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のほほん書斎(日高茂和)

五色の紙テープ

先日、亡父の法要で福江に帰ってきた。
帰りのジェットフォイルからの光景である。

四月。別れと出会いの季節である。
転校生を見送るのか、子供たちが桟橋で、泣き出しそうな顔をして、盛んに送る友達に大きな声を贈っていた。

今でもそうだと思うが、甲板のある船での見送りには、五色の紙テープを船上の旅人と桟橋の送る人がもち、船が離れて、テープが途切れるまで伸びていくのが別れを惜しむ気持ちを形として表現する。せつなくも美しい習慣であり、景色である。
ジェットフォイルのような、窓も開かず、甲板もない船ではそれはできない。

この時季になると必ず思い出すことがある。
小学四年になるころ、転校するIを桟橋に見送った。
いつまでもいつまでも泣いて、桟橋に子供一人になった私の顔を覗き込み、意外そうに、また、新しい発見をしたという表情と声で私の名を呼んだK先生のことだ。

この日は、二人の子供が桟橋から防波堤の突端までかけてきて、見えなくなるまで見送っていた。
私も彼らの気持ちになって、見えなくなるまで彼らに目をやった。涙した。
映画のような光景だったが、現実の、まさに現実の物語だった。

コメント一覧

のほほん
ようこそ
蒼いファンタジスタさん、 ガタキュンさん、絵月夜さん

こういう経験を自分のこととして受けとめられるのも島に生まれ育ったからですね。
絵月夜
感動ですね☆
もらい涙しました。
なんだか、込上げるものがありますね。

いい思い出・いい旅立ちになりましたね。
ガタキュン
船の別れ
うんうん、思い出したわ。
私の頃はまだジェットホイルはなかったからそれはそれはドラや蛍の光の音楽が悲しさを増した。
だんだん飛行機に乗る人が多くなったんじゃない。
島だから船がなくなることはないだろうね。
蒼いファンタジスタ
そんな季節です
http://blogs.yahoo.co.jp/w_cup_2002/
まったく同感!
経験から船で見送られるよりも、見送るときの方がちょっとだけ悲しい。
5色のテープが切れてしまって桟橋が遠くになっていくのをみているのはたまらないものがありますね。

夏休みに遊んだ従兄弟を見送った後、夕方、桟橋を後にしての帰り道は、あしたからの楽しみがなくなったようで、寂しくてしょうがなかった記憶もあります。
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