ホラー大賞受賞作品ですが、ありきたりのホラー話ではなくミステリ的な味付けもしてある内容です。物の怪や怪異ではなく人のこころや社会の貧しさが恐ろしい物を生むというそんな内容のお話です。
応募作の「ぼっけえ、きょうてえ」の他に書き下ろしの「密告函」、「あまぞわい」、「依って件の如し」の計四編が収められた本です。「ぼっけえ、きょうてえ」は女郎がお客に寝物語を聞かせるという
お話で、岡山弁での語り口がその内容にとても効果的で怪しい雰囲気を醸し出すのに非常にマッチしています。また読んでいてその筆力にも圧倒されます。貧しい社会と貧しい人々、それらのリアリティが
断然読むコチラの胸に響きます。選評が載せてありますが「すごいもの」を書くことが、かならずしも「おもしろいもの」にならない中でこの「ぼっけえ、きょうてえ」はすごくて、しかもおもしろかったとあります。
たしかに、読む人それぞれだろうがある種のなんともいえない感銘を受ける作品だと思う。このセンスは魅力的で筆力とともに読み応えのある作家だと思います。
こういったホラー話は京極夏彦とはまた一味ちがった世界でのお話で、単なるホラー小説ではないとまだ未読の方にはおススメしたいと思います。
「