『だれがコマドリを殺したのか？』イーデン・フィルポッツのミステリ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

1924年に書かれたミステリです。ミステリの黎明期に触れ先人たちの知恵が今のミステリ界に
どれほどの影響を与えているかを知るために古典を愛している人には外せない一冊です。

だれがコマドリを殺したのか？このタイトルも秀逸です。主人公の親友で私立探偵のニコル・ハートは親友の窮地を救うべく事件を調べ始めますが
途中であり得ない奇想天外な仮説を思いつきます。その仮説とは・・・・。このトリックのバリエーションを何冊か読んだ記憶がありますが

1924年であればさぞ驚いたことでしょう。

容姿端麗な青年医師ノートン。美貌の娘でコマドリとあだ名で呼ばれるダイアナ。二人は出会った瞬間に恋に落ちます。生まれた時から赤い糸で結ばれていたと信じる二人。
お互いの気持ちを隠しおおせるものでなく直ぐに結婚となります。ただ、ノートンにはひとつコマドリには隠し事がありました。

二人の出会いから結婚生活の様子など作者はきめ細かく丁寧に心情や周りの人物などを書いています。
一編の恋愛小説を読んでいるような気分にさせるほどの二人の心情などが描かれ、結婚生活を続けているうちの気持ちの変化なども丁寧に書かれていて物語の中に入り込みます。

やがてノートンの隠し事などのためもありダイアナは体調を崩します。医師の診察ではどこも異常が見られないのですが一進一退を繰り返しやがてダイアナは死亡します。

その一年半後ダイアナが残した手紙が公にされます。それは夫ノートンを告発するものでした。

登場人物たちの相関図もしっかりと計算されたもので作者の綿密な仕掛けの上手さが光ります。

だれがコマドリを殺したのか？、私立探偵ニコルの立てたあり得ない仮説とは？

読みやすい新訳で出ているこのミステリ、一読の価値はありますよ。