追憶の彼方。

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動物奇譚 (2) 酔っ払い動物達…1

2024年09月16日 | 文化・文明

動物奇譚

(2) 酔っ払い動物ー1

Drunken monkey hypothesis(酩酊猿仮説)と言うのがある。凡そ1200万年前、アフリカの木の上で果実等を主食にして暮らしていた我々の祖先に地球規模の気候変動が襲い、大地が急速に乾燥化した為、食べ物は落下した果実に頼らざるを得なくなった。落ちた果実は完熟し、糖分が⾃然発酵して、アルコー ル分を含む食料に変化してしまっていた飢えから逃れ、生きる為にはアルコールの分解遺伝子の無かった彼等は、酔っ払って木から落ちたり、肉食動物に襲われたりしながらも アルコール分のある完熟果実を食べ続けた。そんな中、或時⼀部の祖先の体内で遺伝⼦に突然変異が起き、アルコール分解遺伝⼦が偶然強⼒になって、発酵した果実を⾷べても酔っ払うことなく、栄養を得ることが出来るようになった。幸運にも「酒になった果実」を⾷べられるようになった祖先だけが⽣延び、数を増やして、「地球上最強の呑み助」となったのが私達⼈類だという説である。同じ類人猿の(ゴリラ・チンパンジー)も同様だが、類人猿でもオランウータンの系統は、不幸な事に遺伝子配列が変わる前に枝分かれしてしまっていたので、アルコール耐性が無く下戸の儘である。

所が最近、類人猿以外にとんでもない呑み助が居る事が判明した。マレーシアのジャングルで過去5500万年の間、毎夜ビアパーテイーを開催し、宴会の間決して酔っぱらう事が無いというネズミ程の小型哺乳類(ハネオツパイ)、自然発酵されたヤシの(ビール)を好む常習的な呑み助である。ブルタムというヤシの一種は、数種の酵母種の力を借りて自然発酵した花のミツを作り出す。アルコール度数は3.8%程度で一般的なビールとほぼ同じである。ブルタムは一年中花を咲かせるため、この熱帯雨林のジャングル・バーは何時でも開店していて、常連客のハネオツパイは、ここで毎夜2時間ほど過ごし、ちびちびとミツを飲み、(おつまみ・あて)の類はとらず、(花の蜜=ビール)が主食だと言う。彼等のアルコール摂取量は通常の哺乳類にとって危険レベルであることが判明しているが、人間よりも効率的にアルコールを代謝しているらしく、酔っぱらうことがない。進化により、アルコールを摂取し続けても体内に毒素がたまらないよう、分解機能が格段に発達した為ではないかとも言われている。「この生態学的関係は何千万年もの間続いてきた安定的なものだから、そこには酩酊状態など存在しないのだろう。このような小さな動物が酩酊状態になったら捕食者に襲われる危険が増すだけだ」と研究した学者が指摘している。

尤も、人間にも酒だけを主食にするという似たような人種がいる。アフリカ・エチオピア南部、標⾼約2000メートルの ⼭岳地帯に住む⺠族「デラシャ」。 彼らが飲んでいるのは「パルショータ」という伝統の「酒」である。 パルショータは、モロコシという穀物をすりつぶして、壺の中で発酵させて造られる。アルコールの度数はビール程度で彼等はこれを1⽇に5リットルも飲む。しかも、その他に⾷事は殆どとらず、この酒こそが彼等の「主⾷」、子供もアルコール度数を抑えたものを⾷事として飲んでいる。 殆ど酒しか⼝にしないのに、 皆んな逞しく、健康体、パルショータは栄養価の高い成分が含まれている事が分っている。

次にコウモリも酒に強い事が最近の研究で判明した。酒に酔っても木にぶつかったり、墜落したりせず、問題なく飛べるというのである。中南米に生息する熱帯性コウモリは、常食とする発酵した果物や果汁に含まれるアルコール分に酔っても、呂律が回ら無くなるような事は無く、生まれつき備わった“音波探知装置”を使って(しらふ)の時と同じように飛べるという。人間でいえば、法定血中アルコール濃度を超えても車の運転に支障がないようなものだ。コウモリに酒類の主成分で酒酔いを引き起こすエタノールを与え、唾液を採取して血中アルコール濃度を測定した結果、中には濃度が0.3%を上回ったものもいた。ちなみに、0.08%以上ならばアメリカの50州すべてで飲酒運転の罪に問われ水準との事。 さらに、コウモリの種類によって血中アルコール濃度が異なることもわかった。これはアルコール耐性に幅があることを示している。「奈良漬だけで酔ってしまう下戸もいれば、ボトルを2~3本飲み干しても酔った様子を見せない酒豪もいる」のと同じである。 また、人間と同様にコウモリのアルコール耐性はアルコール摂取の頻度と量に一部左右される可能性がある。 イスラエルで過去に行われた実験では、アルコールを摂取した(エジプトルーセットオオコウモリ)は南北アメリカ大陸のコウモリよりも障害物に衝突する回数が多かったという。南北アメリカ大陸のコウモリがオオコウモリ科のコウモリよりアルコールに強いのは、日頃から発酵した食物をより多く摂取している事に由来するらしい。

殆どの動物はアルコール耐性が無い。其れにも拘わらず天然のアルコールで、日常的に酔っぱらっている野生動物達が多数居る。

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