Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

『だれもがポオを愛していた』平石貴樹のミステリ

2015-03-21 08:50:59 | ミステリ小説
                              

ミステリ専門の流行作家ではなく、東大の助教授時代に書かれたミステリです。
専門が英米文学という学者さんで著作は少ないですが、既存のミステリ作家で無い人が書かれたミステリには意外と名作と呼ばれる物が多いのも事実です。
坂口安吾や筒井康隆などの作品がそれです。 この作品もポオの作品に見立てた連続殺人が起こる物語で、ポオへのオマージュと『アッシャー家の崩壊』への
これまでの通説と恐怖小説といった見方を新しい考察でミステリとして読み解く切り口を見せてくれます。

『アッシャー家の崩壊』、『ベレニス』、『黒猫』とポオの作品に見立てた連続殺人の事件を解決するのは、ボルチモア警察の警部補ナゲット・マクドナルド
(登場人物の名前はすべてこんな調子で笑ってしまいます。)の父と何十年の親交があった外交官更科氏の娘更科丹希です。通称ニッキはポオのデュパンが、
よく言われるような探偵主人公の元祖であるならニッキは最も若い彼の子孫の一人であると紹介されます。
そうです、この本はひとつひとつの手がかりを組み立てて真相に近づく正統派のミステリであり正統派の探偵に相応しい事件です。

ユーモアたっぷりの名前を持った登場人物たちがエドガー・アラン・ポオのおどろおどろした世界さながらの連続殺人事件に遭遇するこの物語。
その場面の細やかな様子をキチンと把握して解析しホンの少しの想像力があればニッキよりも先に犯人に辿り着けることでしょう。
隠れた名作とも云えるこの本はきっとあなたのお気に召すはずです。
しかし、この本を探すのは難しいと思いますので、図書館を調べるのが一番だと思います。


『カメラを始めて約一年、初心者の独り言』

2015-03-16 08:08:27 | 日記
去年の三月末に近くの家電量販店で、ミラーレス一眼を買ってから

ほぼ一年になります。  写真の撮り方といった本をいろいろ読んで基本的なことを勉強しました。 

そして自分に課題を与えて、それらのテーマをクリアすることを目標に写真を撮って来ました。  花の撮り方、逆光を使った優しい花の表現方法や、

風景写真の構図の決め方、流れる水の止める撮り方、花火の撮影、星の軌跡写真など・・・。 いろいろなシーンを撮りながら勉強して来ました。

絞りと露出の関係。スローシャッターの表現。プラス補正とアンダー補正。 技術的なことの知識としては撮りながら学んできたと思っています。

最近300ミリのレンズを買って野鳥撮影を始めました。 これはやってみると難しいことが解かりました。相手は野鳥です。こちらの思うようにカメラの前に

現れてくれません。こちらが相手に合わさなければいけないところがとても難しいところです。

この時期良く目にするのが「梅の木にメジロ」という図柄です。 これを自分も何とか撮ってみたいと思い野鳥がたくさんいる公園に通いました。

しかし、思うように現れてくれません。知り合ったベテランの撮影者の話しなどを聞きながら野鳥撮影のノウハウを教えてもらいました。

そして、昨日午後から晴れたので散歩がてら公園に行きました。 でもあまり鳥は見られません。ヒヨドリが何羽かいるぐらいでした。

公園から付近を散策しました。 すると一軒の民家の庭先の一本の梅の木にメジロが数羽いるのに気付きました。

犬も歩けばメジロに出会うです。 よく動き回る鳥で同じ木にヒヨドリもいた為に特に動きが激しかったので連写で数打ちゃあ当たる作戦にしました。

とても構図を決めて撮るといったわけにはいきません。 ン百枚撮った中に何枚か幸運なことに思い描いていた写真が撮れました。

カメラを始めて一年、「梅の木にメジロ」の図柄が撮れるまでになった自分にちょっと感動と誇らしげな気分です。

このほかにも未経験なシーンが有りますのでひとつひとつ挑戦してモノにしていきたいと思っています。

カメラを始めたおかげで、最近好きな映画をまったく見ていません。劇場に行ったのは昨年の「ゴジラ」を観てからその後は一度も行っていません。

DVDもご無沙汰です。いろんなことを同時に出来ない性分なのでしょうがないと思っています。

まだしばらくはカメラにかかりきりになるようです。        ★記事内で梅ノ木と書いていますが正確には杏の木です。白い杏の花にメジロの構図です。

 

