◆もろもっの芸・・・十八番(おはこ) 自慢の芸 それぞれの個性
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昔、戸楽ん磯でエンビやガンジやキャーどんが集まって、もろもっの芸ば見せ合おうで、ちゆうこっになったっちたな。
真っ先にシャジャん岩ん上に登って、「道端ずんぎりよかろがな」ちゆうたっちた。そしたら集まった面々が「ちっとじゃーっかばって、おもしろか」ち拍手喝采じゃったっちた。次にナマコん岩ん上に登って、岩かっ垂れ下がったごてして見せっ「シガッゴガッのキュウリん生(な)った」ちゆうたっちた。そしたら集まった面々が「ジョヒジョヒ」ち拍手喝采じゃったっちた。最後に檜扇貝の岩ん上に登って、まっすぐ立って「朝日の出まわりャよかろがな」ちゆうたっちた。そしたら集まった面々が「ほんなこっそん通り!」ちざまな拍手喝采じゃったっちた。
【一般語訳】
昔、戸楽の磯でエビやカニや貝たちが集まって、十八番の芸を見せ合おうよ、ということになったんだって。
真っ先にサザエが岩の上に登って、「道端ずんぎりよかろがな」と言ったんだって。そしたら集まった面々が「ちょっとバッチィけど、おもしろい」と拍手喝采だったんだって。次にナマコが岩の上に登って、岩から垂れ下がったようにしてみせて「4月5月の旬の季節のキュウリが生(な)りました」って言ったんだって。そしたら集まった面々が「上手上手」と拍手喝采だったんだって。最後に檜扇貝が岩の上に登って、まっすぐ立って「朝の日の出ですよ。キレイでしょう」と言ったんだって。そしたら集まった面々が「まったくその通り!」
と、たいへんな拍手喝采だったんだって。
(かれこれ五十年以上前の小学校に通う前に祖母や親から幾度か聞いた話です。物語自体は聞いた通りだとおもいますが表現は脚色しています。)