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グリニッチセンター世界地図の勧め(2)

2023年12月12日 | 文化・文明

グリニッチセンター世界地図の勧め(2)

ペルー在勤4年目の暮れ、南米最後の正月休みを有効に利用しようと、南米最南端への旅行を思い立った。   当時既に、一般人の南極観光解禁が話題に上って居り、南極観光は無理としても、距離的に近いチリ・アルゼンチンの南端の街が観光基地になる可能性が大きいと報じられていた為、その雰囲気だけでも味わえる亦とないチャンスと考えたのである。南極も含めこの辺りの正月頃は夏の真っ盛り、日照時間が最も長く観光にはベストシーズンであることもその理由であった。   南極はオーストラリアの真下に位置するが、パースからの距離が5千キロ弱もある一方、チリのプンタアレナスからの距離は1千キロ程度で、時間・費用共にベストのアクセスである事が「観光基地最適地」と言われていた理由の一つである。

フィヨルド、氷河で有名なパタゴニアの玄関口、プンタアレナスにはチリのサンチャゴ乗り継ぎで8時間超の長旅だったような気がする。1914年のパナマ運河開通の影響を受け、大西洋・太平洋を繋ぐ要衝の街としての機能を失ってしまって,過っての活気の名残は、僅かに教会・博物館の建造物や遺跡等には残されてはいたものの、既に寂しくひっそりした小さな港町となっていた。町から一望出来るマゼラン海峡の岸辺には放置され廃船となった難破船が数多く目に付き、この海峡が如何に難所であるかを伺わせた。只滞在中は名物の強風も吹かず温暖で、海峡も想像以上に広く、マゼランが「火の土地」と名付けた対岸のフェゴ諸島も残念ながら霞んで見えなかった。

ポルトガルの貴族だったマゼランが祖国を裏切り、香料等確保の為の新航路開拓で覇を競っていた燐国スペインの王室に取り入り、そのバックアップを得て、15199月、270人の船員からなる5隻の船団を率いてスペインバルセロナを出航、3年後「J・Sエルカーノ」船長の「ビクトリア号」只一隻が、18人の乗組員を乗せアフリカ・喜望峰を経由して、かろうじて世界一周を果たしてスペインに帰還した。彼等が持ち帰った香辛料の価値は、その航海に要した費用を遥かに上回るものだったと伝えられて居る。  上記の地図はその世界一周の航路を示したものである。

マゼランの航海歴を辿ると2か月後にアフリカ・カナリア諸島、更に2か月後(12月中旬)にはリオデジャネイロ、一か月後の新年初めに、アルゼンチンのラプラタ河に入っている。マジェランは南西と言う航路方針を無視して、迷うことなく一路大西洋を南下、南米南端を目指して進んで居り、南米・南端を迂回出来さえすれば「新しい海(太平洋)」に出て、求める「香料諸島」モルッカ(インドネシア)、に到達出来ると確信していたようである。 その根拠は、既にイタリアの探検家・アメリゴ・ベスプッチが1500年頃ブラジルに到達しており、1502年1月にはポルトガルの別の探検家が同地域に到達し美港の入り口を川と誤認し「ジャネイロ(一月)のリオ(川)」=(リオ・デ・ジャネイロ)と命名したとの記録が残っている。更に1513年にはスペインのヌニェス・デ・バルボア(英雄・盗賊・冒険家・反逆者の名前を持つ)が北米・南米が陸続きの大陸である事、大陸の向こうには海がある事を突き止めて居り、それら多くの情報から大陸南端にしか迂回ルートが無いと確信していたと思われる。

船団は途中若干の寄り道をしたが、3月末にはアルゼンチン側のパタゴニアに到達、8月末まで越冬を開始したがこれが大きな失敗だった。後350キロⅯ程(1周間程度)の航行距離を南下して居れば、太平洋に抜けるマゼラン海峡の入り口に到達していたのである。本当の冬は6月以降だった。

船団はこの越冬で多くを失った。先ず船団3隻が食料節約命令に反発し反乱を起こした。このプロジェクトの推進者であるスペイン有力者は収益を独占しようと、一部がマゼランに流れるのを回避する為に艦隊幹部をスペイン人で固めて居り、彼等はポルトガル人であるマゼランを信用せず、敵意を抱いていたのである。反乱軍は鎮圧・処刑されたが、マゼランに対する憎しみを煽ることになった。

4月末、南下を開始、航路探索が始まったが、8月真冬の強風下、マジェラン海峡入り口近くで1隻が難破沈没。更に探索に出た1隻が多量の食料を積んだまま行方をくらまし、無断でスペインに帰航してしまった。10月21日マゼラン海峡を発見、3隻となった船団で1か月掛って11月末に太平洋に抜けたのである。

 

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