- 今日のおすすめ
①『驚くほど業績が上がる、中小企業のための「コンサルティング」活用術』
(山中 一裕著 幻冬舎)
②『「ISO9004:2018解説と活用ガイド」ISO9001からISO9004へそしてTQMへ』
(中條 武志 編集 日本規格協会発行)
- 『「コンサルティング」活用術』を、「経営革新」のスタート台に(はじめに)
紹介本①は『「ハンズオン型コンサルティング」(手を触れる如く「経営を身近に体感するコンサル」)』の活用による経営改善・業績向上戦略を提案する傍ら、成功事例を紹介しています。
紹介本①の指摘する経営改善のポイントは、「マーベリック(一匹狼)」の存在と、それを解消し、「Quick Win(小さな成果)」を生み出すことです。「マーベリック」は、経営者自身かもしれません。あるいは、コミュニュケーションの悪さを生み出している組織体制かもしれません。この「マーベリック」をまず解消し、業績の改善・向上へ向けて行動し、「Quick Win(小さな成果)」を生み出すことが成功への道筋と指摘します。重要な指摘と思います。詳細は紹介本①をお読みください。
こうして得たハンズオン・コンサルの成功は、経営革新に向けた第一歩です。折角ですから、この小さな成果を、更に経営革新へと発展させようではありませんか。
持続的成長を支える継続的改善の出来る経営革新を可能にするのが、「ISO9001からISO9004へそしてTQMへ」(紹介本②)です。次項でポイントをご紹介します。
- 経営革新は「ISO9001からISO9004へそしてTQMへ」で実現
【経営革新は“まず取り組むこと”が大切】
「20世紀前半において最も名高いイギリスの音楽評論家」と言われているアーネスト・ニューマン(Ernest Newman 1868-1959)の名言があります。「偉大な作曲家達は、意欲が湧いたから作曲に取り組んだのではなく、取り組んだから意欲が湧いたのだ。」
経営革新を目指そうとする時、この名言が参考になります。つまり迷い巡らすのではなく、まず何らかの経営革新の仕組みに取り組むことが重要なのです。
【取り組む仕組みは?どの仕組みが最適ですか?】
経営革新の仕組みはTQM(Total Quality Management;総合的品質経営)と呼ばれています。TQMには経営品質協議会(日本生産本部系)の日本経営品質賞(日本版マルコム・ボルトリッジ賞-MB賞-)、日本科学技術連盟(科学技術庁所管公益法人。日本のQCの元祖)の日本品質奨励賞及びデミング賞、ISO9004:2018、外国発のシックス・シグマ、バランス・スコア・カード等が有ります。
ここでは、QC系TQMの代表格である日本経営品質賞とQMS系TQMのISO9004に焦点を当て、初めて経営革新に取り組む企業に「相応しいTQMは?」について記してみたいと思います。その前に「TQMとは何か」「QC系TQMとQMS系TQMの違いは」について見てみましょう。
【「TQMとは」、「QC系TQMとQMS系TQMの違い」を歴史と手法から見る】
第一に、「TQMとは」をTQMの歴史から見てみましょう。
TQMの源流はQC(Quality Control)です。QCは製品品質の保持のための製造・検査部門における改善活動です。QCの成果を上げるために、統計手法などの「科学的アプローチ」と「全社的プロセス・アプローチ」を取り入れ、TQC(Total Quality Control;全社的品質管理)に発展・進化しました。TQMはこのTQCに「組織的・経営的アプローチ」を加えて、バリューチェーンを通して品質・価値・差別化を追求する総合的企業力向上のツールに進化したのです。
第二に、QC系TQMとQMS系TQMの「歴史・成り立ち」見てみましょう。
QC系TQMである日本経営品質賞の歴史を見てみましょう。
日本版TQCの発展形として、アメリカで提唱され、日本企業のTQCによる成功事例を基に新しい経営モデル(MB賞)として創られました。MB賞の活用により1980年代まで衰えていたアメリカ経済は華々しい復活を遂げたと言われています。このMB賞を逆輸入し、日本版MB賞として創設したのが日本経営品質賞です。
QMS系TQMのISO9004の成り立ちを見てみましょう。
TQC及びTQMを国際標準化機構(ISO)が規格化したものがQMS(Quality Management System)です。規格とは、その適用範囲や内容、基準(要求事項、推奨事項)が明確になっており、審査機関の審査によって認証が行われるものです。勿論、すべてに一律のルールを適用するのではなく、認証を取得する企業にあったシステムを構築するという自由度も併せ持っています。QMS系TQMのISO9004は、2018以前の2009までは、ISO9001(QMS系TQC;製品・品質マネジメントシステム)の成果を高めることを目的に、領域を「経営・組織品質」にまで拡大するペア規格でした。
しかし、9004:2018では、9001とのペアは無くなり、QC系TQMのツールであるセルフアセスメント(9004:2018付属書A;自己評価ツール)を取入れ、9001を視野に入れつつも、組織が自主的、自発的に高みを目指すための規格に変身したのです。(9004は推奨事項による指針であり認証規格ではありません。)
第三に、QC系TQMとQMS系TQMの「手法的違い」見てみましょう。
QC系TQMは、QMS系TQMと比較すると、一律的な基準は無く、より高い自由度を持っていますが、自由度があるがゆえに、導入時における活動のフレームワークの明確化で手探り状態になる短所があります。一方、QC系TQMの長所は受賞(認証)制度が確立されている他、競合他社の状況との比較やベンチマーク企業を参考にして更なる企業力の向上を図れる等が挙げられます。
【取組み易く成功確率の高い仕組みは「ISO9001からISO9004へそしてTQMへ」】
初めて経営革新に取り組む企業にとって、明確でMECEなフレームワーク(規格)のある仕組みが必要です。同時に、TQMの基本となるプロセス・アプローチ等の基礎的能力を獲得できる仕組が必要です。
これを可能にするのがQMS系TQMです。まず、ISO9001(品質マネジメントシステム)のフレームワーク(規格・要求事項)を活用しプロセス・アプローチ等の基礎的能力を確立します。次に、ISO9004:2018のTQMの世界標準のフレームワーク(推奨事項)を活用し、更には、自己評価ツールを活用し改善・維持向上・革新を進め、総合的企業力の向上を実現します。
以上に記したとおり、明確なフレームワークの下での確実な経営の改善・維持向上・革新を実現した上で、受賞(認証)制度があり、経営革新を加速しその効果を拡大する、QC系TQMへの挑戦がお薦めです。
- 中堅・中小企業の経営革新の取り組みは“守破離”で(むすび)
経営革新を成功させるには、国際的な基準・規格を活用し基礎を身に付け(守;9001:2015の登録・認証)、次に領域を拡大し(破;9004:2018によるTQM活動へ)、更に飛躍(離;QC系TQMの受賞獲得へ)へと挑戦しましょう。
【酒井 闊プロフィール】
10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。