徒然草庵 (別館)

人、木石にあらねば時にとりて物に感ずる事無きに非ず。
旅・舞台・ドラマ・映画・コンサート等の記録と感想がメインです。

かぐや姫の物語

2013年11月29日 | 映画
アニメは昔は好きだったが今はそうでもない。
ジブリはTVで観るものだと思っている。
映画館の音響が時々心臓に悪い。
二時間座っているのがすでに苦痛。

そんな私が「仕方ないなあ…」と1000円の日を選んで観に行ってきました。


『かぐや姫の物語』

TVCMや予告編で「これ何?!」と絵柄にびっくりしたのですが、意外にほんわかと背景にもなじんで、日本の四季や風物が淡彩で美しく描かれていました。平安時代ということでキヨモリ好きにはそれこそ屋敷の構えとか、小道具とか衣装とか、あらゆるところにツボってしまい、ひとり妙なテンションの上がりっぷりでした。 ←

絵…特に背景画は本当にきれいです。ふわりとした味わいながら、鳥、虫、けもの、草木、花…全て瑞々しい情感にあふれた自然の匂いがしました。生まれ育った土地は竹林のすぐそばでしたので、それこそ懐かしい子ども時代の原風景を見るような気もしました。

物語の本筋は非常に「竹取物語」の原作に忠実に作っていると見受けました。そう長くない、筋だけはシンプルな話なので、どう見せるのかな?と思っていたのですが、原文が頭の中にすらすらと出てくるようなレベルで「ああ、このシーン!あったあった」「このエピソードあったわ」と、懐かしく話を追っておりました。でも、結末まで全部知っているので、これをどうキャッチコピーの「姫の犯した罪と罰」につなげてくるのか、それだけは興味がありました。

「かぐや姫はハイジである」とHPにも書いてありましたが、地位・財産を得ることで変わっていく人の心や、結婚を通じて「女の幸せとは」ということも考えさせる描写は出てくるので、そんなにおとぎ話にもなるわけがなく…何というか、全てふわふわ泡々とした流れのまま、一場面、一場面は印象的なのに、全体として見ると掴みどころの無さというようなものも感じました。それにあの人外か!という走りっぷりのかぐや姫、彼女の言い分、そして自然描写を見ていると、何となく「ハイジというより『虫めづる姫君』みたいだなーw」と思ったことは否めませんでした。

◇   ◇   ◇

(主人公とその周辺)
かぐや姫 - 朝倉あき
捨丸(かぐや姫の幼馴染) - 高良健吾
翁(かぐや姫の育ての父) - 地井武男
媼(かぐや姫の育ての母) - 宮本信子
相模(かぐや姫の教育係) - 高畑淳子
女童(かぐや姫の侍女) - 田畑智子
斎部秋田(かぐや姫の名付け親) - 立川志の輔

(求婚者たち)
石作皇子 - 上川隆也
阿部右大臣 - 伊集院光
大伴大納言 - 宇崎竜童
石上中納言 - 古城環
車持皇子 - 橋爪功
御門 - 中村七之助


今回お目当てだったキャストネタではもう…笑うしかないというか、何と言いますか。顔がね…ソックリです、皆さんwww アフレコ(声後録り)ではなくプレスコ(声前録り)なので、HPにもありましたように「声に合わせてキャラクターの顔を作っていけば、声の持ち主とキャラクターが似てくるということもあるだろう」とは言うものの…それは言い訳ってものでw

橋爪さん演じる車持の皇子なんかご本人がそのまま居るようだしw
帝は…帝…出てきたとき爆笑しちゃいけない!!!とこらえるのに必死でしたよ。何なんですか、そのアゴは!!!←ミハエル・シューマッハかと思ったわ!!!(爆)七之助のアゴってあんなに長かったっけ???と記憶の画像保管庫を大急ぎでひっくりかえす始末。他の方々も、そりゃもう皆様見事に似ていらっしゃいますw

そして求婚者の中で一番人気だった石作皇子…「声が無駄にエロい」と知人が評しておりましたが、さもありなん。その無駄にエロ…いや、艶やかな声でかぐや姫を口説くんですよ。縁側に座って、結婚したいなら『御仏の石の鉢』を持ってこい、という難題をクリアするために旅に出たときの話をしながら…。

(その口説き文句/脳内記憶なので適当)
「貴女のために国中の古い寺を回り、御仏の石の鉢を探し求めました…とうとう歩き疲れて座り込んでいた時、ふと足元に咲くレンゲの花を見つけました。野に咲く花の美しさ、そう、私はその時気づいたのです。貴女の求めているのは宝物ではなくて、あなた自身を誠実に愛してくれる真心。そして私が貴女に捧げたいのは珍しい宝物などではなく、貴女を愛するこの真心、偽りのない愛だと。かぐや姫、私と結婚してください。二人で、ここではないどこかへ行きましょう。窮屈な都を捨てて、日々の営みを愛し、野に咲く花のように質素だが美しい暮らしを…さあ行きましょう。二人で、ここではないどこかへ…!」 

しかも必殺☆上川ヴォイス!

石作皇子「こーこではないーどーこーかーへとー♪」
かぐや姫 「皇子さま…GLAYがお好きだったのですね…」 (嘘

↑ あまりにインパクトがあったので(むしろGLAY的な意味で!w)久々に歌詞を紐解いてみましたが「道端に咲く花のように」とか「無邪気な季節を過ぎ」とか「子供のままでは生きてゆけないと」とかキーワード満載で吹き出しました。これって確信犯?!

