悠々ファーム せなりー

つがるの古都弘前市 四季折々の美しい自然の中で育まれている りんごっこ情報をお届けします。

□ 野菜を摂取していれば果物は不必要?

2009年01月16日 | 健康・病気

「野菜を沢山食べていれば果物は特別必要ないのでは?」といわ
れることがあります。それに対して「加熱すると失われるビタミン
Cは果物から摂るのが良いのでは」と言っても、「それだけなら野菜
サラダを食べればいいのでは」と反論されてしまいます。そこで、
今回は野菜と異なる果物の健康機能について紹介します。

○ 心臓病予防と果物

 心臓の筋肉(心筋)に必要な血液を供給出来なくなると狭心症や
心筋梗塞などの冠動脈疾患(心臓病)となります。食物繊維を摂取
すると、血圧が下がり、血液中の脂質やインスリン感受性が改善さ
れると報告されています。

 そこで、食物繊維の摂取量と冠動脈疾患との関係をより明確にす
るために、大規模な疫学研究が行われました(文献1)。研究では
アメリカ、ヨーロッパに住む男性91,058人、女性245,186人あわせて
約34万人を対象に6~10年間追跡調査が行われました。その結果、食
物繊維を多く摂取すると冠動脈疾患の発症が少なくなることが確認
されました。

 次に、食物繊維源を穀類由来、果物由来、野菜由来に分けて、冠
動脈疾患との関係を調べたところ、1日あたりの摂取量が10グラム
増えると、冠動脈疾患の罹病リスクは、穀類由来の食物繊維ではリ
スクが10%低下、果物由来ではリスクが16%低下、野菜由来ではリ
スク低下は認められませんでした。死亡リスクは、穀類由来の食物
繊維では25%低下、果物由来では30%低下、野菜由来でははっきり
しませんでした。
 こうした研究結果から、果物摂取は冠動脈心臓病予防に有効です。

○ 大腸ガンと果物

 大腸ガンは、大腸の内側に発生するガンで、近年わが国では大腸
ガンが急速に増加しています。大腸ガンと食生活の関係を明らかに
するために、世界保健機関(WHO)に所属する国際ガン研究機関が
組織したプロジェクトで、ヨーロッパ8ヶ国に住む、519,978人を
対象とした大規模な追跡調査(1992~1998年、25~70才)が行われ
ました(文献2)。その結果、食物繊維の摂取量が多い人(摂取食
物繊維量31.9g/日)は、低い人(12.6g/日)と比べて、大腸ガンの発
生リスクが25%低くなることが明らかになりました。

 さらに、食物繊維の供給源別に大腸ガンとの関係を調べたところ、
果物由来の食物繊維ではリスクが22%低下、穀類由来も22%低下、
野菜由来では12%低下、豆類由来でははっきりしませんでした。。
この結果は、果物の摂取は大腸ガン予防に有効であることを示して
います。

○ 肥満と果物

 肥満は、メタボリックシンドロームの危険因子で、かつ、高脂血
症、高血圧、糖尿病、ガンなどの生活習慣病を誘発します。しかし、
無理なカロリー制限は、空腹感に悩まされ長続きしません。従って、
肥満予防にはカロリーが低く空腹感を満たす果物の摂取が有効です。

  たとえば、アメリカで行われた肥満の人と標準体重の人を比較し
た農務省(USDA)の調査によると、肥満の男性、女性は、ともに果
物の摂取量が少なく、肉の摂取量が多いことが分かりました(文献
3)。一方、野菜は、標準体重の人と肥満の人の間に有意な差は認
められませんでした。
 
  さらに、南カリフォルニア大学などの研究グループが行った研究
でも、標準体重の人は太った人より果物の摂取量が多いことが分か
りました(文献4)。また、果物の摂取量と体脂肪とは逆相関があ
ることも明らかになりました。一方、野菜の摂取量は標準体重の人
と肥満の人との間に摂取量の明かな差はありませんでした。
 
  こうした結果は、果物を摂取すると調理されることの多い野菜よ
り満腹感を満たし、肥満予防に有効であることを示しています。
 
○ まとめ

 果物には野菜とは異なる生活習慣病予防作用があります。従って
「野菜を摂取していれば果物は不必要」ではありません。毎日くだ
もの200グラムは生活習慣病予防に有効です。

【文献】
1) Pereira, M. A. et al. Dietary fiber and risk of coronary
heart disease: a pooled analysis of cohort studies. Arch Int
Med., 164: 370-376. (2004)

2) Bingham, S. A. et al.: Dietary fibre in food and protection
against colorectal cancer in the European Prospective
Investigation into Cancer and Nutrition (EPIC): an observational
study. Lancet, 361: 1496-501. (2003)

3) Lin, B.H. et al.: Higher fruit consumption linked with lower
body mass index. Food Rev. 25: 28-32. (2002)

4) Davis, J. N. et al.: Normal-weight adults consume more fiber
and fruit than their age- and height-matched overweight/obese
counterparts. J. Am. Diet. Assoc. 106: 833-840. (2006)

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