指宿の山川で漁師であった前田利右衛門が23歳の頃、宝永2年{1702年}に琉球に渡り、土地の人々が食べていた珍しいイモを郷里へ持ち帰り、苦労の末栽培に成功したのが薩摩芋である。
最近少し贅沢をした。
一ヶ月間タバコを買っていないなどの都合の良い勝手な理由を付け、前から欲しかった黒薩摩焼の黒じょかを買った。
これで頂く芋焼酎はほんとうにうまい。
その芋焼酎も前の日から割り水をしておく。
それを黒じょかで弱火でゆっくりとお燗する。
この手間が何とも芋焼酎の潤いと甘みを増す。
そして、晩酌に向かう自分の心を時めかす。
小さなぐい呑みに黒じょかから芋焼酎と注げば、微かな湯気とともに芋の良い香りが舞う。
それをぐいっと飲み干す。
一日の疲れがどこかへ消えていくような安らぎに満たされる。
飲み干したぐい呑みにまた注ぐ。
この手間も何とも楽しいのである。
黒じょかはろうそくで保温しておく。
そのろうそくの炎も食膳を柔らかくあたたかなものとする。
そして、指宿の赤利右衛門を頂いた。
あの地を心に思い出し。
有り難く美味しく芋焼酎を頂いた。
利右衛門さんのおかげです。
「ありがとうございます」。