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「私の本棚2020.2.25」

2020-02-25 09:02:58 | 経営コンサルタント
  • 今日のおすすめ

 『日経大予測2020「これからの日本の論点」』

                                                   (日本経済新聞社編 日本経済新聞出版社)

  • 2020年の「日本の論点」に注目してみよう(はじめに)

 新しい年のスタートの時期に当たり、新年のPESTに係る本をご紹介します。

 紹介本は毎年日本経済新聞社から出版される恒例の本であり、表題の「2020『これからの日本の論点』」が出版されると、「もうそんな時期になったか」と思うと共に、新年はどんな年になるのだろうと、胸をどきどきさせながら読みます。

 2020年版は、「日本経済はこれからどうなる」「日本企業はこれからどうなる」「世界はこれからどうなる」の3Chapter、22項目に亘って日本経済新聞のベテランの専門記者22人が2020年の大胆な予測を提示したものです。

 日頃からPEST(政治・経済・社会情勢・技術)に関心を持ち、新聞やテレビなどから情報を取集しておられる方にとっては復習的になるかもしれませんが、改めて22のテーマについて読みますと、意外と新たなメタな情報の発見があります。

 22のテーマの中には、日頃のニュースではあまり報じられていないもの、報じられても表層的で、深く分析的に報道されていないものがあります。そのような中から「注目したい日本の論点」を、次項でご紹介します。

  • 2020年の『注目したい「日本の論点」』

【2020年は「節目の年」】

 2020年の日本経済を展望するうえで、最大の注目イベントは東京五輪・パラリンピックであることには異論はないでしょう。問題は、五輪後の日本経済がどうなっていくかです。

 ここで想起するのは、前回1964年10月の東京五輪後日本経済はどのような道を辿ったかと言う事です。

 正に、前回の東京オリンピックは「ジャパン アズ ナンバーワン(日本経済の黄金期)」に向けてスタートを切った節目の年でした。

 しかし一方、1964年を、「国運の分岐点」(デービッド・アトキンソン 講談社+α新書)では、‟この国をおかしくした1964年問題”と題して次のように指摘しています。『1964年に日本はOECDの21番目の加盟国となり、これをきっかけに「植民地支配の恐怖」から、株式持ち合い、前年に施行された中小企業基本法による、雇用は確保されたものの、日本の生産性悪化の元凶となっている非効率中小企業の増大・保護などの「日本型資本主義」「日本的経営」を生み出した。人口増加時代はそれで良かったものの、人口減少・高齢化の時代の今こそパラダイムシフトをしていかなければ、日本の強みを生かし経済を成長させていく事は不可能である』と。

 2020年の東京五輪の今こそ、「黄金期」から転げ落ちている日本を再生しなければならない、今手を打たなければ次にチャンスはない、まさに“崖ぶち”に立たされている「節目の年」といってよいでしょう。

【お金と人手、社会保障は二つの「不足」を克服できるか】

 2017年の最新の「日本の将来推計人口」に基づき、今「人口減少・高齢化問題」の中で特に問題視されているのが「2040年問題」です。

 それは2040年に向けて社会の支え手である現役世代が急激に減少していくからです。2050年頃になると、人口は減るものの、現役世代と高齢者の比率が安定してくるのです。2040年ごろまでの大きな変化を乗り切るのかというのが当面の大きな課題です。

 一言でいえば、現実の施策は簡単ではありませんが、現役世代・社会制度が負担に耐えられる社会をどのように創り上げていくかと言う事に尽きるのです。

【令和時代に日本企業が飛躍するための条件】

  平成の30年間、人々の生活水準は落ちていないと感じる人が多いかもしれませんが、世界全体における日本経済・企業力の大きな後退を象徴的に現しているのが「時価総額ランキング」です。平成が始まった30年前はランキング上位20社のうち、14社は日本企業でした。しかし平成30年時点を見ると、上位20社には日本企業は1社も入っていないどころか、最上位のトヨタでも40位近辺なのです。

 この原因は色々あるでしょうが、紹介本が上げているのが、日本企業(職場と言う観点では官公庁も含む)の『押し付けとやらされ感による「働く人の‟熱意”の低下」』であるとします。IBMの2016年の調査によれば、日本のエンゲージメント(‟熱意”の英訳。意訳すれば「主体的・自発的・積極的な関与による生き生きとした働き方」)は世界43か国中42位なのです。

 日本企業の30年間の「負け」を繰り返さないためには、採用・雇用制度、労働市場の流動性向上などをはじめとした、会社(官公庁も含め)と働く人の関係の再構築が、日本経済と日本企業が令和の時代に飛躍するための欠かせない条件であると紹介本は断言します。

【その他の注目する「日本の論点」】

  • 「5Gは産業や社会をどう変えるか」
  • 「深まる米中覇権争い、日本が直面する3つの試練」
  • 「米中テクノ冷戦、閉じる『デジタル鉄のカーテン』」
  • 「政治クライシスの欧州はどこへ向かうのか」

といったところが私の注目点です。以上以外にも多くの注目点がありますが、字数の関係もあり、上記に留めます。ご興味をお持ちの方は、紹介本をお読みください。

  • 2020年は問題山積の年。日本と世界のPESTのから目を離すな(むすび)

 「日本の論点2020」から読み取れる特徴は、「日本も世界も課題山積の年」と言えるのではないでしょうか。

 経営に係る私達は、見通しと対応の難しい年にどう対処したらよいのでしょう。私見ですが、『スピーディーなメタ(表に必ずしも現れない事態の原因となっている真の事実)を含む情報の収集、分析、仮説、検証、課題の見極め、課題解決の実行』をしていく事でしょうか。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。 

https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

http://sakai-gm.jp/index.html

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