Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

『猟奇的な彼女』ただのラブコメじゃない!

2014-06-29 07:08:40 | 日記

最近映画を観ていません。理由はあまり観たいと食指の動く作品が無いことと、カメラの方に時間を取られているせいです。「アナと雪の女王」とか話題作がありますが、
あまり世間が騒ぐと敬遠したくなる悪い癖が自分にはあります。単なるへそ曲がりですが自覚しています。行きつけのゲオにも最近行ってません。そこで今日は過去に観た中で自分の好きな作品を
紹介したいと思います。 この「猟奇的な彼女」は韓国映画ですが、最初観たときはあっけにとられました。ただのラブコメだと思って観ていたら最後に見事にうっちゃりを食いました。
ラブコメって観ていて楽しいものですから大抵の人が好みだと思います。「メリーに首ったけ」などちょっとおバカさが高い作品ですが、これも面白くってキャメロン・ディアスの出世作となりました。
この作品はユーモアたっぷりの二人の出会いを描いているわけですが、最後のオチには「そうだったのか」と良い意味で脱力感に襲われました。そういえば伏線もちゃんと張られています。
すっかり脚本にやられた訳ですが主演二人の好演もこの作品を成功させている一因でもあります。後にハリウッドでもリメイクされましたが、そちらの方は観ていません。
このストーリーでは西洋人の物語では違和感があります。日本人に似た顔かたちの韓国の映画だからこそ物語に入り込み易く笑いも感動も素直に胸に響くと思います。
もし観ていないという人が居られたらおススメします。 良く出来た、ただのラブコメじゃない青春映画を楽しんで下さい。

さて、ジブリの作品もDVDが出たし今日はこの後ゲオに行って久しぶりに映画を何本か楽しもう。 ジョニー・デップの「トランセンデンス」もIMAXで上映しているのが気にかかるが
今日はDVDでガマン。
                 
                                

『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信のミステリ

2014-06-28 15:35:49 | ミステリ小説
                                         

五つの短編が収められた本です。そして最後の一行にこだわったお話ばかりです。その衝撃はとても深くこちらの胸を抉ります。
「身内に不幸がありまして」  とてもブラックなオチが用意されたお話です。
「北の館の罪人」       奇妙な買い物。しかし一つ一つが意味があり隠された意味が最後に強烈に胸に突き刺さります。
「山荘秘聞」         そうだろう、と予想させておいて最後に違う手口で読者を煙に巻く憎いオチ。
「玉野五十鈴の誉れ」     好みから云えばこれが一番気に入った作品。哀れさと怖さと不条理さがない交ぜになったような物語で遣る瀬無い思いが心に残るラストと心情の描写が秀逸。
「儚い羊たちの晩餐」     食は文化。その文化を逆手にとって不気味な怪しげな雰囲気の物語と怖いオチを見せる作者のセンス。

        どこであるとか、いつの時代であるとかハッキリとせずに昔話を語って聞かせるような文で書かれたスタイルがこの作品の良いところで、とても読みやすく人の心の内や感情が素直に読んでいる
        こちらの胸に響いてくる。みんな質の高いお話でこんな短編集はとても貴重だ。作者のセンスの良さがあって初めて書かれる小説と言える。      


                                  

『五覚堂の殺人』周木律のミステリ

2014-06-28 14:47:55 | ミステリ小説
                                      

放浪の天才数学者、十和田只人シリーズ三作目です。相変わらず高等数学のあれこれが満載です。それも日常会話からも数学の問題を話すという内容で、
会話のやり取りにも高等数学の問題が色々出てきて何が何だか分かりません。一作目はどのようにして犯行を成し得たか、がテーマでした。二作目は犯人は誰か、がテーマでした。
そして三作目は密室殺人がテーマです。しかし、この密室問題を解けば自動的に犯人が明らかになるわけでミステリの構成としては少し弱いと思います。そのため一作目から引きずっている
登場人物たちの関係が少しずつ明らかになる設定にしてあって、今回も主要な人物達の経緯が過去を含めて明らかになってきて今後の展開へ興味を繋ぐ役割を担っています。
しかし、某国立大建築学科卒の著者が何故こうも高等数学の問題を扱ったミステリを書くのか、そこらへんが私には謎でミステリです。面白いといえば面白いし、つまらないと言えばつまらない。
とてもシビアな評価になるシリーズではないでしょうか。この後も『伽藍堂の殺人』としてシリーズ四作目が9月に出るそうです。
 
                              

『クリーピー』前川裕のミステリ

2014-06-28 13:37:02 | ミステリ小説
                                      

もし隣に住む人物が異常者だったら。しかし、変だ、そう思っていても確かな証拠がなかったら周りにどう説明するか。うっかりすると自分自身が変な目で
見られることになる。そして向かいに建つ一軒家が燃え三人の焼死体が発見される。その家には年老いた母親とその面倒を見るすでに初老の娘の二人暮らし。そんな状況で物語りは始まります。
気味の悪いといった意味のクリーピー。そのタイトルどうり薄気味悪い人物との戦いを描いた物語なんですが、雫井修介の『火の粉』もこういった内容でした。
『火の粉』と違うのはこちらの方は相手が読んでいる読者にも明確に異常者かどうか分からない点です。つまり主人公と同じ目線で事件に遭遇していく書き方をしています。隣の家には中学に通う娘がいます。
ある日それとなく尋ねると、あの人は父親じゃないと言います。主人公に大学の教授で犯罪心理学者という設定です。じわりじわりと隣人の正体が顕わになってきますが、隣人関係が希薄な社会では
成りすましがあっても気づかれることは少ないのではないか。そう主人公が呟きます。そして異常な事件が続いたあと隣の男の行方はぷつりと消えます。最後にも一捻りがありミステリとしての意外さも効いています。
『火の粉』とは一味違う面白さがありこれはこれで面白い、そんな感想を持ちました。

                                      

『ロンド』柄澤齊のミステリ

2014-06-28 12:17:39 | ミステリ小説
                                          

木口木版画の第一人者と云われている人のミステリデビュー作です。どのような経緯でもってミステリを書かれたのか分かりませんが、素人っぽさは

微塵も感じることのない文体で、しっかりとしたミステリを書かれています。わずかの人しか観ていない「ロンド」と題される一枚の絵画。事故により急逝した異端の画家が残した一枚の絵画。

その絵画を巡って起きる殺人事件。謎の人物からの個展の招待状が届き、若い学芸員が赴くと有名な絵画を模した死体が遺されていた。誰が何のために・・・。さらに第二、第三の招待状が届く。

絵画と言えばリビングなどに飾る、花や人物像や印象的な風景を描いたものを思い浮かべるが、またある一面では宗教や死生観を表わした残虐でグロテスクな絵画も沢山残されている。

こういった宗教に則った思想とか刑罰的な絵画や、作家自身の死生観そのものを表わした作品などがあることを物語のなかに取り入れ絵画の魔力のようなものを示している。



天才が描きあげた一枚の絵。その世界に住むものならばその絵に魅了される由縁が、熱く正確に書き込まれていて読んでいるこちらにも分かりやすい。

狂気にも似た行いをする人物や人間関係などがしっかり書かれているので美術界などとは無縁でも読み応えがあり、ミステリとしての動機や犯行理由もすんなり納得してしまいます。

ただ、犯人は中盤以降で明らかになるので犯人さがしのミステリと思ってはいけません。でも途中で犯人が分かったとしても物語りはそこで終わりではありません。

彼と彼女、そして犯人との息詰まる展開が続きます。 異質の作家による異質のミステリ。そんな感じですが最後まで飽きずに読むことが出来ました。

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