徒然草庵 (別館)

人、木石にあらねば時にとりて物に感ずる事無きに非ず。
旅・舞台・ドラマ・映画・コンサート等の記録と感想がメインです。

無伴奏ソナタ 2014 三重公演 (ネタバレあり)

2014年10月05日 | 舞台


(三重県総合文化センターさん、GJ!!!)


帰省を兼ねて遠征した『無伴奏ソナタ』三重公演、無事終演しました!
今回は母も一緒に観劇です。

旅公演一本目でちょっとドキドキしながら見守ってましたが、第三楽章からラストまでじんわーり胸に湧き上がってくる感覚…シュガーの歌が黄金色の大きな翼になって観る者を包み込んでくれるような、熱く暖かい感動がありました。そう、今日は涙涙、の日ではなくて、ただただ暖かい想いでいっぱいに満たされる感覚の日でした。本当に、その日の自分によって全く違うインパクトをもたらしてくれる舞台です。出会えてよかった、観られてよかった!心からの感謝と喝采をクリスチャン(+全てのキャスト&スタッフ)に送りたいと思います!!

とにかくラストのクリスチャンを見て、文字通り心が震えました。何度も観てるはずなのに、多田さんのクリスチャンはやはり素晴らしく、こちらの心理状態によって様々に色合いを変えた豊かな感情を返してくれる「鏡のような」不思議な役の空気感。あんなにも共鳴力の強い、人の心を揺さぶる演技に「全身で浸れて」幸せでした!^^

これで私の2014『無伴奏ソナタ』は見納めです。同じキャストで再演することの奇跡がわかるだけに(この再演が初見でしたが)かけがえのない濃密な時間を舞台上と観客として「共有」できたと思いました。感謝!そして一抹の寂しさも。クリスチャン達にいつかまた舞台上で会えるのを楽しみにしています!

余談ですが、第一楽章でクリスチャンの「昨日から~~~食べてない」という台詞、東京では「昨日からガリガリ君コーンポタージュ味しか食べてない」だったのが「昨日から赤福しか食べてない」とご当地ネタになってて爆笑w名古屋は何になるんでしょうか。誰かレポートお願いします!(笑)





キャラメルボックス『無伴奏ソナタ』 三重公演


≪母の感想≫

・いい舞台だった!実は終演後、会場出てから駅に着くまで20分以上黙ってたのは、余りに感動して口を開きたくなかったから。言葉にしたら感動が泡泡と消えていきそうな気がして。久しぶりに素晴らしく美しい舞台だった。

・プロの劇団…というか舞台人が全力で演じているあの若々しさ、エネルギーがとにかく観ていて気持ち良かった。1000人近く入るホールでマイクなしであれだけ台詞声が響かせられるのも凄いと思ったし、歌も音楽も何でも器用にこなすんだなぁ、とも思った。最近はテレビ見ていても何となく雰囲気だけでドラマに出てる子が多いけど、今日みたいに基礎からちゃんと舞台の芝居をやってる!っていう役者さんのお芝居は血が騒ぐね。ナマの凄みと覚悟がこっちにも伝わってくるから。

・照明の美しさと簡素な舞台セット(母の疑問点:あのシンプルな舞台は旅公演には良さそうだなと思ってたけど、移動のトラックどのくらいの荷物になるんだろうね?)が逆に俳優女優の演技を引き立ててた。五線譜が物語の象徴的モチーフでクリスチャンの人生と周囲の全てを繋いでるイメージ。最低限のセットであれだけ想像力をかきたてる舞台は「本物」だと感じた。笑いもあり涙するシーンもあったけど、それらを超えた「本物の舞台が持つ力」が(3列目という近さもあって)ストレートに混じりけなしに伝わってきた。

