あの喋ることが出来ない中国人のおじさんはいつもカレーの列の前の方にいる。
話しかけられてもただ頷く返事しか出来ないからだろうか、誰からも声を掛けられないように川の方をずっと向いていた。
みんなに挨拶する自分の声に気付くと、彼はこっちを向いて微笑んでくれた。
彼に近づき、しっかり握手をして笑顔を交わした。
何度見ても思う、ほんとうに愛らしく穏やかな笑顔である。
カレーを配り終えてから、しばらくカレーの容器を集めた後、彼のもとに行った。
彼のそばに行くと、彼は右手を差し出し、握手を求めた。
それを丁寧に受け止めて、そっと彼の隣に柔らかく座った。
言葉はなくとも、心は静かに通い合い、落ち着き払った穏やかな気が二人の間を流れているのは分かった。
それを有り難く丁寧に全身で味わった。
心地良い風が吹けば、お互いに顔を合わせ、ただそれを喜ぶだけだが、決してそれだけではない。
目に見えぬ優しいものが辺りを包み込んでいた。
そのなかに自分たちは居た。
{つづく}
話しかけられてもただ頷く返事しか出来ないからだろうか、誰からも声を掛けられないように川の方をずっと向いていた。
みんなに挨拶する自分の声に気付くと、彼はこっちを向いて微笑んでくれた。
彼に近づき、しっかり握手をして笑顔を交わした。
何度見ても思う、ほんとうに愛らしく穏やかな笑顔である。
カレーを配り終えてから、しばらくカレーの容器を集めた後、彼のもとに行った。
彼のそばに行くと、彼は右手を差し出し、握手を求めた。
それを丁寧に受け止めて、そっと彼の隣に柔らかく座った。
言葉はなくとも、心は静かに通い合い、落ち着き払った穏やかな気が二人の間を流れているのは分かった。
それを有り難く丁寧に全身で味わった。
心地良い風が吹けば、お互いに顔を合わせ、ただそれを喜ぶだけだが、決してそれだけではない。
目に見えぬ優しいものが辺りを包み込んでいた。
そのなかに自分たちは居た。
{つづく}