1991年(平成3年)に藤商事から登場したアレパチ「アレキング」
★賞球…16個
★払出し…得点1点につき16個、最大10点(F)で160個
★デジタル図柄…1~8の数字(8種類)
★7=大当り(14ラウンド) 3=中当り(2ラウンド) その他の数字は小当り(1ラウンド)
※本来なら、ラウンドではなく「ゲーム」が適切だが、便宜上「ラウンド」を使用。
★出玉…大当り=約2000個、中当り=約300個、小当り=ほぼ0(稀に150個)
★大当り・中当りの強力な連チャン性アリ
★朝一出目…1
本機は1991年10月に登場、同年暮れから翌92年初頭の新装で、本格的に導入が開始された。ハネモノを彷彿とさせる鳥型のヤクモノ、チープな1ケタの7セグデジタル、そして大当りと中当りの強い連チャン性など、ゲーム性は大いに香ばしかった。
ハネ開閉時の「ファファファファ」や、大当り中の「グヮッチョン、グヮッチョン、トゥルルルル…」の電子音にも、藤商事らしい味があった。向ヶ丘遊園「スター」で何度も対戦した、思い出深い一台だ。
ただ、「アレパチ」というマイナージャンル(当時はまだエキサイトやアレジンが出る前)である事、ホールにとっても客受けが未知数だった事(台単価も高額)、麻雀物語@平和など連チャンデジパチが市場に溢れていた事、そして、本機の登場後にダイナマイト@大一というゲーム性類似の権利モノが出て大ヒットした事などが災いして、残念ながら「メジャー」な機種とはならなかった。
それでも、導入からしばらくの間、各攻略誌は盛んに本機の特集記事を組み、一時的だが脚光を浴びた。一部ファンにとっては間違いなく「名機」であり、私もその一人だ。
本機については、以前にコチラの記事で紹介したが、実戦当時の思い出がメインで、解析的な内容にあまり触れなかった。
http://blog.goo.ne.jp/selfconfide777mc/e/be8e9742341ab6c00999402da420d258
そこで今回は、あの連チャンとハマリがどのような仕組みだったかを、あらためて振り返る。
まず、本機のゲーム性をザッとおさらいしよう。
(1)盤面左の「GO」チャッカー通過で、中央鳥形ヤクモノのハネが0.6秒開く。
(2)ヤクモノ内は左・中・右と3分割されており、中央穴(デジタル始動口)に入賞すると、鳥の頭の下にある1ケタデジタル(1~8)が回転する。左右の穴はハズレ。但し、何れかの穴に入ると、下段ナンバーポケット(1~16番)の3番と6番が点灯する。
(3)デジタルに7が出れば大当り、3が出れば中当りとなる。その他の数字は小当り。
(4)大当り、中当り後は右打ち。盤面右の「GO」チャッカー通過で、ヤクモノ下の電チューが開放。
(5)電チューの開放時間は、大当り・中当り時は5秒だが、小当り時は0.4秒と短い。よって、小当り時は電チュー入賞が難しく(但し、不可能ではない)、出玉は期待薄。
(6)電チュー入賞で、盤面下のナンバーポケットの「10、12、13、15」ランプが点灯。同時に、得点が「2倍」となる。
(7)ナンバーポケットは、「2、3、4、5」のように4連続点灯で「1点」となる。右打ち時は、電チューのサポートで右サイド「10~16」のランプが全灯し易い。全灯で、「10~13」「11~14」「12~15」の3か所が4連続点灯となり、1点×3=3点。また、「13~16」も点灯して「ジャックポット」で3点。さらに、電チュー入賞でスコアは2倍となり、容易に最高の10点=「F」を獲得可能(10点以上はナシ)。1点=16個なので、「F」で160個の払い出しがある。
(8)但し、アレパチは16発打ち出すと1ラウンドが終了する。つまり、毎ラウンド16発以内に「10~16」を全灯させないと、「F」は獲得できない。賞球の払出しは、ラウンド終了ごとに逐一行われる。
