1991年(平成3年)に西陣から登場した2回権利物「ハッピーキャッスル」
★賞球…7&15
★大当り確率…1/250(2回目権利時は1/50にアップ)
★出玉…約3000~4400個(2回目権利時のヒキ次第で大きくバラつく)
★当時の実戦店…高田馬場「コスモ」など
(当時のコスモ。現在も営業中だが、外観は大きく様変わりした。)
本機は、平成3年・春にデビューした、記念すべき「西陣初の新要件権利物」だ。
だが、その割には設置期間も短めで、人気もあまり出ないまま終わってしまった「不遇台」でもある。
後続機の「ニュークーデター」(2回権利、ルーキーデルタ調の丸デジタル)は覚えているが、本機はあまり記憶にない、という方もいるだろう。
(参考)平成3年に登場した、主な新要件2回権利物
西陣⇒ハッピーキャッスル、ニュークーデター
三共⇒タイムショックI、ビッグポーカーIIIA
平和⇒バレリーナ、エポック(※エポックは3回権利)
ニューギン⇒ダブルエース、ツインズ、ミルキーエース
三洋⇒スーパースリー、ニューヨーク
奥村⇒フラッシュ、トライアングル2
京楽⇒ミュータント2、ミュータント3
大一⇒アベニュー
豊丸⇒シティ、エスカルゴ1、スペースマウンテン、バトルロイヤル
一応、発売当初は「ハネモノで名を馳せた西陣が、旧要件『スーパーロボット』以来となる権利物を送り出した」と騒がれて、首都圏エリアでも本機を導入するホールは少なくなかった。
だが、肝心のゲーム性にやや問題があり、短期間で撤去してしまう店も多く、会心のヒットとはいかなかった。
では、その「問題」を含めて、本機のゲーム性を簡単に説明しよう。
(通常時)
・センター下部(ヘソ)の貯留チャッカー入賞で、その上の3ケタドットデジタルが回転。
・デジタルに「1~9」の三つ揃い、または「♪♪・7・♪♪」が出ると大当りとなる。
・デジタル大当りで、ヘソの貯留玉が左回転して「HIT」と書かれたV穴に入り、権利発生。
・大当りとは関係ないが、盤面左下の「★」チャッカー入賞で、その上の電チューが約1秒開放。
という感じで、大当りまでのプロセスは非常にオーソドックスだ(3ケタデジタルが揃えばOK)。
本機には、いわゆる「保留ランプ」がない。その代わり、ヘソチャッカー(貯留式回転体)の真上に、玉を最大4個停留させることが出来た。これは、当時としては面白いアイディアだったと思う。
こんな感じで、ヘソに入った玉をタテに4個停留可能(画像では3個停留)。最初の1個目がデジタルを回すので、「保留ランプ3個付き」のようなものだ。4個以上はヘソからはじき出されるので、停留満タン時は要・止め打ち。
デジタル大当り確率は1/250とデジパチ並みの数値で、特段「辛い」といった印象はない。ただ、デジタルの回転時間が長めで、リーチ時間も長かった為、デジタルの回転数を稼ぎづらい欠点があった。
また、盤面左に「電チュー」があり、電チュー開放用チャッカーの良し悪しが、通常時の玉持ちに影響するといわれた。だが、実際のホールだと、電チュー用チャッカーはガッツリ締めてあったと記憶する。
新要件機では、メイン役物以外に「サブ」の電動役物の搭載が新たに認められたので、「とりあえず電チューを付けてみました」的な台が幾つも出た。だが、店側の釘調整のせいで、「無用の長物」となる場合も多かったのだ。
(大当り中)
・権利が発生したら、右打ちに切り替える。
・盤面右下「GO」チャッカー入賞で、その右上の電チューアタッカーが約9.5秒(or10カウント)開放。
・アタッカー開放は最大16ラウンド。1回の権利消化で、約2200発となる。
このように、大当り中のゲーム性もシンプルだ。
