大津は伊勢にいた。
天武天皇の薨御、奇跡を知ったことを大伯に伝えた。もう遠慮はなかった。薨御で斎宮の任は解かれ同母兄弟という呪縛もない。
「もう、私は我慢をしたくない。」と大津は大伯の腕をつかみ抱き合った。
大伯は戸惑いながらも大津を受け入れた。
大伯は「あなたはいつも秋に訪れてくれるの。厳しい冬に耐えられように。春、夏の季節にあなたがどんな顔をして過ごしているのか私は知らないのよ。またいなくなるのは耐えられないわ。」と大津の腕の中で聞いた。
「譲位する。もう天皇でなくなる。大伯のそばにいると決めた。大伯と過ごす時間以外もうなにも欲しくはない。」
「嬉しいわ…でもお義母さまはお困りになるのではないの。私はあなたを支えるようにとお義母さまから頼まれたのよ。」
「皇子の時も、皇太子、天皇となった私を大伯は姉として支えてくれた。幸いなことに私には子がいない。草壁が母上の希望を繋いで行ってくれる。」
「草壁皇子はそなたのような器なの。虚弱とも聞いていたわ。」
「私でも務まった。草壁には皇太后も不比等もいる。」
「不比等が…それではそなたは…」
「用済みだ。しかし用済みだからここに来たのではありませぬ。もう大伯のそばにいると決めたから。大伯もそれを望んでいてくれると…」と大津が言うと大伯は頷いた。
「大伯…どこに行きましょうか。この国にいては私の両親のように謀反を疑われるのは御免です。」
「以前そなたが教えてくれた唐より遠い国か。壮大ね。この伊勢より南には温暖な海が拡がる。まずはそこから考えるのも良いのかもしれないわね。」
「大伯の仰せのままに。」と大津が言うと大伯はクスッと笑った。
穏やかな時間が過ぎていった。大津は幸せだった。
そんな時川嶋皇子より早馬が届いた。
「皇太后がお倒れになられた。」大津は苦渋に満ちた表情で言った。
もう一つの早馬が東国に向かい走っていた。しかし途中行方不明になった。その情報を聞いた不比等は「よくやった。」と間者に言った。
天武天皇の薨御、奇跡を知ったことを大伯に伝えた。もう遠慮はなかった。薨御で斎宮の任は解かれ同母兄弟という呪縛もない。
「もう、私は我慢をしたくない。」と大津は大伯の腕をつかみ抱き合った。
大伯は戸惑いながらも大津を受け入れた。
大伯は「あなたはいつも秋に訪れてくれるの。厳しい冬に耐えられように。春、夏の季節にあなたがどんな顔をして過ごしているのか私は知らないのよ。またいなくなるのは耐えられないわ。」と大津の腕の中で聞いた。
「譲位する。もう天皇でなくなる。大伯のそばにいると決めた。大伯と過ごす時間以外もうなにも欲しくはない。」
「嬉しいわ…でもお義母さまはお困りになるのではないの。私はあなたを支えるようにとお義母さまから頼まれたのよ。」
「皇子の時も、皇太子、天皇となった私を大伯は姉として支えてくれた。幸いなことに私には子がいない。草壁が母上の希望を繋いで行ってくれる。」
「草壁皇子はそなたのような器なの。虚弱とも聞いていたわ。」
「私でも務まった。草壁には皇太后も不比等もいる。」
「不比等が…それではそなたは…」
「用済みだ。しかし用済みだからここに来たのではありませぬ。もう大伯のそばにいると決めたから。大伯もそれを望んでいてくれると…」と大津が言うと大伯は頷いた。
「大伯…どこに行きましょうか。この国にいては私の両親のように謀反を疑われるのは御免です。」
「以前そなたが教えてくれた唐より遠い国か。壮大ね。この伊勢より南には温暖な海が拡がる。まずはそこから考えるのも良いのかもしれないわね。」
「大伯の仰せのままに。」と大津が言うと大伯はクスッと笑った。
穏やかな時間が過ぎていった。大津は幸せだった。
そんな時川嶋皇子より早馬が届いた。
「皇太后がお倒れになられた。」大津は苦渋に満ちた表情で言った。
もう一つの早馬が東国に向かい走っていた。しかし途中行方不明になった。その情報を聞いた不比等は「よくやった。」と間者に言った。