…とはいえ、それまで人々が大挙して家に押しかけ、果ては偽りの宝物を持って帰り「ドヤァ」と自慢げな求婚者たちの姿を見てすっかりうんざりしていた姫、この艶やかな声が語る甘い甘~~~い言葉に少なからず心が揺らぎます。
生まれ育った山里、咲き乱れる花々、緑豊かな山…胸によぎる風景に思わず涙が浮かんでも「だってしょうがないじゃない、女の子だもん」です。

だがしかし!
こんなこと言いながら御簾にさりげな〜く?にじり寄って、問答無用でバーンと上げちゃう(まあ顔を見る=既成事実ですからねえw)ところ、やってることが顎帝と変わらんじゃないか石作皇子!!!← っていうか、親戚だよなこの二人!血は争えぬか!(ツッコミ炸裂)

そもそも宮中でかぐや姫のことを最初に持ち出したのが他でもない、石作皇子だったので「え?w」これで何とな〜〜〜く、設定と展開が読めましたw そのセリフ回しの滑らかさも 「如何に美しくとも、所詮は賎の女…」「この私が朝に夕に、心より崇め奉りまする」とか、大仰な時代がかった台詞、どんだけハマるんでしょう…とウットリ。

しかもそれだけで終わらない。彼が御簾を上げた先には…ここは一番面白かったところなので、あえて書かずにおきます。もう、もう、もう…映画館だというのに笑いを堪えるのに必死で、涙が出るほどプルプル震えてしまいました。隣がいなくて本当に良かったです。

もうこうなったら「幼少期に実の母の愛を知らずに育ち、挙句きれいな顔と艶やかな声とそれなりの地位をいいことに女性不信の漁色家になっちゃった石作皇子、っていうスピンオフを作ってくれないでしょうかジブリさん。性格正反対で超愛妻家の親友(CV:森功至さん)がいる設定でお願いします!


閑話休題。
そう思うと『龍の首の宝珠』を求めてリアルに海に出て行った宇崎竜童@大伴大納言の方がエラいでしょうか?宇崎大納言、流石もののふ…!と女童に褒められてましたが、大納言様が海で出会ったのは龍の形をした崇徳院の怨霊で、しかも頼りになるガテン系の水夫(カッコイイ!)がいてピンチを救ってくれたり、何げにフォローされてたり、それはどこのキヨモリ30話(平家納経)ですか!(爆)

なかなか求婚者さんたちの末路を見るだけでも、面白く楽しめるものがありました。もちろんそれは野次馬的な楽しみであり、渦中にいるかぐや姫はジブリヒロインにあるまじきローテンションで「ずーん」と落ち込んでいくのですが…可哀そうではあるものの、翁の主張する「この時代における女の幸せ」は、くっつく男のスペック(身分、財力、権力)次第なので、仕方ないよねえ…と見ておりました。

で、原作通り姫はちゃんと月へ帰っていきます。
その辺は「人の情愛、別れ」で素直にそのまま見たらいいのでは、と思いました。いろんな受け取り方があるでしょうが、翁役の故・地井武男さん、媼役の宮本信子さんの演技が醸し出す切ない親心、ぐっと胸を打ちます。そして忘れてはいけない!女童GJ!!!これまでもいろんなところでおいしい所を持っていく場面多数でしたが、ラストの緊迫した場面、ふと御簾の前からいなくなっているのを見て「あっ」と思ったら、まさかの行動に…!あのシーンの彼女、本当にカッコよかったです。にゃんこ顔なのに、これ以上なく強く凛々しく見えました。うわ〜ん!健気だよ女童〜!(涙)

その頃、宮中では…階に酒肴を持ち出して、帝と4人の元求婚者が一緒に夜空の満月を見守っておりました。このシーンが、何となく「あーやっぱりコイツら同じ穴の何ちゃら」と可笑しくなりました。ああなると男って本当に、愚かしくて救いようがなくて、そこがまた可愛らしいのでしょうが。彼らにとってはかぐや姫の一件は、人生のある一時期を騒がせたイベントに過ぎないのでしょうね。

かぐや姫を心から愛していたのは、おそらくは幼馴染の捨丸。でも、なかなかカッコイイ好青年なのに、既婚者子持ちの身で姫との駆け落ちをアッサリ決めてしまうのもビックリ…これはジブリ的にOKだったのだろうか…などと要らぬ心配をしてしまったのでした。


◇   ◇   ◇


最後は飽きてしまい、それでも異様に長いエンドロールを耐えて、観終わりました。


結論です。
何が姫の罪で、罰なのか、本編中にはコレと明確には出てきません(笑)。

↑ 出てたのかもしれませんが私にはわかりかねました…orz


「高貴で憂いも悲しみも何の不自由もない」月の人でありながら、
「下賤の地」地球に憧れてしまったことが罪なのか?

月を離れて地球に送られることが罰なのか?
そうは思えないので、地球から引き離される悲しみが罰なのか?


まさか観たお客様に「あとはご自由にお察しください」と来るとは…!
ホントにそれでいいんですか〜!?(冷汗)


だからといって二度目また観に行く気にはなれない私でした。
これなら、一度で十分です。 (^^;