ただ、当時はアタッカー開放用の「回転体」がまだなかった為、「GO」チャッカーに連続入賞すると、1ラウンド分の権利がまるまるロスとなった。一応、本機のGOチャッカーは連続入賞しづらいゲージになっていたが、万が一を考えると、「GO」チャッカーを単発打ちで狙うのが有効。
(2回目権利時)
・1回目の権利が終わったら、通常打ちに戻す。
・デジタル確率は1/50になっているので、1回目より簡単にデジタルを揃えることが可能。
・デジタルが揃って権利発生したら、右打ちで権利消化。
・ヘソの貯留玉が多いと、デジタルが連続で揃ってパンクする可能性あり(単発回しが安全)。
・理論上は「タイムショック」のようなダブル狙いが出来たが、タイミングが難しく困難だった。
さて、いよいよ「問題」となる2回目権利時である。
本機が不発に終わった最大の要因が、この2回目権利時のゲーム性にあった。
もうお気づきとは思うが、この時のメインデジタルの確率が、最大の欠点だったのだ。
当時の新要件デジタル権利物は、通常時の確率が「1/250」以下と低い場合、大抵が2回目権利時の確率を「10倍アップ」させて、権利の再獲得を容易にしていた。
ところが、本機は「1/250」の通常確率が「1/50」にアップするのみで、デジタル確率が「5倍」しかアップしなかった。
もちろん、「確率5倍アップ」の機種は他にも存在したが、そういった台は、元の確率が「1/50」「1/80」と高く、権利中にハマるケースはあまりなかった。本機のように、元の確率が低いのに5倍しかアップしない台は、かなり少数派だった。※(⇒この点、文末の「追記」参照)
したがって、2回目権利を獲得するのに、1回目権利で得た玉を多く使ってしまうケースが多発した。酷い時など、出た玉を全部飲まれて追加投資…という泣きたくなるパターンもあった(平和の「バレリーナ」でもこれを喰らったな…)。2回権利の出玉が「3000~4400個」と不安定になる要因が、ここにあった訳だ。
しかも、この当時は、ホールによっては本機を完全に「デジパチ」扱いしていた。そういった店の中には、信じられない事に、1回目権利が終わると約2000発の出玉を全部交換させて、再び現金投資で2回目権利を取らなければならないところがあった。実は、冒頭紹介した馬場の「コスモ」も、当初はこの「1回交換」ルールをとっていたのだ。
ただでさえ当たりづらい2回目権利を、現金で追わなければならない…。これでは、打つ側も意欲を大きくそがれてしまう。実際、「コスモ」のシマも客付が日ごとに悪くなり、その後、持ち玉ルールを改正したにも拘らず客が飛んでしまい、半年持たずに新台へ入れ替られてしまった。
そうそう、2回目権利時の欠点としては、デジタルの連続揃いによる「パンク」も挙げられる。
保留ランプがある台なら、2回目権利時にデジタルが続けて揃っても、最後の権利穴に玉が入らなければパンクはしない。
だが、本機はヘソの貯留玉がそのままデジタルを回す仕様の為、場合によってはデジタルが連続で揃ってV(HIT)に連続入賞する「パンク」の危険があったのだ。
たとえ「1/50」と低確率でも、不用意なパンクを防ぐ必要はあった訳で、2回目権利時はヘソに複数の玉を停留させない(単発回し)方が安全だった。
ひょっとすると、2回目権利の確率を1/50と低めに設定したのは、こうしたヤクモノ構造上のパンクを考慮したものかもしれない。しかし、結果としてはゲーム性のアンバランスさに繋がった。
今考えると、この時期は新要件デジタル権利物の「草創期」であり、メーカーもホールも客も、色々と「試行錯誤」していたと思う。まぁ、それはそれで混沌として、結構面白かったが…。
★追記★(2014.6.16、進歩は馬並さん)
補足コメント有難うございます。ご指摘に関しては仰る通りですね。「デジタル当選=権利発生」(一発当選型)のタイプは確率5倍アップまで、「デジタル当選+振り分けヤクモノ当選=権利発生」(振り分け型)タイプは確率10倍アップまで、という確率変動時の制限が存在しました。
