カルカッタより愛を込めて・・・。

今月のアピア40のライブは3月21日(金)です。また生配信があるので良かったら見てください。

計らいとして。その2。

2020-12-30 12:39:08 | Weblog
 白髭橋まで来ると、道路の反対側にはすでに数台の消防車があり、警察車両もあった。

 警察官や救急隊員が慌ただしく走り回っていた。

 ヒデ君が「Tetsuさん、ちょっと見て来ます」と言い残して、さっそうと走り出した。

 私はそう言えば、こうした時、救命医は活躍するんだと実感した。

 どこかテレビドラマのような光景だった。

 現場に向かって走り去って行くヒデ君の後ろ姿がカッコよく見えた。

 飛び込み自殺があった場所は橋の真ん中ではなく、南千住寄りの隅田川の端のようだった。

 すでに警察がテープを貼り、歩行者を通行止めしていた。

 私が歩いていた反対側の道路には野次馬が集まっていた。

 そのなかに私も加わった。

 ヒデ君はすでに警察官と話しをし、また水面を覗いたりしていた。

 橋の上には身体を吊り上げる装具が設置されていた。

 すでに飛び込んだ人は発見されたようだった。

 いっそう慌ただしく走り回る救急隊員の姿から、辺りの緊張感が高まってくのが道路挟んだ反対側まで伝わってきた。

 私自身も緊張してきた。

 橋の上にゆっくりと濡れた身体が上がってきた。

 固まった身体から冷たい水が滴り落ち、水面に戻っていく様は、それを見る者をも冷たくさせていたに違いない。

 私の知っている人なのか、どんな表情をしているかまではまったく分からなかった。

 気が付くと、すぐにヒデ君が心臓マッサージをしていた。

 たぶん飛び込んでから30分以上はすでに経っていると思う。

 ヒデ君は命を救おうと必死に働いていた。

 私は野次馬のなかで祈っていた。

 私の正面には青空のなかに綺麗にスカイツリーは立っていた。

 {つづく} 
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