要技術」は、『「人工知能(AI)」ディープラーニングによる自然言語処理の進化』『「AIアシスタントデバイス」普及が始まる音声対話型デバイスが実現する世界』『「エンタープライズ・チャットプラットホーム」ビジネスプラットフォームとしての可能性』『「VR(Virtual Reality:仮想現実)、AR(Augmented Reality:拡張現実) 』『「量子コンピューター」未知なる発見を実現する新型計算機の登場』の5つです。

 5つの分野は何らかの形で、企業経営に関係してきますが、それぞれをご説明するには字数の関係などもあり、詳細をご紹介するのは難しいので、ご興味をお持ちの方は、本書を手に取ってお読み頂ければと思います。本項では、前項でも挙げました「エンタープライズ・チャットプラットホーム」について記述してみたいと思います。

【今後の企業経営に関係の深い「エンタープライズ・チャットプラットフォーム」】

 「エンタープライズ・チャットプラットフォーム」の一番の特徴は、Eメールからチャットサービスへの変換により、社内コミュニュケーションの刷新と業務システムの向上による生産性の向上を狙っています。これが普及期に入るのは、2021年以降とされていますので、なかなかピンと来ないかもしれませんが、内容を簡単に追ってみましょう。

 Eメールによるコミュニュケーションは、個人の端末に頼る結果、情報共有が個人任せになり、加えて、共有(Cc)メールが情報の氾濫を起こし、連絡の見落としをカバーするため、貴重な時間を会議に使うことになります。これに対し、エンタープライズ・チャットプラットフォーム(社内でのEメールは廃止)の場合は、メッセージがサーバー上に集約されるため、過去のやり取りが履歴として残るほか、検索もできます。又プロジェクトメンバー間で会話するための「場」をチャットに設ければ、途中から参加したメンバーであっても必要な情報を自ら探し出すことが可能なのです。社内のコミュニュケーションにおいては、Eメールと比較して多くのメリットを有しています。

 次に、業務システムの向上による生産性の向上について見てみたいと思います。ベンダーによって、差はありますが、数年先に実現する姿を見てみたいと思います。複数の業務システムが、チャットプラットホームをユーザーインターフェースとして統合され、画面を切り替えることなくシームレスに作業できる、多くの他社のアプリケーションと連携しアプリストアから利用できる、カスタマイズは必要であるが業務プロセスの自動化が出来る、WEB会議機能は 自動録画機能・音声のテキスト化機能・議事録作成機能・ホワイトボード機能などが付いている、等々を上げる事が出来ます。まだ本格的に実用化していない(開発・改良)段階であり、今後の本格的な実用化をフォローしていく必要が有ろうかと思います。

 本格的に実用化された場合は、まずは、大企業が対象となると思いますが、費用対効果を考えた場合、中小企業でも導入できるシステムもあると思います。この点もフォローしていかねばならない大切なポイントと思います。

 十分な説明にはなりませんでしたが、大きな変化が、この先起こってくることは、ご理解いただけたのではないかと思います。

 

■         ITの進化の動向を知ろう(むすび)

 チャット(テキストチャット、ボイスチャット、ビデオチャット:SiriやCortanaやSkype等)を使っていますか。私はあまり使っていません。しかし、チャットプラットホームがユーザーインターフェースになって、エンタープライズ・チャットプラットフォームを作り上げていく世界、そんな時代が来るのです。

 ITによりビジネスの世界が大きく変わろうとしている今、時代に遅れないように、懸命にフォローして行かないといけませんね。

 

【酒井 闊プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。 

https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

http://sakai-gm.jp/index.html

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