グリニッチセンター世界地図の勧め(6)最終ー1 控え書き
***日付け変更線…… スペイン出航時、5隻270人の乗組員で出発したマゼラン艦隊が3年の航海を経て世界周航を達成出来たのはエルカーノ船長が率いる18人だけであった。その生き残りの一人にイタリア・ヴェネツイアの天文学・地理学の専門家であるピガフェッタと言う人物がいたが、彼は南半球航海中、北極星が見えない為大きな星雲を頼りに航路を定めたと伝えられて居り、これが後年マゼラン星雲と呼ばれる事となった。 思い起こせば 過ってペルー在勤中チリへの出張時、砂漠の中のパンアメリカン・ハイウエーのタクシーの窓から見た魅惑的な星空こそ此の大マゼラン星雲であった。
彼のもう一つ大きな任務に航海日誌を付ける事があった。出航以来毎日欠かさず日記を付けその内容は詳細を極め、南アメリカや東南アジアの当時の文化や社会を生きいきと伝える近代最初の民族誌ともなったが、最後の一隻が、世界一周達成目前にアフリカの西にあるヴェルデ岬諸島に立ち寄った時、ピガフェッタの日記では水曜日であるはずがヴェルデ岬諸島では木曜日であることを知り大変驚いたと記録されている。スペイン帰港後乗組員が自分達の記録した日付が絶対正しいと主張したため大騒ぎになり、ローマ教皇のところに使者が出される事態にまで発展したのである。現在では自明の理であるが、西回りに地球を一周すれば日付けが一日遅れる(経度15度毎に1時間遅れる)事を実感した世界最初の人間になったのである。 此の事が発端となって時差が意識されるようになった。( 註;地球は経度360度だがその一回転には24時間を要するので、経度が15度異なると1時間の時差が生ずる。旅行者が15度移動するたびに時計の針を1時間ずつずらしていくと、世界を一周したとき、時刻は正しいが日付が1日異なることになる。)
マゼラン艦隊は地球の自転とは逆向きに世界を一周したため、地球が自転した回数よりも彼らが地球の周りを回った回数が1周少ない。つまり、彼らが見た日の出の回数は出発地のスペインにとどまっていた人々が見た回数より1回少なくなったのである。もし、一行が逆の向きで世界一周をしたならば、一行は地球の自転の回数に加え、さらにもうひと回りしてしまうことになるため、日付は1日多くなってしまうことになっていたのである。
「国際日付変更線の設定」……世界のグローバル化の進展により人間の交流や物流が世界的に行われるようになるに従い、全世界的に標準的な時刻の設定の必要性が高まった。1884年(明治17年)の国際子午線会議において、英・グリニッジ天文台を基点とするグリニッジ子午線が(本初子午線)に採用され、世界の標準時(タイムゾーン)が整備されることになった。これに呼応して日本は1886年に明石市がある東経135度を日本標準時子午線に決定した。即ち太陽が明石市の真上に来た時に日本全体が12時(日本の正午=午後0時=標準時)とする事が決まったのである。
又本初子午線を基準に東経と西経が180度の地点で重なる経線が日付変更線となるが、島などの陸地を通るときは陸地を避ける様変更を加え、又同じ国で日付が異なると不便なので、同じ国は同じ日になるように変更を加えることが認められている。ベーリング海峡・アリューシャン列島のところでZ字型に折れ曲がっているほか、東西南北四半球に跨るキリバス共和国の場合国内標準時を首都のある東半球側を基準にした為、大きく西半球に食い込むことになった。
前述(註)の通り地球は経度360度でその一回転には24時間を要するので、経度が15度異なると1時間の時差が生ずる為、日付変更線上が世界で最初に新しい日を迎えた時(午前0時)、日本は前日の3時間前(21時)となる。計算は(180-135)÷15=3時間。同様にロンドンは12時間前正午12時,敢えて計算すれば(180-0)÷15=12又は24÷2=12である。従って日本とイギリスの時差は9時間、地球は西から東に自転しているので 日本の正午はロンドンは夜の3時と言うことになる。 更にニューヨークの標準時子午線は西経 75 度なのでロンドンとの時差は75÷15=5時間となり日本との時差は9+5=14時間、日本の正午はNYでは14時間前、前日夜の10時と言うことになる。何れにしても時差の計算はイギリスをベースとするのが便利である。日本とシドニーの時差は1時間(フライト時間は9時間半程度)、時差ボケは全くないが、ニュージランド・オークランドとは3時間あるので,人によっては影響がある。ニューヨークとロス・シアトルの時差も同じく3時間である。(フライト時間は6時間半程度)
【メートル法の発明】…大航海時代はメートルという長さの単位を生み出した。従来長さの単位は古代エジプト等で使用されていたキュービット(権力者の肘から指先の長さ、2キュービットで約1メートル)等地域、時代によりバラバラであった。しかしながら大航海時代を経てグローバル社会の進展に伴い、長さの単位がまちまちな状態では不都合が多く世界で統一する必要性が生じた。これに最も熱心に取り組んだのは、既に地球測量の実績を持つフランスであった。1795年、(北極と南極を結ぶ子午線上)における赤道から北極までの距離(地球の円周の4分の1=1万km)の1000万分の1の長さを「1メートル」として定め、実際の測量に基づいてその長さを表す(メートル原器)が作られ、 1889年の第1回国際度量衡総会においてメートル原器が長さの標準として国際的に採用された。その後計量学の技術的発展を反映し、より精度の高い基準に見直しが行われている。
【地球自転の速度】……地球の赤道の長さは約4万Km、赤道上の1点は一日24時間で1回転するので時速に換算すると1700Km、目も眩む速さである。これを秒速に直すと1700÷(60x60)=0.47Km=470m、音速が340m/秒なので音速より早く回転していることになる。尚日本は北緯35度なので自転速度は1374Kmとなる(教科書に出ている)が、未だ音速より早いことになる。地表では人も音を伝える空気も一緒に回転して居る為、自転の影響を受けない。超音速飛行機の中で普通に会話できるのも機内の空気が人と一緒に動いて居り、それと同じ理屈である。 北極・南極の自転速度(ゼロ)は理解できるが、音速と同じ速さで回転する緯度の地域は何処か?計算が大変!!。
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