『白雪姫には死んでもらう』ネレ・ノイハウスのミステリ

2015-03-07 16:43:39 | ミステリ小説
                                      

著者はドイツミステリの女王と云われているそうですが、この本はミステリ要素は低くどちらかと云うと警察小説といった感じです。

逮捕され刑に服し10年振りに両親が暮らす村に帰って来た青年トビアス。しかし、両親は離婚しており母親は家を出ていました。少女二人を殺害した犯人として逮捕された彼は

村に帰ってきて始めて両親が彼以上に過酷な状況のなかで暮らしてきたことを知ります。そしてゆっくりと彼が村に帰って来たことによって運命の歯車が動き出します。

自白はしていません。無実をずっと訴えていましたが状況証拠と自白しないことが逆に彼の刑を重くする結果になりました。

彼の家にペンキで嫌がらせの言葉が書かれたりしているうちに空軍基地跡の燃料貯蔵庫槽から人骨が発見されます。調べの結果11年まえの連続少女殺害事件の被害者のものと判明します。

主人公の刑事コンビオリヴァーとピアの二人が動き出します。しかし、事件と並行して描かれるこの刑事たちのドラマも並みではありません。実に人間臭い弱みや情けなさを

さらけ出します。最後にはオリヴァーも妻と別れる選択をしますが事件の最中に妻の行動に疑心暗鬼になり、仕事が手に付かない見っとも無さなどを見せたりします。

隣の家に事情があって母親から離れ伯母のところに来た少女アメリーがトビアスに興味を持ちます。そして11年まえの事件について調べ始めます。読者も彼女が調べることを知っていく展開ですが

警察は終わっている11年前の事件に感心を持ちません。しかし、離れて暮らすトビアスの母が何者かに歩道橋から落とされ重症を負います。この事件をきっかけに刑事コンビは

11年前の事件に注目します。少しずつトビアスに話を聞くうちに彼を犯人とした当事の捜査にピアは疑問を持ちます。そして少女アメリーが失踪します。ですが警察はアメリーが調べたことを

知りません。スタートの遅れがアメリーの危機に繋がっています。この辺の描き方は中々上手いところです。色々な人間模様を見せながら後半は息もつかせない展開になっていきます。

複雑に絡み合った人間の思惑や欲望が事件の背景にあり真相は単純ではない所がこの物語の深みを増しています。

この刑事コンビの作品は前作の『深い疵』も評判が良いのでコチラから先に読んでみるのも良いでしょう。




『サム・ホーソーンの事件簿・1』エドワード・D・ホックのミステリ

2015-03-01 09:16:45 | ミステリ小説
                           

 サム・ホーソーンものの初期の作品12編が収められた一冊で、最後に不可能犯罪の名作「長い墜落」が特別収録されています。

1974年の作品から順にサムホーソーン医師が当事を回想し、誰かに酒を飲みながら語って聞かせるという設定になっています。

このため一話完結のミステリではありますが、連作ミステリのスタイルになっています。

どの話も不可能犯罪を扱っていて密室と消失がほとんどですが、どの話もアイデアの良さが光っていて楽しめます。

もちろん現代の科学をもってすれば成立しない話もありますが、そんな野暮は言いっこなしで純粋にパズルを楽しむべきです。

医学校を出て一年、サム・ホーソーンはノースモントに開業し医師としてその地方に住み着いた。卒業祝いに両親が買ってくれた黄色いピアース・アロー・ランアバウトに

乗って患者を診察する毎日。そんなサム・ホーソーン医師が遭遇する謎めいた事件の数々。

エラリー・クイーンズ・マガジンに1974年12月号から78年7月号までの間に発表されたものが順に収められていますが、プロットを思いついたらすぐに

書きたいタイプのようで短編が多く、長編は少ない作家だと解説にありますがそうなのでしょう。 密室と消失の話がいろいろと手を変え品を変え作られてますが

どれも舞台や物語の背景などが面白くて読み耽ってしまいます。そして、最後の「長い墜落」ですが似たようなものを読んだ記憶がありますが、きっとこの作品の

アレンジだったのでしょう。

ビルの一室から窓ガラスが割られ人が飛び降ります。しかし、下には死体が見つかりません。交通整理をしていた警官も何事も無かったと証言します。

でもガラスの破片が散らばっています。ただ、近くで道路工事がありその音でガラスの散乱には気付かなかったのでしょう。

部屋に入った人物は何処にも居ません。そして3時間45分後に道路に死体が現れます。

どうですか、この事件がどう解決したのか気になりませんか?

長い時間をかけて読まなくても良い短編集です。例えば新幹線の車中などで読めば退屈など吹き飛んでしまうでしょう。