(9)大当り時は14ラウンドで、出玉は約2000個。中当り時は2ラウンドで、出玉は約300個。
(10)但し、デジタルが揃った時点で打ち出し可能な玉が僅かな場合、「F」を獲れずにラウンドが終了すると、1ラウンド分の出玉が減ってしまう。そこで、デジタルが回った瞬間に打ち出しを止め、同時に「精算ボタン」を素早く押す。こうすると、即・リセットがかかってデジタル停止前に次ラウンドに進み、3or7が揃った後にまるまる16発打つことが出来る(出玉増加打法)。
…とまぁ、通常時のゲーム性は、こんな感じだった。
それでは、連チャンシステムの説明に移る。
本機は、大当り・中当り終了後、少ない回転数(大半が1、2回転)で再びデジタルに「7」「3」が出易く、一撃の連チャンによる大量出玉も期待できた。個人的には、3・7併せての10連チャン程度は、普通に経験した。ただ、3に偏りすぎて、終わってみれば出玉が少ない事もあったが。
その反面、ひとたびハマリに捕まると、いくら回してもハズレ目(小当り)しか出ず、たまに中当りの「3」が来ても単発で、ひたすら投資を重ねるキツイ展開が続いた。
(1992年当時の手帳)
(92年3月26日(木)、遊園「スター」68番台でアレキングを打った時のデータ。いつもデータ取りをした訳ではなく、この時たまたま手帳にメモしたに過ぎない。自分にとっては、今や貴重な資料。この時は、前半が眠くなるようなハズレ目の羅列(田山プロ風)で、単発の3を1回挟んだ後、後半に7・3併せての9連チャンを決めている(出玉的には、10000発オーバーといったところか)。前半ハマっているが、収支はメモっておらず失念…。)
まぁ、この波の荒さこそ、本機最大の特徴だったが…では、その仕組みはどうなっていたのか?
実は、本機の連チャンとハマリは、「モード移行」と「乱数カウンター(出目テーブル)の偏り」という二つのカラクリによって作られていた。
以前説明したダイナマイト@大一も、ほぼ同様のカラクリだった。しかし、登場時期はアレキングの方が先なので、コチラがれっきとした「元祖」である。パチスロの「ダイナマイトVer」(レギュラーを契機に爆裂開始)も、本来なら「アレキングVer」と呼ぶべきであろう(笑)。
(過去記事:ダイナマイトはなぜ連チャンしたのか)
http://blog.goo.ne.jp/selfconfide777mc/e/350517b122f5b3947334627fe149bfed
本機には、「天国モード」「地獄モード」と、二つの異なる内部状態がある。
電源立ち上げ時※は必ず地獄モードからスタートし、デジタルが回るたびにモード移行の抽選機会がある。この移行抽選に当選しない限り、現在のモードから動くことはない。
※当時、アレキングにモーニングを入れる店があったが(「スター」も当初そうだった)、内部的にみると朝一の恩恵は全くない。当時の情報を勘案すると、このテの店では専用の「打ち込み機」を使っていた可能性が高い(モーニングの具体的手順を説明する資料もアリ)。
モード移行抽選には、大当り乱数カウンター(計256コマ)の数値を用いる。地獄モード滞在時、特定の8個の数値を拾うと天国Mへ移行する。一方、天国モード滞在時、特定の64個の数値を拾うと地獄Mに転落する。
したがって、数字上では地獄⇒天国のモード移行率は8/256=1/32、天国⇒地獄のモード移行率は64/256=1/4となる。基本的にはこの数値で問題ないが、実際は乱数を拾うゾーンに極端な偏りがあり、また移行率には台ごとの個体差も存在した(後述)。
ここで、本機の大当り乱数カウンターについて説明する。
カウンターの移行範囲は「0~255」の256コマ。カウンター速度は1コマ=0.016秒。カウンター周期は0.016×256=4.096秒。256コマの範囲を「1.6ミリ秒」刻みで進み、約4秒で1周。