当時、権利モノでデジタル確率が低めのものは、ほとんどが「振り分け型」でしたが、ご指摘の通り、「形式上の振り分け(簡易振り分け型)」であるものが大半で、実質的には「デジタルさえ揃えば、ほぼ権利獲得」という機種ばかりでした。このタイプは2回目権利時の10倍アップが可能だったので、常に安定した出玉が望める仕様になっていました。
(ex)平成3年当時出回った、「デジタル確率1/190以下で、簡易振り分け型」の2回権利物
スーパースリー(三洋)…1/190⇒1/19(10倍アップ)
ニューヨーク(三洋)…1/220⇒1/22(10倍アップ)
ミュータント3(京楽)…1/240⇒1/24(10倍アップ)
バトルロイヤル(豊丸)…1/333⇒1/33(10倍アップ)
エスカルゴI(豊丸)…1/236⇒1/23.6(10倍アップ)
ツインズ(ニューギン)…1/280⇒1/28(10倍アップ)
などなど
これに対して、ハッピーキャッスルの場合、デジタル確率が「1/250」と簡易振り分け型並みの低さだったにも拘らず、確率5倍アップまでしか許されない「一発当選型」だった事が仇となり、出玉が不安定になる欠点がありましたね。
因みに、同時期に出た奥村の2回権利物「フラッシュ」も、本機と同じくデジタル一発当選型でしたが、コチラは通常時のデジタル確率が「1/50」とかなり高くなっていました。したがって、2回目権利時は5倍アップでも「1/10」と甘いのですが、高確率タイプゆえに、デジタルの回りが極端に悪いという短所がありました。その為、2回目権利の獲得がやはり大変で、ハッピーキャッスル同様に出玉を大きく削られるケースが多発しました。
(追記、ここまで)
★★追記の追記(2014.6.17)★★
本機と同時期に人気を博した、三共の2回権利物「タイムショックI」は、本機と同様「デジタル一発当選型」システムを採用していた。
その為、メーカー発表の内部確率は「初回=1/180、二回目=1/36」の「5倍アップ」タイプとなっていた(必勝G誌は、当初「二回目=1/18」の10倍アップと説明していたが、後に修正)。
だが、実戦でタイムショックIを打っていた時、二回目権利時に「1/36」とは思えないほど早く大当りを引くケースが多かった。仮に「1/36」であれば、権利中に確率の2倍や3倍ハマってもおかしくないのに、ほとんどが10数回転以内にデジタルが揃っていたからである。
これについては、当時の解析資料が手元にない為、ハッキリした事は言えない。だが、攻略誌の幾つか(秘密のP術、P必勝本など)は、「タイムショックIの2回目権利時は、内部確率が1/6にアップしていた」と説明している。また、必勝G誌の関連書籍の中にも、「2回目は5倍アップの1/36というのがメーカー発表だが、どうもウサン臭い」というような記述がある。
当時の実戦感覚や残存資料から考えて、タイムショックの2回目権利時は、やはり「1/36」よりも甘い確率で抽選されていたと思われる。とすれば、「一発当選型は確率5倍アップまで可」という当時の内規に反していた可能性がある。「ハッピーキャッスル」が不遇となった最大の欠点(2回目権利時の低確率)を、ライバルの三共は「技」を駆使して上手くかいくぐったのかも…。
実際、タイムショックが例の「ダブル攻略」を受けて撤去が始まった頃に、三共は類似タイプの2回権利物「ビッグポーカーIII」を出してきたが、コチラは「初回=1/50、2回目=1/10」と、しっかり内規に適合した確率になっていた。
ダブルネタばかりが注目されたタイムショックIだが、実は、2回目権利時の「怪しい抽選確率」という「論点」も存在した事を書き加えておく。
(追記の追記、ここまで)