日曜日はアサダの両親ツヨシ、ミエコの結婚40周年を祝うために上尾のアサダ宅に行った。
まず自分がピーと一緒に先に着いた。
後から優子ちゃん、しげちゃん、ヒロが来た。
ヒロは来るなり、自分の子供がアサダ両親のために色紙で作った結婚40周年を祝うメダルをツヨシにあげ始めた。
「この子は何をやってくれているのか」と思った。
思っただけでなく、声に出したと思う。
自分もピーもサプライズパーティーにするということで結婚記念日のことは何も触れていなかった。
増してや、まだ彼らが来る前にツヨシが「昨日結婚記念日で40年になるんだよ」と話していたのを、「すごい、そうなんだ」と軽く流していたのに、この子は・・・。
優子ちゃんがヒロのフライングに突っ込みを入れた。
それは当然であり、まだイナイとイナイの旦那と子供も来ていないし、全員揃っていなかったである。
自分の仕出かした失敗に赤面なり、「みんな忘れて!」と必死に言うヒロだが、そんことは容赦せず、みんなに突付かれていた。
それから、またしばらくしてイナイ家族が来た。
イナイの旦那さん大ちゃんに会うのは初めてだったが、もう良い調子に酒を飲んでいたので、随分楽しい感じで話をした。
そこで仕切りなおし、イナイが持ってきた手作りケーキには「祝40年」と書いてあった。
それがあまりにもダサくて、ダサすぎて、それがかえって、あたたかくて、優子ちゃんとしげちゃんが持ってきたお店のケーキより、光りを放った。
部屋にも飾り付けをして、イナイの手作りくす玉も用意され、ここでやっとヒロの子供が作ったメダルの登場、ツヨシとミエコの首に掛けられる。
二つのケーキのローソクには火が点けられ、部屋のカーテンを閉める。
ツヨシにローソクを消してもらい、音の出ないクラッカーのようなものを二人に注がれて、ちょっとした罰ゲームのような二人が照れながら、みんなの前に立っていた。
二人から言葉をもらった。
息子が亡くなって10年以上経つのにこんなにみんなが来てくれること、結婚記念日を祝ってくれるなど、そんな日が来るなど想像もしていなかったこと、メガネを外し、目にハンカチをあてながら話した。
あまりにもダサくて、グダグダなサプライズパーティーだったが、笑顔が溢れて、とても優しい一日だった。
そして、ほんとうに楽しい一日だった。
弟のように可愛がり、仲が良かったアサダが天国に行って、もう十年以上になる、今だ寂しい気もするがあたたかい思いにもなってきた。
もしアサダを思い、涙が出てくるようなことがあれば、それは寂しいだけだからではない、感謝と愛も混じっている。
そこにアサダは自分の内に一緒に生きていることに違いないとも感じれるんだと思う。
ツヨシもミエコもほんとうに嬉しそうだった。
帰り際にミエコが言った。
「今日は楽しいハプニングだった」。
隣にいたピーがクスッと笑いながら、「サプライズだから」と小さな声で自分に伝言を回すように言った。