因みに、乱数を拾うタイミングは、ヤクモノ中央穴(デジタル始動口)を玉が通過した瞬間。
256個の各乱数には、あらかじめ特定の出目(1~8)が割り当てられている。但し、1、2、3…と規則的には並んでおらず、「3・6・1・5・2・1・6」のように配列はバラバラだ。つまり、256個の乱数に対応した出目テーブルが存在する。
そして、ヤクモノ中央穴入賞時に取得した出目テーブルの数値が、デジタルの停止出目となる。
但し、「GO」チャッカーを通過した瞬間、乱数カウンターは「0」(始点)又は「128」(中間点)まで、いったん強制的に戻される(カウンターの巻き戻し、リセット)。
「0」と「128」のどちらの地点に戻るかは、滞在モードによって異なる。すなわち、地獄モード滞在時は「0」に巻き戻され、天国モード滞在時は「128」に戻される(これが、連チャンとハマリを生み出すもとになっていた)。
デジタル回転前には、必ずこの「巻き戻し処理」が行われる。一方、出目テーブルは、規則的に進む乱数カウンターの値に逐一対応している。
よって、デジタルにどんな目が出るかは、「GO」チャッカー通過からヤクモノ中央穴入賞までの「時間」で決まる。
本機の構造上、GO通過(リセット)からヤクモノ中央穴入賞(乱数取得)までの時間は、おのずと特定の範囲に集中する。具体的には、大半がGO通過から約1秒、もっと細かく言えば「0.8~1.5秒」の間に、ヤクモノ中央穴へ到達する。この誤差は、ヤクモノへの入賞タイミングや玉の速度などが影響する。また、クセやネカセ、また釘調整などにより、台ごとの個体差もある。
但し、これはあくまで標準的な数値で、0.7秒以内で入賞したり、1.6秒を超えたりするケースもある。
いずれにせよ、256コマある乱数カウンターのうち、実際に乱数が拾われるゾーンは、その一部に限られる訳だ。
そして、この乱数カウンター(出目テーブル)には、数値上大きな「偏り」があった。
例えば、上記のカウンター表で、「184~219」の36コマ(天国モードの起点「128」から0.912秒~1.472秒先のゾーン。これを天国ゾーンと呼ぶ)は、ほぼ7と3のみで占められる。ただし、天国ゾーンの両外10コマの範囲に目を移すと、一転して3、7は一個もない。たった10コマの差でも、出目テーブル上の違いは歴然である。
天国ゾーン(36コマ)における出目テーブルの内訳は、7が23個、3が12個、6が1個。つまり、天国ゾーンでの3・7占有率は、35/36と激高だ。また、7は3の約2倍も出やすい。
一方、カウンター表の「56~91」の36コマ(地獄モードの起点「0」から0.912秒~1.472秒先のゾーン。これを地獄ゾーンと呼ぶ)には、3が4つあるが7は一つもない。さらに、地獄ゾーンの両外10コマの範囲にも、7は見当たらない。すなわち、地獄ゾーン周辺で7を引くことは絶対にない。
天国モード滞在時は、カウンター巻き戻し後に「128」からスタートする為、乱数が拾われ易いゾーンは、起点の「128」から約1秒先にある「192」周辺である。「天国ゾーン」は丁度その付近にあり、出目のほぼ全てが3か7である。これが、天国モード滞在時に3・7が連チャンする理由だ。
一方、地獄モード滞在時は、カウンター巻き戻し後に「0」からスタートする為、、起点の「0」から約1秒先の「64」周辺の乱数を拾い易い。「地獄ゾーン」はまさにこの範囲内にあり、「ハズレ目集中地帯」となっている。当然、大当りの7はゼロだ。仮に中当りの3が来ても、モードアップしない限り単発に終わる。地獄滞在時に、全く7が出ず延々とハマるのは、こうした仕掛けによる。