・(印象に残った役者さんは)9人しかいないんだもん!全員!演じ分けの鮮やかな人が特にインパクトあった。個人的にはクリスチャン役の人(=多田さん)は、若い頃の風間杜夫を観ているようで、素晴らしかった!風間さんの若い頃の舞台は何度も観たけど、今日のクリスチャンはあれに匹敵する素晴らしい透明感と存在感で、雰囲気がよく似ていて、すごく驚いた。彼の台詞の発声や表情の変化、特に工事現場での帽子に隠されたあの表情…ゾクッとする。喉を潰されたクリスチャンの声も信じられないほど通っていて、鬼気迫る表情に思わず見入ってしまった。席が舞台から近くて細やかな演技を隅々まで観れたのはホントに良かった。台詞が所々「音楽」と「演技」を入れ替えたら、何だか演じてる役者さんの心からの叫びに聞こえるような気がしてね。クリスチャンが当たり役というのを聞いて、心底納得した。あのラストは良かったね。ただただ拍手喝采、言葉が出なかった。

・客演の文学座の人(=石橋さん)は、正統派の舞台俳優!だと感じた。上背あって立ち姿が綺麗で、嫌みがない上品さと華やかさがあって、声が良いっていう。昔よく観に行ってた文学座の芝居の匂いを思い出した。あれをちゃんと受け継いでる感じ。自分たちの世代では演劇なら文学座と文芸座、あとは歌舞伎かオペラか…民芸はもうちょっと泥臭い感じで、無名塾はもう少し後、野田さんや新感線なんかはもっとずっと後。でも、今日は彼の演技に、自分がリアルタイムで観ていた舞台の「良さ」を思い出した。クリスチャンも当たり役だと思うけど、ウォッチャーも唯一無二の配役じゃないかな?あの二人は表裏一体でしょ。片方が欠けたら成り立たないくらい濃い存在感。

・キャラクターそれぞれは俳優女優さんが一人何役なんだけど、共通して言えるのは「プロフェッショナルの本気」を感じるということ。舞台でやっていきたい、と夢を持っても現実はそんなに簡単じゃない。第一、それだけで食べていける人なんて一握りどころかひとつまみ。自分が舞台を観に行ってた時代には「映画」か「テレビ」かで「舞台」一本でやっていける人なんて、そうはいなかった。それでも自分のやりたいことを貫いて舞台に立ってる人も沢山いたけどね。今日の舞台にはそういう「演劇が好きでたまらない」という人ばかりが居た気がする。

・役者さんの声の通り具合を堪能できる舞台。前説の子達も良かったけどキャスト全員が個性的な声を持っていて、演じ分けが聞いていて楽しかった。工事現場リーダーのブライアン(=岡田さん)は女優が男役を演じてたけど、彼女が一番男前で格好良かった!グループのリーダーとは、人を活かすとは、を言葉でなく身体で演じて納得させていた。

・ポール&ドライバーの片割れ&気弱そうな作業員役の人(=畑中さん)は格好イイ、ではないけど愛嬌者で可愛いね。アナタのお気に入りだっていうのは分かるわ(笑) 外見のイメージに反して声がすごく良いから舞台役者として得してるかも。今度はあの人が主演の舞台を観てみたい気がする。

・今どき「一生懸命に」「必死に」生きるってことを真正面から語る機会が無くなってきてて残念に思ってたけど、今日会場でたくさんの高校生が観に来ているのを見て、あの時期にこういう直球勝負の舞台を観るのは素晴らしい経験になるんじゃないかと思った。客席には同年代の人もたくさんいて、年代層の厚さに驚いた。こういう劇団の作品をもっと地方で身近に触れる機会があるといいと思うよ。

・今日は至福の午後でした。ありがとう!またキャラメルボックスが名古屋近辺に来る時があったら都合つけば絶対に観に行くから、チケット取ってね♪(笑)





帰路母の語った『無伴奏ソナタ』感想や昔話をまとめていたら、やっぱり何かのDNAが受け継がれているんだろうか…と思わずにはいられませんでした。そんな母は高校時代演劇部!!(爆)私は大学で何回か舞台はやったものの余興程度で、むしろ仕事始めてからが「本気で芝居」の毎日です…(笑)良いのだか、悪いのだか。でも、人生全て一幕の舞台、とはホントによく言ったものです。



(会場配布のパンフレットにはインタビューも!重ねてGJ過ぎますw)





さて、10月第二週はいよいよ『駆け抜ける風のように』開幕です!!