但し、実際は、天国ゾーンや地獄ゾーンの両外10コマ(時間にして0.16秒の範囲)程度の乱数を拾うケースも、決して少なくない。ヤクモノ入賞タイミングや玉の動き次第では、さらに外側の乱数を拾う事もある。特に、天国モード時に天国ゾーン以外の乱数を拾うと、7・3ではなくハズレ目(小当り)が出てしまう。つまり、天国ゾーンを頻繁に外す「クセ悪台」は、天国モード滞在時のハズレ目出現率がアップして、トータルの大当り回数はガクンと落ちる。
次に、モード移行の仕組みについて。
電源立ち上げ時は、常に地獄モードからスタート(但し、打ち込み機によるモーニングもアリ)。
地獄モード滞在時は、デジタル回転時、大当りカウンター内にある特定の8つの乱数(「0」から32コマおきに8つ配置)を拾うと、天国モードに移行する。
ここで、乱数カウンターの「56~91」のゾーン(地獄ゾーン)には、モードアップ乱数が1個だけ存在し(「64」」)、対応する出目テーブルは3(中当り)である。よって、ハマリ時の3は、天国モード移行を暗示する「リーチ目」的な役割を持つ。
また、地獄ゾーンの5コマ先にも、モードアップ乱数の「96」がある(コチラも、出目テーブルでは3)。ヤクモノの入賞タイミング次第では、「64」ではなく「96」経由で天国モードに移行するケースもある。
但し、地獄ゾーンには、モードアップと無関係の3も複数含まれる。すなわち、「56~91」のゾーン内には、モードアップしない「冷やかし」の3が「57、78、90」と計3つある。
モードアップする「64」と冷やかしの「57」を比べると、コマ数ではたった7コマ、時間にして0.112秒の「微差」しかない。また、モードアップ乱数「96」の6コマ手前には、冷やかしの「90」があるが、その差(距離)も僅かである。
0.1秒程の時間差を体感器なしで見分けるのは、一般ファンには困難である。したがって、GOチャッカー入賞⇒ヤクモノ中央穴入賞のタイムラグで「本物」と「冷やかし」の3を見分ける事は、余程の「達人」でない限りは不可能だろう。以前、この差を認識できるとする方からのコメントを頂いたが、もしや某・関西系攻略集団の方では…?
一方、天国モード滞在時は、特定の64個の乱数(0から4コマおきに64個配置)を拾うと、地獄モードに転落する。
ここで、「184~219」の天国ゾーンには、転落契機となる乱数が均等に9個並んでいる。これらの乱数を出目テーブルでみると、7が7個で、3が2個となっている。つまり、地獄転落の危険度は、圧倒的に中当りより大当りの方が高い。もし、中当りの3が出た後に、大当りの7を引くことなくモード転落した場合は、「ヒキ弱」となる。
また、天国ゾーンのすぐ外側にも、モード転落用の乱数が多く存在する。天国ゾーンから外れて、コチラの乱数を引いた場合は、通常出目からモード転落するので余計に悲しい。
以上、色々と述べてきたが…
基本的には、天国モードでは天国ゾーンの、地獄モードでは地獄ゾーンの乱数を引き易い本機。だが、台によってはこれらのゾーンを外し易い「クセ悪台」もあった。
このクセは、天国⇒地獄のモード転落率にはさほど影響しないが、大当り回数にはモロに響く。GOチャッカーの周辺釘や寄り釘など釘チェックに加え、連チャン時にハズレ目を挟む事が多い台を避けるのも、本機を実戦する上では重要となった。
一方、台ごとのクセは、地獄⇒天国のモードアップ率には影響を与えた。なぜなら、モードアップ乱数は32コマおき(0.512秒おき)という比較的広い間隔で配置されており、入賞タイミングのクセ次第では、モードアップ乱数に当り易い台、当りにくい台という風に分かれたからだ。よって、普段からやたらとハマリが深く、連チャンに突入しづらい台は、天国モードに行きづらいクセ悪台として避けた方が安全であった。
これで、平成初期の名機「アレキング」の、連チャンとハマリのカラクリに関する説明を終わる。